第60話
「まずは私からね。私の名前はミリアよ。改めて、これからよろしくね!」
よっぽど俺たちとパーティーメンバーになれたことが嬉しいのか、気の強そうな女の子……ミリアは元気よくそう言って自己紹介をしてきた。
「いい名前だな。それじゃあ、自己紹介も終わったところだし、今日のところはミリアも部屋に戻ったらどうだ? 色々と疲れただろ?」
「う、うん! ありが……って! まだ私だけしか名前を言ってないじゃない! あんた達も言いなさいよ!」
ダメだったか。
いや、分かってたけどさ。
それでも、ちょっとだけ今日だけならこのまま名前を言わずに乗り越えれるんじゃないか? って思ってたことは否定しないけどさ。
と言うか、名前ね。
マジでどうしようかな。
……えー、スライムだから……スライムだから……何も思い浮かばないな。
「……ラム。それが、俺の名前だ」
そして、考えに考えた結果、そろそろミリアに急かされると思った俺は、そう言った。
当然自分の種族名のスライムから取った名前だ。
まだ俺は自分の見た目を見たことは無いけど、中性的な見た目みたいだし、男とでも女とでも捉えられるいい名前だと思う。……多分。
「いい名前じゃない。さっさと言いなさいよ」
考えてたんだよ。
まぁ、そんなこと言えるわけないし、何も言わないけどさ。
「そっちのあんたの方はなんて言うのよ」
俺は名前を言ったからか、今度は小狐の方を見ながら、ミリアはそう言ってきた。
「……そいつの名前は言えない」
「はぁ? なんでよ!」
「……事情があるんだよ」
適当に俺が仮の名前でも考えて、それを小狐の名前にでもしようと思ったんだけど、仮とはいえ、勝手に名前なんてつけたら親狐がどういう反応をするかが分からなかったから、俺はそう言った。
「そう、なの?」
「あぁ。だから、もう聞かないでくれ」
「わ、分かったわ」
ミリアは何かを察してくれたのか、頷いてくれた。
そんな中、俺の言葉を聞いた小狐は不思議そうに俺の腕の中で小首を傾げていた。
……お前のことを話してるんだけど、まぁ、理解してないのなら理解してないで問題無いし、別にどうでもいいか。
「ね、ねぇ、その子の名前を言えないのは分かったわ。でも、せっかく仲間になったんだし、一つだけ聞いてもいい?」
そう思っていると、ミリアは緊張した面持ちでそう聞いてきた。
「ん? あぁ、まぁ、俺に答えられることならな」
魔物と人間という大きな違いがあるとはいえ、一応……そう、本当に一応仲間になった相手だし、俺は特に何かを考えることなく、そう言って頷いた。
「そ、その、あんたって結局男なの? 女なの?」
……まだ気にしてたのかよ。
別にそんなものどっちでもいいだろ。
「あの時も言ったように、好きな風に思ってくれたらいいって」
女だとしても、男だとしても、俺はこいつに手を出す気なんてないし、本当にどうでもいいと思うんだが、なんでそんなに性別を気にするんだよ。
「なんでよ。もう仲間になったんだから、別に教えてくれてもいいじゃない」
「別にどうでも良くないか?」
「良くないわよ! だ、だって、あんたが男なのか女なのかでその子がそんなにくっついてる意味が変わってくるじゃない!」
なるほど。そう言われると、確かに納得かもしれない。もしも俺と小狐がそういう関係なんだとしたら、それは知っておいた方がいいもんな。
「あー、安心しろ。俺とこいつはただのパーティーメンバーであってそれ以上でも以下でもねぇよ」
本当は直ぐにでも別れたい存在なんだけど、それを馬鹿正直に言う訳にはいかないからな。




