第一章 バズ
こんにちは!僕の名前はバズ。僕は猫で、リチャード家に飼われている。八つのひげと三万五百九十二本のさらっとした白い毛(全部数えたんだよ)、大きな輝く緑の目とベルのついた首輪を持っている。僕は自分の隅々まで美しさを持っている。名前を除いて、ね。僕の名前はもちろん美しくはない。
ルシェルという名前が僕の首輪には縫い付けてある。それが僕の本当の名前だ。「バズ」は他の誰かがつけたあだ名だ。その「他の誰か」はトミーだ。
トミーが僕のことをバズと呼ぶようになってから、みんな僕のことをそう呼ぶようになってしまった。僕はルシェルの方がいいけど。ルシェルの方がバズより千倍カッコいい。でも僕は猫だから喋れない。だから僕はその名前で我慢するしか選択肢がない。リチャード家は典型的なアメリカの家族だ。少なくとも昔は典型的なアメリカの家族だった。でもそれはトミーが生まれる前の話だ。
僕は昔はリチャード夫人、リチャード氏とトミーのお姉さんのリジーと平和に生きていた。リチャード夫妻は本当にいい人たちだ。優しくて面倒見がいい。僕が子猫だった頃に獣医から拾ってくれた。
リチャード氏は風船ガム会社で働いている。色んな種類の風船ガムを作る。リチャード氏はほとんどの時間会社で働くが、時々家でも働く。彼は特別なガム研究のための部屋をもっていて、僕はそこを探検するのが大好きだ。色んな液体や器具がある。
リチャード氏はすごくだらしない時がある。研究部屋はとても汚い。反対にリチャード夫人はとてもきちんとしている。彼女はだらしないのが大嫌いだ。彼女のあまりの几帳面さに苛つかないように気をつけている。
リチャード夫人の趣味は(家を片づける以外では)お裁縫である。子供たちや僕のためにいつも洋服や布団を作ってくれている。昔は彼女が縫っている間、僕が彼女の膝の上に座っていたが、最近はその特等席はリジーやトミーに占領されている。
リジーは四歳だ。(本名はリサだ。)彼女はトミーほど悪くはない。もちろん彼女は迷惑な時もある。昔は僕のひげをいつも引っ張っていた。最近はそれをしなくなったけど。それに、トミーに比べればそれは全然大したことではない。
台所で彼が作る音といえば最悪だ。彼はポットやフライパンをばんばん叩く。最近は叩くだけじゃなく、投げたりもする。どうりでリチャード夫人は最近たくさんの頭痛がするわけだ。彼は僕のしっぽを踏んだり、リジーが昔していたように僕のひげを引っ張ったりする。政府は赤ちゃんが猫のひげを引っ張ることに対して法律を作るべきである。そして、まだある。彼は食べる時に辺りを散らかし、いつも叫んだり泣いたりしている。
一番ひどいのは彼が強制的に僕をお風呂に一緒に入れる時だ。彼はほとんど僕を溺れさせている。そしてリチャード夫人は疲れているからといって、それについて何もしてくれない。なんて冷たいんだろう?
トミーは僕に問題を引き起こすだけでなく、リジーにも引き起こしている。
僕はよくトミーがたくさんの注目を浴びているのに対してリジーが嫉妬しているのに気づく。リチャード夫人はトミーを世話するのに忙し過ぎてリジーの世話までできない。僕はリジーの気持ちがよくわかる。もし喋れたら、僕はリジーに、それはリジーが生まれた時に僕が感じたこととぴったり同じだということを伝えたい。
食卓で、僕はまたリジーとトミーの間で喧嘩が起きるのを見た。
「ママ、トミーが机じゅうにまた豆をこぼしている。」とリジーは文句を言った。
「仕方ないのよ、リジー。彼は赤ちゃんだから。」とリチャード夫人は言った。
「もし私が食べ物を机じゅうにこぼしていたら怒らない?」とリジーは不機嫌そうに言った。
「リジー、あなたは赤ちゃんの頃食べ物の七十五パーセントは机にこぼしていたわよ。」とリチャード夫人は答えた。
「そんなことないよ!」とリジーは顔を赤くさせながら叫んだ。
「そうだったわよ。」とリチャード夫人はよく知っているように言った。
「ふんっ。」リジーはけなされた口調で言った。「でもやっぱり汚いよ。食欲なくした。」
リチャード夫人はため息をついた。僕は彼女が少しかわいそうに思えた。とても疲れている様子だった。「静かに食べなさい、ね?」と彼女はリジーに言った。
リジーはトミーに気持ち悪そうな顔をしたが、トミーは気づかなかった。彼は会話すら理解できなかった。
僕は首を振った。このリジーとトミーの間の冷たい壁はいつまであるのだろう。