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短編集

毎年義理チョコくれる幼馴染に本命チョコを押し付けてみた

作者: 秋川千夏

バレンタインの作品です!

今後はこういう季節ものの短編も出していくつもりですのでよろしくお願いします!!

あと、好評なら女の子視点も出します!

「はい義理チョコ。感謝してよね?どーせまことは私以外になんてもらえないんだから」


「はい今年も義理チョコ。ありがたくいただきなさい」


「はい、今年も。今回のは…その…そう、友達にあげる分のあまりだから!義理だからね!」


毎年バレンタインの日必ず幼馴染の佐藤千代子(さとうちよこ)から義理チョコをもらう。

ただ、俺は正直この日が辛かったりする。


俺、大本命(おおもとまこと)は数年前から千代子のことが好きなのだ。

いや、大好きだ。いやいや、愛してると言ってもいい。


普段はちょっとツンとしてるけど、眠い時は甘えん坊になったりするところは愛おしいし。

ちょーっと見えはりたがって失敗して拗ねるとこも可愛いし。

何より、こうしてかれこれ10年以上ずっと一緒にいるから、千代子がいないと寂しくなってしまう。

なんなら寂しさで死ぬかもしれない。


それぐらい好きすぎて、好きのラインを越えそうになっているほどには好きだ。

だからこそ、義理チョコをもらうのはいかんせん辛い。

友チョコとも言ってもらえないのがより悲しさを引き立てる。


そんな理由から俺はバレンタインが嫌いになったし、告白しても100%断られるし、しかも今までみたいに仲良くできないんだろうから告白することすらしなくなった。


要するに俺はただのクソチキンなんだよっ!!☆

でも、さすがの俺でも、もう数年の長い間ずっと思いを封じ込めているのには疲れてしまった。


そもそも大体、千代子はかわいかったのに、今ではさらに可愛くなったし。最近なんて俺が意識しまくってるのに「幼馴染なんだから別にいいでしょ」とか言ってやたらとくっついてきたりする。

この前なんてたまに一緒に出かけることをわざわざ「デート」なんて言って俺を苦しめてきた。


こうまでなると、どうしても思いを抑えるのも限界を迎えて来てしまう。

そして、その限界を迎えた日は、タイミングよく?いや、悪く?バレンタインデー前日だったのだ。


限界が迎えた日、実は夢の中で「はい、今年も義理チョコ」と言ってチョコを渡してくる部分を無限ループしていたのだ。

もう、軽くトラウマになった。その残酷な一言を延々と言われ続けるのは地獄だった。


そんな悪夢のせいで目が覚めてしまい、起きたのは午前2時半。

俺はあんなこと言われるくらいなら、先に俺が本命渡せば言われる前になんとかさけられるのでは?

なんて、深夜テンション×寝起きのほぼ回ってない脳みそのおかげで究極にアホな考えに至り、その場のノリで行動に移してしまった。


コンビニでミルクとホワイトの板チョコを買って、飾りは家にあったのを使って、無駄に綺麗なハートの形を作って、コルネを作り、そこにホワイトチョコを溶かしたものを入れ、「I Love Chiyoko♡」と無駄に綺麗な筆記体で書き、無駄に綺麗にラッピングして、完成した。


そして、作り終えたのに満足して眠りにつき、起きた時に激しく後悔した。

なぜこんなものを作ってしまったのだろう…しかもなんだよ「I Love Chiyoko♡」って…我ながらだいぶきしょいなおい。


本当はここで粉々に砕いて焼き払いたいところだが、それはなんか勿体無い気がしたのでとっておくことに。

親とか俺が食べてもいいんだけど、親に「I Love Chiyoko♡」って書いたやつ食わせるのもアレだし、俺が食べるのもなんかちょっと嫌…


もう一回溶かして別のチョコに作り替えるのもありにはありなんだが、もう既に親は起きてるから台所でこれを開けるのは極めて危険なため難しい…

あげるか?千代子本人に?こんなバカ丸出しの本命チョコを?


