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シルバーマンステージ~伝説の夜は更けてゆく~

作者: ばち公

 ド派手なディスコライト、ステージを揺らす熱いサウンド。俺らの忘れたものが此処にある。そう、伝説の『シルバーマンステージ』に奴らが帰ってきた!! 猛るビートに乗って跳び踊り狂う奴らが!!

 一人目は活ける伝説、かつて町内会長も勤め上げたそのカリスマは夜も輝く! 黄金ドレスの女傑、HIROKOだー!!


「ひゅー! 待たせたな!」


 晒された肩と首筋には、かつてと異なり深い皺。しかしそれを恐れず、寧ろ誇るようにHIROKOは舞う。きらめくスパンコールに包まれたドレスは、まるで花開く黄金。太陽すらも目が眩むそれに、颯爽と挑む男がいた!


「やるじゃないか婆さん!!」

「爺さんもな!!」


 HIROKOの伴侶、黄金コンビの片割れ。かつては部長も勤め上げたYUKIOのステップはここにある。迸る汗。全てを振り捨て跳ぶ、叫ぶ! あらゆる光を反射するメタリックジャケット、その輝きに負けることなく、YUKIOは踊る。確かに此処には青春があった!

 ディスコライト輝く熱狂の渦、シルバーマンステージ! 恐れを知らぬ者共がそこには集う!

 黄金コンビの熱量を物ともせず、堅苦しいグレーのネクタイを投げ捨て、堂々とステージに上がる男がいた!


「残業帰りの俺を忘れてもらっちゃ困るぜ!」

「ピンクネクタイのTAKEOMI!?」

「貴様腰痛は!?」

「んなもん屁でもねえよ!」


 長年の公務員務め(デスクワーク)が祟った腰の痛みも、この情熱の前では意味もない。漆黒のスーツも厭わぬ動きの激しさに、仕事では決して付けられないラメ入りピンクのネクタイが跳ね踊る。今宵は一人のダンサーとして、日頃相対する税金滞納者のことも忘れ踊り狂う。


「てめぇら主役を忘れんじゃないよ!」

「床屋のTAEKO!?」

「生きてたのか!?」

「勝手に殺すなってんだ!!」


 真紅のドレスは美の艶めき! シンプルが故に最強の武装!

 TAEKOは吠える。客を磨き映えさせるなか学んだ、己の活かし方輝かせ方。長年の業務で培った軽やかな腕の動き。そのなめらかさは周囲の荒い動きの中、ひときわ目立つまさに主役級の輝きだ!

 しかしTAEKOだけではない!

 ステージに飛び乗る小柄な老人、その足取り、微塵も齢を感じさせないフットワーク。荒れ狂うダンサーに皆が目を見張る。


「貴様は誰だ!?」

「おっと、俺の顔に見覚えがないとは言わせねぇぜ……?」

「ま、まさか『ピンときたら110番』のポスターのGONZABU!?」

「貴様捕まったんじゃ……!」

「この熱い夜にムショになんか居れるかよぉ!!」


 こそ泥で牢にいるはずのGONZABU。誰よりも高いジャンプを決め、サウンドに合わせてポーズを決める。ステージ衣装もなんのその、囚人服がディスコライトに堂々と映える! おまわりさんこちらです!


「俺もいるぜ!!」

「不動産を10万で買ったら40万の取得税が課けられた八百屋のKENJI!?」

「みんな気を付けてね!!!」


 半泣きの八百屋のKENJIに都税事務所職員であるTAKEOMIが微笑みかける。白のエプロンと黒のスーツ、決して交わらないはずの二つが今このステージで邂逅する。


 泣き叫ぶ息子、恥に倒れる娘。ステージに集い喚く身内よ親類縁者よ、夜の客席はまさに阿鼻叫喚。

 しかし現世のしがらみはこのステージ上には関係ない。永遠の夜、黄金の一瞬。ジジイとババアの伝説の夜は更けてゆく……。

【習作】描写力アップを目指そう企画「第六回 キラキラ☆ワードローブ企画」に参加した短編です。

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