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お母様はイケメンで失敗しましたが(笑)、最後に笑うのは誰?  作者: ねこまんまときみどりのことり


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アマンダの幸福

「良いんでしょうか? 私だけこんなに暢気にしていて」


「勿論だ。これからは今までの分も、好きにすれば良い。それに子供の責任は親が取るものだからな、任せてやれ。それにファインは、来世の幸せの為にもここで頑張りを見せないといけないのさ」


「それならば……仕事は任せることにして、私は休暇を楽しみますわ」

「それが良い。私も最後にアルバと、いやアマンダとこんな時間が持てて嬉しいよ」



 リーディオ・サントマイムの住む伯爵邸で合流したアマンダとポリフェノールは、すっかりもてなされて暖かい紅茶を飲みながら暖炉のソファーでくつろいでいた。


 山岳部のここは標高が高く、降り積もった雪が全ての色を白で覆い隠す場所だった。


 以前に伯爵夫人の殺人事件(リーディオの父、グルマンが主犯の件)を解決したことで、邸の使用人達もアマンダに恩を感じていたので、至れり尽くせりだった。


 そんな女性が後継であるリーディオと懇意で、ここに長期に滞在するのだと言うのだから、お祭り騒ぎである。


「坊っちゃんとアマンダ様、良い雰囲気ね~」

「療養に来たと言うけれど、何処か体調が悪いのかしら?」


「あらっ? 私は腹部に大怪我をしたと聞いたわよ。大出血して今も貧血が酷いそうよ。国王の任務からは全て降ろされたらしいの」

「私もそう聞いたわ。何でも彼女が怪我をしている時に、お父上の伯爵代理(ファイン様)が全てを代行しているみたい。元々お父上が継ぐ筈だったのに、愛人と羽目を外し過ぎて代理に落とされたみたいだけど、更生したみたいよ。国王が変わったことも影響したのでしょうね」


「まあ、そうなのね。でもアマンダ様はまだ14歳ですもの。お父上がいると言うのに、伯爵家を背負うのは大変だったわよね。でも……彼女がいてくれたお陰でサントマイム伯爵家が助けられのだから、一概にどうとも言えないわね」

「そうよね。優秀な彼女だから救える件もありそうだものね」

 

「でもまあ、ここにいる間はゆっくりして貰いましょう」

「そうね。本当なら今頃、奥様を殺したギャンブルと女狂いのグルマン様と野心家のラフコンピ様に荒らされていたかもしれないのだもの。そうなれば、こんなに落ち着いた日々はなかったわよ」


「「「「本当よね~、感謝しかないわ」」」」


 

 既にサントマイム伯爵家の使用人達からも、好意的に受け入れられているアマンダだ。



「皆様、そろそろ業務に戻りませんか? 後の話は業務後にゆっくり致しましょう」

「「「すみません、そうします!」」」


 勿論オールバックとふさふさなグレーの口髭が似合うリプトンも、黒縁眼鏡の美丈夫で大人気だ。普段は人当たりが良くて優しい為、彼に恋心を抱く使用人もいる程に。


「フフッ、良い返事です」

 既にサントマイム伯爵家を仕切り始めてもいた。



◇◇◇

 サントマイム伯爵家では、後継者の長男リーディオの他に次男ローランドがいる。

 ローランドは亡き母ジーナの姪であるメイジと、その息子ライナスと隣国にいる。複雑な関係ではあるが二人は夫婦となり、彼は王宮の文官として仕えて穏やかに暮らしていた。


 彼らにも手紙を送り、アマンダがサントマイム伯爵家に滞在していることを伝えていた。


「アマンダ様が伯爵邸に? それを俺に伝えてくるなんて、これはもしかして?」

「ローランド様、きっとそうですわ。漸くリーディオ様に春が訪れたのですわ」


 二人は顔を合わせて微笑んだが、「でもなぁ」とローランドが呟く。


「兄は性格も良く優秀だが、顔は普通だからアマンダ様と釣り合うかな?」

 そんな彼にメイジは言う。


「アマンダ様は本質を見抜けるお方です。だからこそ、リーディオ様を選ばれたのですわ」

「そうか……そうだよな! さすが俺の奥さんは分かっているね」

「そんなことは。でも嬉しいお便りですね」

「そのうち一度戻ってみようか? ちゃんと挨拶もしたいし」

「そうですね。でももっと嬉しいお便りが届いてからでも良いでしょう? たとえば婚約とか」

「そ、そうだな。少し焦り過ぎたみたいだ。様子を見ることにしよう」


 和やかな二人に、ライナスもローランドの腕の中で微笑んでいた。



◇◇◇

「リーディオ様。今日の昼食は私が作りましたの。みんなで食べませんか?」


「それは嬉しいな。是非頂こう」


「アマンダの手作り……大丈夫なのか? いや、食べるぞ、食べる」


 アマンダの手作り料理にリーディオは微笑み、ポリフェノールはぎこちない笑顔を浮かべた。ポリフェノールは知っている、いつも食事を作るのはリプトンで、アマンダは料理が殆ど出来ないことを。


