第二章 リチャード夫人の新しい仕事
リチャード夫人は次の土曜日の朝にある告知をした。
「私は新しいパートタイムの仕事に就くことになったの。」と彼女は言った。「月曜日からデザイナーになるのよ。」
「本当に?」リジーは目を丸くして聞いた。
「ええ、そうよ。毎週月曜、火曜、木曜、土曜の午後2時半から6時半まで働くのよ。」
「それじゃあ誰が私たちとその時一緒にいるの?パパ?」とリジーは聞いた。
「いいえ、パパじゃなくレベッカおばさんよ。彼女があなたを幼稚園から拾ってくれるわ。」とリチャード夫人は言った。
僕は鼻に皺を寄せた。レベッカおばさんはリチャード夫人以上に潔癖症だった。彼女の本棚をよく覚えている。本はすべて作者のアルファベット順になっていて、大きいのから小さいのへと並んでいた。
「私はバズとトミーをそういう日は2時ごろレベッカおばさんの家へ連れていくわ。レベッカおばさんが夜ごはんを作ってくれるから。」
僕は内心唸った。レベッカおばさんは料理が下手だからだ。でも待てよ、僕はキャットフードを与えられるから、もしかしたら関係ないかもしれない。
ある日、リジーは幼稚園から家に興奮した勢いで帰ってきた。大きな模造紙を持っていた。
「ねぇ、聞いてよ!」と彼女は叫んだ。
リチャード夫人は彼女に微笑んだ。「どうしたの?」
「私、絵を描くの!コンテストのために。」リジーは台所でピョンピョンはねながら言った。
「ほんと。」リチャード夫人は言った。彼女はお皿を洗うために洗面台へ行った。
「テーマは『あなたにとって一番大事な人』、」とリジーは続けた。「そして私は-」
「あら、私トミーの部屋の鍵閉めたかしら?」リチャード夫人は心配そうに独り言を言った。トミーはつい最近ドアの開け方を学んだ。赤ちゃんがドアを開けられるのは悪いことではない。その赤ちゃんがトミーじゃなければ、の話だが。トミーが家をうろついていると何が起きるかわからない。そのためリチャード氏はトミーの部屋に鍵を買った。
「だから私は-」とリジーは言いかけた。
「あ、そうだ、リズ、食堂の机を整えてくれない?トミーのおむつ交換しないとなの。」
リジーはちょっとふてくされた様子だった。もっとお母さんからの熱意がほしかったのだろう。
その日から、リジーは絵を描くために自分の部屋でたくさんの時間を過ごすようになった。
前も言ったように、レベッカおばさんの料理はとんでもなくひどい。彼女はキャットフードを持っていなかったために僕にそれを与えてくれなかった。僕は強制的にほうれん草の盛り合わせを食べさせられた。とてもまずかった。
リジーもあまり嬉しそうではなかった。ある日、僕はリジーが窓の外に皿の上に乗った食べ物を投げ捨てているのを見た。僕は笑った。リジーにしても、結構ワイルドなことをしたな、と思ったからだ。でも、僕ももっと身長があればきっと同じことをしていただろう。
レベッカおばさんは小さなことで怒る。言うの忘れたが、レベッカおばさんは実は先生なのだ。だから子供を叱るのに慣れている。彼女は読書をリチャード夫人よりもずっと厳しくリジーに教える。
「リズ、その言葉はシェイプで、シープじゃないわよ。わかった?もう一度言ってごらんなさい。シェイプ。」
「シープ。」とリジーは答えた。僕は彼女が機嫌悪いのがわかった。彼女は30分以上勉強したことがない。それは四歳児には普通だろうけど、もう一時間半以上も勉強している。イラつくのも無理ないだろう。
レベッカおばさんは首を振った。「シェイプ。」
「シープ。」とリジーは言い、腕を胸の前で組んだ。
『正しく言いな、リジー。そしたら解放してくれるから』と僕は頭の中で伝えようとした。人に理解できないことを知っていて、それをその人に伝えられないのはつらいことだ。
「シェイプよ、リジー。シェイプ。」
リジーは首を振った。「発音できない。」と彼女は言い、手を空中に広げた。「もう行っていい?」
「正しく発音できてからね。さぁリズ。急いで。」レベッカおばさんは彼女の腕をつかんだ。
長い沈黙があった。僕はリジーが正しく言おうか頑固に間違って言おうか迷っているのを知っていた。そしてついに、「シェイプ。」と言った。
笑うどころかレベッカおばさんはリジーを叱った。「ほら、こんなに時間をかけて。知ってたんなら最初から正しい発音をすれば良かったのに。」
リジーは大声で文句を言おうか泣きだそうかしたそうな様子だった。彼女は口を開けて、大きな喧嘩を起こしそうだったから、僕は耳をふさいだ。だが彼女の口から何も言葉は出てこなかった。
僕は彼女がかわいそうに思えたが、ある意味安心した。もしかしたらこれからは大声で怒り出したりしなくなるかもしれない。