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時の神官

「私は、かつてこの神殿を守護していた時の神官、クロノスと呼ばれていた者だ」


老神官は穏やかな声で語りかけた。彼の姿は透き通っており、幽霊のようだった。


「時の神官…!」


アイリスは驚きの声を上げた。


「伝説の人物じゃ!千年前に消えたとされる…」


「マジ?幽霊NPC登場?」


リンは目を輝かせた。


「私の姿はもはや実体ではない。しかし、お前たちの来訪を待ち続けていた」


クロノスはレオに視線を向けた。


「特に、邪眼の力を持つ若者よ」


レオは緊張した面持ちで一歩前に出た。


「僕のことを…知っているんですか?」


クロノスは静かに頷いた。


「千年の時を超えて、運命の輪は再び回り始めた。邪眼の力は、世界の危機に際して選ばれし者に宿る」


神官は手を振り、空中に光の映像を作り出した。そこには古代の戦いの様子が映し出されていた。


「千年前、魔王の力が世界を脅かした時、四人の勇者が立ち上がった。剣の勇者、弓の勇者、魔法の勇者、そして盾の勇者だ」


映像の中で、四人の戦士が魔物の大軍と戦っていた。


「剣の勇者は時を見る邪眼の力を持ち、仲間たちと共に魔王と対峙した」


レオは息を呑んだ。映像の中の剣の勇者の右目が、彼と同じように青く光っていた。


「でも、最後はどうなったんですか?」


ベラは小さな声で尋ねた。


クロノスの表情が暗くなった。


「彼らは魔王を封印することには成功した。しかし…」


映像が変わり、四人の勇者が倒れ、魔王が巨大な黒い門の中に吸い込まれていく様子が映し出された。


「勝利の代償は大きかった。四人の魂は時空を超えて転生を繰り返し、最終的にはお前たちとなった」


「だから私たちは転生者…!」


リンは驚きの声を上げた。


「でも、なぜ僕だけ前世の記憶がないんですか?」


レオは困惑した表情で尋ねた。


クロノスは悲しげに微笑んだ。


「それは邪眼の力の代償だ。時を見る力を持つ者は、過去の重荷から解放される。それが邪眼の宿命だ」


「宿命…」


レオは呟いた。


「しかし、記憶は失われても、魂の絆は消えぬ」


クロノスは四人を見渡した。


「お前たちは偶然出会ったのではない。魂が互いを求めて引き寄せられたのだ」


「それで、私たちがこんなにすぐに打ち解けたのね」


ベラは納得したように言った。


「筋肉だけじゃなく、魂の絆もあったんだ!」


「うむ、わしも何か懐かしさを感じておった」


アイリスは頷いた。


「だが、なぜ今、魔王軍が動き出したのですか?」


レオは神官に尋ねた。


クロノスの表情が一層厳しくなった。


「千年の封印が弱まりつつある。魔王は再び力を取り戻そうとしている。そして、彼らはお前たちの力を

恐れている」


「だから私たちを狙っている…」


リンは真剣な表情になった。


「マジで世界を救う冒険になるんだね」


「お前たちの使命は重い。だが、まだ力は未熟だ」


クロノスは四人が手にした武器を指さした。


「聖なる武器は、お前たちの内なる力の象徴。しかし、真の力を解放するには試練を乗り越えねばならな

い」


「試練?」


レオは尋ねた。


「四つの神殿が世界の各地に点在している。それぞれの神殿で、お前たち一人一人が自らの過去と向き合

い、真の力を見出さねばならない」


クロノスは光の地図を展開した。


「まずは、東の火山に眠る炎の神殿。弓の勇者の試練の場だ」


地図上で赤く光る点が示された。


「次に、西の湖に沈む水の神殿。魔法の勇者の試練だ」


緑に光る点が現れた。


「南の大地に埋もれし地の神殿。盾の勇者の試練がある」


黄色い点が光った。


「そして最後に、北の空に浮かぶ風の神殿。剣の勇者、お前の最終試練の場だ」


青い点が示された。


「四つの試練を乗り越え、四つの力を解放できれば、魔王の封印を強化し、世界の危機を回避できるだろ

う」


「よーし!RPGのクエスト発生だね!」


リンは握りこぶしを作った。


「東の火山か…燃えてきたよ!」


「わしも久しぶりに冒険のやる気が湧いてきたわい」


アイリスは新しい杖を掲げた。


「筋肉も魂も鍛え上げるチャンスだね!」


ベラも元気よく言った。


クロノスはレオを見つめた。


「剣の勇者よ、お前の力は特別だ。時を見る邪眼は、使いようによっては世界を救いも滅ぼしもする」


レオは真剣な表情で頷いた。


「責任を持って力を使います」


クロノスは微笑んだ。


「私は長い間、お前たちの来訪を待っていた。今、ようやく安らかに消えることができる」


彼の姿がだんだんと薄くなっていった。


「行くのか?」


アイリスは驚いて尋ねた。


「私の役目は終わった。これからはお前たちの時代だ」


クロノスは消えかける前に最後の言葉を残した。


「しかし、覚えておけ。お前たちだけが勇者ではない。助けを求めることを恐れるな」


そして、時の神官の姿は光となって消え去った。


四人は神殿の中に残され、互いの顔を見合わせた。


「マジか…私たちが世界の運命を担うなんて」


リンは少し緊張した面持ちだった。


「前世では何度もゲームで世界を救ったけど、リアルは初めてだよ」


「うむ、大きな責任じゃ」


アイリスは思案げに言った。


「だが、わしらには力がある。そして何より、共にいる仲間がおる」


「筋肉と友情があれば、どんな困難も乗り越えられるよ!」


ベラは元気よく宣言した。


レオは聖剣を見つめ、そして仲間たちの顔を見た。


「みんな…一緒に行こう。東の火山を目指して」


四人は固く決意し、古代神殿を後にした。新たな冒険の始まりだった。

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