第61話
あれから少し時間が経って、ミリアをやっと部屋に返すことに成功した。
「で、お前はなんであいつを気に入ったんだ?」
正直、理由が分からなさすぎるから、俺はそう聞いた。
だって、小狐が俺を気に入る理由は勘違いとはいえ、俺が小狐を助けたと思ってるからだろ? なら、ミリアはなんなんだよ。
あいつは小狐を助けてなんていないし、なんなら出会ったばかりでちょっとウザイくらいだったのに、本当になんで気に入ったんだよ。
「キュー?」
ミリアが帰るのと同時に小狐のことは俺から引き離しているから、俺の対面でベッドに座りながら、小狐は不思議そうに首を傾げてきた。
……なんで分かんないんだよ。……いや、分かんない振りをしてるだけか?
「はぁ」
まぁいいか。
どうせ俺の言葉を理解できてたとしても、小狐が言葉にして説明できるだなんて最初から思ってないし。
「……あいつのことを気に入ったのなら、あいつと一緒の部屋で寝てきたらどうだ?」
小狐が頷いてくれさえすれば、一人の時間が作れると思って、俺はそう聞いた。
「キューっ!」
すると、元気よく鳴き声を上げたかと思うと、体で俺と一緒に寝るとアピールするように俺に抱きついてきた。
もういいって。
「あー、分かった。分かったから、離れろ」
「キュー?」
「……分かったよ」
全然なんて言っているのかは分からないけど、多分「本当に分かってくれた?」みたいな感じだろうから、俺は小狐の鳴き声に直ぐに頷いた。
「……一緒に寝るってことでいいんだよな?」
「うん!」
……はぁ。
もういいか。別のことを考えよう。
……あれだ。
あの洞窟の調査とか、結局どうなったんだろうな。
俺がこの世界で初めて出会った……いや、出会っては無いけど、初めて声を聞いた人間たちの報告であの洞窟の奥に何かがいるのは知っているだろうに特に騒ぎにはなってなかったし、シンプルにゼツが殺されたなんて考えに至ることはなく、どこかへ行ったとでも思ってるってことなのかな。
仮にそうだとして、親狐がゼツを焼いた影響やゼツが俺を焼いた影響で洞窟に焦げた後がいっぱいあったと思うんだけど、それはどう判断されたんだろうな。
ゼツと何かが戦って、当然のごとくゼツが勝ってそのままどこかに行ったと思ってるってことだったりするのか? ……それならそれでゼツの調査依頼とか出しそうなものだけどな。
いや、あの時洞窟に来た奴らはそんなにランクの高い冒険者じゃなかったっぽいし、報告がそこまで信頼されてないのかもな。それなら、割と納得ではあるか。
別に強くない奴がめちゃくちゃ強い奴が居て洞窟を引き返してきた、なんて言ってきたって信憑性とか無いもんな。普通に。
「キュー! キュー!」
そうして、色々と頭の中で考えていると、小狐は俺の体を揺らしながらそんな鳴き声を上げて、何かをアピールしてきた。
なんだよ、めんどくさいな。
「どうした?」
内心でそう思いつつも、優しく俺はそう聞いた。
「キュー!」
「……腹でも減ったのか?」
「うん!」
……当たりなのかよ。
まぁ、そうか。そりゃ腹くらい減るよな。むしろここまで我慢できてた方が凄いくらいだ。
「どっか飯でも食いに行くか」
「うん!」
……宿の金はミリアが払ってくれたし、今日は俺も食えるかもな。
なんだかんだ言って、この世界に来て初めての食事だな。