とか色々考えを巡らせていると、ふと思い出すことがあった。


そうだ。俺は千代子への気持ちが抑えられないからこんなものを作ったんだ。

俺は千代子に義理チョコをもらうのが怖いからこんなものを作ったんだ…


実際、これを使えば千代子からの義理チョコは回避できるだろう。

ただ、告白をしてしまえことにもなるから振られなければならないし、元の関係には戻れない…

いや、でも、あんまり初恋だからの言って拗らせすぎるのも良くはない…






ならいっそ、渡してしまって、しっかり振られて、この恋を終わろう。

そう思い、バレンタインデー当日の月曜日、いつも通りなぜか家の前にいた千代子に「放課後話したいことがある」とだけ伝えて、学校に向かった。


普段はお昼も一緒に食べるし、クラスは違うけど休み時間でもよく一緒に話すけど、今日ばかりは少し避けさせてもらった。

避けるたびに千代子の顔に不安や焦りが浮かんでいた気がするが、ただの見間違いだと割り切り、なるべくスルーし続けた。


そして、ついに放課後になってしまった。

呼び出した時間は16時。今は15時50分。


俺は呼び出した校舎裏に1人ぽつんと帰りの荷物とチョコを持って立っている。

流石にまだ2月だから死ぬほど寒く、風邪ひきそうとか思いながらただただ千代子を待つ。


そして、16時ジャストに千代子は現れた。

俺の近くに寄ってきて、千代子が口を開こうとした瞬間、俺はすかさずチョコを押し付けながら告白をした。


「はい、今年のチョ———「千代子!俺の話を聞いてくれ!」えっ、あっ、うん…」

「俺は、ずっと前から、千代子が大好きだった。今じゃこうして一緒にいるだけでドキドキしてしまう。それで。これは、その…逆バレンタイン的な…感じで…」


そこまで行った時点で、俺は恥ずかしさのあまり逃げ出したくて、千代子はさっきからずっと「えっ、えっ?えっ…えっ?」しか言ってない。

そして、沈黙の時間が続く。ただ、今の俺にこの沈黙を耐えることはできない。


「返事はいらない!というかしないで!どうせ返事はわかってるから!!じゃっ!!!」


だから俺は全力でその場から走り去った。

後ろの方で「えぇ!!?ち、ちょっと待ちなさい!!!!」的なことが聞こえた気がしたが、今は逃げることだけに専念していたい。


だから、俺は無我夢中で走り続け、家に帰宅した。

帰ってすぐにスマホを見ると、ものすごい数の通知がきていて、その全てが千代子からだった。

ただ、俺には見る勇気なんて当然存在しないから未読スルーを決め込む。


ものすごく通知がうるさいので通知を切り、ベッドに身を沈める。

そして、泣きながら明日からどうするか考えて、いつの間にか眠りについていた。


朝起きると、午前5時過ぎで、普段ならまだ寝ている時間だけど、目覚めてしまったからには大人しく一階に降りようと思い、部屋を出る。

リビングに入ると、机の上にラップされた昨日の晩御飯と母からのこれを食えというメモがあった。


俺はそれを温めたあと、普通に食べて、ゆっくり支度して、普段の登校時間の20分前に支度を終えた。

まだ時間があるし、何かして潰そうかと考えた時、ふとある考えがよぎった。


あれ?これいつも通り家を出たら高確率で千代子にエンカウントしない?

なら、早めに出たほうが、良くない?