 食堂に通された3人が席に着くと、料理が順々に運ばれて来る。


「リプトンに手伝って貰いましたから、味は保証しますよ」

「そんなの心配してないよ。楽しみだな」

「別に安全性までは求めてないぞ。ただ旨いのかなって、不安? いや何でもない。ご相伴に預かろう」



 セッティングされた料理をリーディオが食べ、顔を綻ばせた。

「美味しいよ、アマンダ。初めてでこれなら、すぐにシェフになれそうだね」

「まあ! ありがとうございます」


「うん、まあまあだな。さすがリプトン…とアマンダだ。このパプリカとソースの飾りも最高だしな。旨いぞ!」

「ふふっ、良いですよもう。及第点なら良かったです。肉や野菜の切り方もたどたどしくて、洗練されていませんよね。難しいです、お料理。でも楽しいですわ」


 嬉しそうに話すアマンダに、周囲はホッコリした。料理を教えたリプトンも満足顔だ。

(お嬢様は筋が良いので、教えるのも楽しいです。肉だって魔獣を狩るより力も要らないし、後は微細なコントロールですぞ!)


 料理の経験値は低いが、いろいろと切ることには長けているアマンダ。「刃物が怖いの~」とか腰を引く女子供とは、そこら辺の経験値が違っていた。


 アマンダは何も出来なかったアルバの記憶を辿る。

 彼女(アルバ)はずっと、みんなに何かをしてあげたかった。力のない幼いエルフはずっとそう願っていたのだ。

 あまりにも短い人生だった。

 エルフでありながらも、僅か5歳で死を迎えていた。


 だからこそいろいろと恩返しも込めて、やってみたいと思っていたのだ。本当ならばサンド、アミール、ミストにも料理を振る舞いたいが、それは無理だろう。

 リプトンとは料理を共にしたので、それをカウントに入れていた。


(出来ることをやってみよう。今までならこんな時間も持てなかったし、何事も経験よね)


 そんな風に一日一日が充実していたアマンダと、それを微笑ましく思うポリフェノール。

(死の間際泣いていたあの子が、クロウの可愛い子が今は楽しそうにしている。良かったな、本当に……)


 からかいながら場を和ませるポリフェノールは、嬉しさが込み上げて泣きそうだった。それを密かに知るのは、リプトン(前世でポリフェノールの義息子、スターディネス)だけだった。


 多くの者(精霊や妖精、エルフや獣人、人間や魔族等)を助け救い癒してきたポリフェノールは、彼らの力を得ながらこの時間軸まで生き永らえていた。時には生命力を分けて貰い、時には物的な支援をされながら。


 アルバとバルデスの傷ついた魂を救う為だけに。

 エルフの寿命はとうに過ぎて、今は仮初めと言っても過言ではない状態だ。


 ポリフェノールの望みは後一つだけ。

 何とかそれだけを目に焼き付けたいと願っていた。




◇◇◇

 アマンダとリーディオは、まだ婚約をしている訳ではない。傷の療養としてこの地に訪れているだけだった。


 けれど二人の距離は近付いており、まるで家族のように過ごしていた。アルバとバルデスではなく、アマンダとリーディオと過ごすことで、気持ちの変化は確実に起こっていた。


 クリスマスの近付くある夜、アマンダを散歩に誘ったリーディオは夜空を見上げながら彼女に告げる。


「今の僕はアマンダを大事に思っている。勿論アルバだった君も大事だったよ。これからはずっと一緒に共に歩いて行きたいんだ、いつまでも」


 闇夜に輝く零れ落ちそうな星空は、二人を優しく照らす。

「ありがとうございます、リーディオ。私も貴方が好きです。傍に居させて下さい」


 照れながらも答えるアマンダを、勢い余って抱きしめるリーディオ。


「ありがとう、アマンダ。絶対に君を幸せにするからね。今度こそ絶対に……」


 彼の決意に、前世のバルデスも満足したのだろうか?

 心がスーッと軽くなるのを感じたリーディオ。

 それは彼女も同じだったようで、頬に一筋の涙が流れていた。


(ああ、アルバ。貴女も納得してくれたのね。そして祝福してくれるのね)



 この日アルバとバルデスの辛い思いは解き放たれ、二人の魂は正しい状態に戻った。


 満天の星空に流れ星が二つ。

 寄り添うように流れていく。



 アマンダとリーディオは、結婚を約束したのだった。




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