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やらかしちゃったね、リリウムジェット

作者: mugi_LEO

ヒコーキおたくの戯れ言です。

電動モーターによる”空飛ぶ車”なのに「ジェット」!!!なに、なに、なに?

西ドイツの空飛ぶ自動車を開発していたベンチャー企業”リリウムジェット”が倒産した。投資していた株は全て紙くずになってしまった。(涙)

日本電装製のモーターを使うということで一時話題となっていたが、このベンチャーに投資したのは理由がある。他にも大阪万博関連の空飛ぶ車ベンチャーはあったのだが、それとは別にふと新しく目にとまったベンチャーなのである。アイディアがとっても面白いのだ。(ちょっと怖いので多額の投資はしていなかったが、それでも損失は少なくない。)期待していたんだけどなあ。


この企業の何に惹かれたかというと、推進装置にダクテッドファンを使う機体だったからだ。しかも「ジェット」ときたもんだぁ。ご存じの通り、他の電動の空飛ぶ車は全てプロペラ機である。プロペラ機はその構造上、自力で音速を超えることが出来ない。まあ、乗用車代わりなので音速を超える必要は全くないのだが、ダクトを絞ることにより内部のファンの回転よりも早い流速での噴流を生み出すことが出来る構造が面白いと思うのだ。それは高速性や静音性に関係してくる。


なぜプロペラ機はその構造上、自力で音速を超えることが出来ないのかはご存じだと思うが、一応確認しておく。プロペラの回転は中心から離れるほどその回転距離が大きくなることは感覚的に分かる。つまりプロペラの先端にいくほどスピードがあがるのだ。プロペラが回転を始めてどんどん回転数が上がっていくとそれに応じてプロペラ先端のスピードも増していき、やがて限界を迎える。それはプロペラ先端のスピードが音速に達したときだ。衝撃波が生じ、効率が落ちるのは勿論、巨大な抵抗の発生によってプロペラの破壊にもつながり兼ねないということだ。だからプロペラ機は亜音速域で使われる。


ただ自分の大きな誤解は噴流速度が速くなれば、推進力も大きくなると思っていたところだ。これは遷音速から超音速域で意味あいは確かにあるようだ。(理屈はよく分からん)しかし空飛ぶ車が活躍する速度域では極端な話、噴流の効率は速さでは決まらないのである。つまりはプロペラの回転する面積によると考えればよい。ダクトによって噴流を絞り、流速を上げても団扇で扇ぐ分を鉛筆のような細さに絞ってもそれは空気を貫いていくだけで暖簾のれんに腕押しみたいなものだ。ダクトの排気は極端に絞ることはせず、そのまま後方に押し出すのがもっとも効率がよくなるということらしい。おまけにダクトの抵抗や重量も加わり、効率はよくないので、実はメリットがない・・・?。

ダクテッドファンの内部の羽はふつうのプロペラと違って先広になっている。効率的には普通のプロペラよりはよいらしいが、少しでも重量軽減を目指さなければならない航空機の一種としてはあまりメリットにならないのではないか。


リリウムジェットの機体の特徴は小型のダクテッドファンを多数使っていることとそれを翼に内蔵したことだ。モーターを多数使うことは他の機体でも行っており、これはこれで効率がいいのだそうだ。(重くなりそうな気がするけど。多発から2発に移行してきたジェット旅客機とは真逆だ・・・)

で、私が特に興味を持ったのは翼に内蔵してしまうということだ。昔F104というジェット戦闘機があった。鉛筆のような胴体にカミソリのような翼がちょこんと出ているT尾翼の迎撃機だ。領空侵犯しようとしている敵機を出来るだけ早く迎え撃つために速度と上昇力に特化したような機体だ。主翼が極端に小さいので着陸が難しい。翼の揚力が小さいので着陸速度が早くなってしまう。そこで失速を防ぐために翼に小さい穴が多数開いておりそこから空気が吹き出し、翼表面の空気の剥離を防ぐそうなのだ。インターナリーブロウンフラップという技術らしい。(ゴルフボールがデコボコなのは空気抵抗を減らすためだというのと同じだ原理だと思っていたが、違った。ついでに言うとフォーミュラ1という自動車レースにも”ファンカー”というものが登場し、禁止なったそうだ。車体の後ろの巨大なファンで車体下面の空気を吸い取り、接地加重を高めるという技術だったと思う。)そんなことを思い出したが、確かに翼の前縁で空気を取り込むので空気抵抗が少なくなりそうな気がする。それよりも翼の後縁から勢いよく空気が流れていくので、それに引っ張られて翼の表面の空気もぺたんと張り付きながら後方に流れていくような気がする。つまり、とても失速しにくい翼となっている?(これはあくまでヒコーキオタクの見解で専門的な見方ではありません)どうなんだろう。


はて、あとe-VTOL系、つまり垂直離着機で問題となる点はどうだろう。リリウムは、効率の良さからより小さなプロペラで離着陸が可能としている。そして、小さなプロペラかつダクトで覆われているため、人家間近でも騒音が抑えられるし、人が巻き込まれる危険性は少なくなるとしているが、この点はどこまでメリットとなるか・・・。

また、ダウンウォッシュはどうだろう?これは触れられていない。垂直に離着陸するのは実は簡単では無いのだ。空に浮いているためには下降気流を生み出し、その反作用で上へのベクトルを生み出すが、実はこの自分自身で作った下降気流に巻き込まれて地面にたたきつけられるというのがダウンウォッシュの危険性だ。これに巻き込まれたら墜落してしまうので、前進後退か左右に機体を振ってこの空間を逃れるしか無い。だからヘリコプターは垂直に降りることはあまりせず、飛行機のように前進しながら徐々に高度を落としながらダウンウォッシュを避けて着陸するのだ。(間違ってたらごめんなさい。ドローンの操縦法では学習するので・・・)

ダクテッドファンには、確かにむき出しのプロペラが回転する危険性や風切音の低減ということではメリットがあるだろう。ただ、電動モーターそのものの騒音はエンジンとは比べものにならないし、最近ではトロイダルプロペラなどの静かなプロペラも現れているらしいので、結局政府を含めた投資家の心をつかむには至らなかったようだ。


リリウムよりも、自分がやらかしちゃったね!ってことです。


ヒコーキオタクの自分の理解した範囲での話であり、不正確な科学的な情報や憶測もあるので、そちらはご自分の責任でお調べください。つまり、私も一生懸命調べてますが、全て正しいとは言えないので、一切責任は持てないということです。すみません。

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