そう思ったらすぐ行動に移してしまうのが俺だから、ついつい早めの時間に登校してしまう。

登校中、いつも隣にいる千代子がいないので、寂しいと感じつつも、これが運命だと受け入れて足をすすめた。

教室に入るとまだ人が少なく、意外と静かだった。


やることもないので読書でもしようとした時、教室の後ろの扉が勢いよく開き、千代子が入ってくる。

入ってくるなり早々肩を激しく上下させながら息を切らしたまま俺にさけんできた。


「まことぉ!!なんで逃げるの!!!LIMEも見ないのよ!!!」


そして、最後まで言わないうちに俺の方へ突っ込んでくる千代子を見た瞬間、俺は全力で逃走した。

それから、俺と千代子の追いかけっこの日々が始まった。


休み時間のたびに俺の教室に来ては、俺に逃げられ、何度か廊下を走るなど注意されたがそんなのお構いなしに走った。




「まぁてぇ!!!!」

「待てって言われて!誰が待つかぁ!!」


「捕まえたっ!!って!?いない!!??」

「ふっ、それは残像だ」

「殴るわよっ!!?」


「まてぇーい!!!」

「あばよとっつぁ〜ん!!」

「おのれぇ〜…まことめぇ〜!!!じゃないわよっ!!!」




みたいな感じの追いかけっこが続くこと約3週間。

千代子は突然こなくなった。たまに廊下ですれ違ってもスルーして終わり。

そんな形になったのだ。


当たり前だが、やっぱり寂しいもんは寂しい。

これで、本当に俺の初恋は終わったんだと自覚してしまう。


もう、前みたいに仲良く話すことすらできない。

それだけで、やっぱり辛いもので、日常はすごく退屈に感じた。


そして、千代子が来なくなってから1週間が経った頃、登校時の待ち伏せもなくなっていたため、昔どおりの時間に家を出る。

何かの手違いで千代子と会えないか。なんて考えながら家を出ると、そこには千代子が仁王立ちしていた。


会いたいと思っていても、実際会うと怖くなるもので、俺はつい千代子の横を通り抜けとダッシュで逃げてしまう。

しかし、千代子は追いかけてこず、代わりに何か硬いものが後頭部にヒットした。


「いっった!!」


思わず叫んで、後頭部を押さえているといつのまにか目の前に千代子が立っていて、なにか、よくわからない箱を突き出してくる。


「受け取りなさい」

「えっ、いや」

「いいから黙って受け取りなさい」

「えっ?」

「受け取って、この場で開けて食べなさい」

「ひっ!?」


俺の目の前で箱を差し出しながら、俺の顔を睨みながら圧をかけてくる千代子。

おれは大人しくその箱を受け取り、丁寧に包装を剥がし、箱を開ける。


すると、中には

割れたハート(と思われる)形のチョコレートが入っていた。

チョコにはなにか文字がかいてあったようだが、割と砕けていたためほとんど読めなかった。


そして、俺はこのチョコを見た瞬間俺は悟った。


「これは…俺の千代子に対する気持ちなんて粉々に砕けろ…ということですか?」

「ちっ、ちがう!!こっ、これは、その、さっきまことに投げつけた時に、その衝撃で!」


おい待て、こいつこの箱を俺の頭に投げつけてきたのかよ!?

こわっ!てか、確かに痛いわけだわ!


「その、これは…私からの…ホワイトデーというか…なんというか…その…バレンタインのお返しというか返事というか…その、わかるでしょ!!?」

「いや!わからんよ!?」


普通わかる!?

砕けたハートらしきもののチョコを渡されて、どういう思いが込められてるかなんてわからんでしょ!?


「だ、だからぁ…わ、私も、何年もまえから好き…って、言ってんのよ!!!」


そう叫んでからダッシュで逃げ出す千代子。

俺は慌てて千代子を捕まえて、抱きしめた。

そして、今の精一杯の告白をする。


「俺も、大好きです…おれと…付き合ってください」

「言わなくてもわかるでしょ…」

「お願い、答えて…?」

「当たり前よ…というか、それ以上まで行くから。付き合うだけじゃ終わらせないから…わっ、わざわざ言わせないでよねっ!!」


ふんっ、と鼻を鳴らして、俺の胸に顔を埋める千代子を、優しく抱きしめて俺たちは、長い時間をかけて、ようやく恋人になることができた。








そして、もちろん俺たちは学校に遅刻しましたとさ

数日後


「なぁ千代子、知ってるか?」

「なによ?」

「ホワイトデーにチョコを贈るのは『これまでと同じ関係でいましょう』ていう意味があるらしいぞ。てことはつまり——————」

「ねぇまこと。ホワイトデーで贈るチョコには『あなたと同じ気持ちです』って意味が込められているのよ?」

「ちっ、対策されてたか…」

「ふっふーん!それくらいわかるわよ!もちろん対策もあるわ!で、どうせこの後ほんとに自分を好きなのか聞いて、私に好きって言わせるつもりだったんでしょ!」

「くっ、何一つ間違ってない…です」

「やっぱりね!でも安心しなさい!私は本当にまことが大好きだから!!もう絶対離さないんだからね!覚悟しときなさい!」

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― 新着の感想 ―
[良い点]  一昔前のラブコメを思い出して思わず「くすっ」ときました。  良い作品をありがとうございました。
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