49 新たなる勢力 その1
以前王国へ謀反を試みた、前国王第一王女ステナ。
現在は、イノディオン家失脚後の我が国の貿易業の一部を取り扱うことになった、クレッセント商会に身を寄せていた。
ステナの友人、ドリップの祖父の営む隣国の大商会。
世界にネットワークがあり、他国との流通もますます増えて大忙しである。
その商会の目玉商品の1つとして、ステナの魔法能力が発揮されている物がある。
自分の想像した鉱物を生成できる能力で、新たなる魔法宝石を生み出すことだ。
小さい物なら生成前に思考するだけで、ダイヤやルビーの中にハートや鳥のイラストを別の色の宝石で内部に取り入れられる。
魔法の能力が上がったことで、細工が可能になったのだ。
今では大きな宝石に貴族の家門も入れることができ、高位貴族がこぞって求めるステナだけのオリジナル作品になった。
(ホイホイ出来ては怪しまれるので、秘伝のなんちゃらでと誤魔化し3ヶ月を目処で作成していた)
下手に金や銀を生成すれば、経済の支障になると思い考えた使い方だ。
以前の戦いの際、本気だしたらとんでもない量を生成出来ることが解ったステナ達(石炭を大量生成した件)。
非合法ながらその能力で金塊を作り出して売却し、その気になればその資金で小国だって買えるだろう。
勿論ステナの能力は秘匿され、テロの場で誓約が掛かっているので表ではばれないが、突如そんなことになれば目は向けられるだろう。
いや、一発でアマンダにはバレる。
それ以前に、恩人に迷惑が掛かることは出来ないし、やる気もない。
ステナ的には、自分の身を立てられるように考えた使い方が、宝石を作るだったのである。
ぶっちゃけステナは、筋力の有り余る肉体がある。
美しいピンクブロンドの髪、王族の中でも珍しい金目の鍛え抜かれた均整のとれた肉体が。
今まで通りダンジョンに潜り暮らしても良いのだ。
以前は冒険者ギルド長だったが、テロ前に副ギルド長に権限を委任したので、今はフリーの冒険者である。
だが、それを止める3人が言う。
まずは異母弟のシュパル。
『炎を自在に操る能力を持つ』
「もうステナは、危ないことなんてしなくて良いんだ。俺が一生面倒見るから! ずっと隣にいてよ!」
少々暑苦しさもあるが、命懸けでテロに着いてきた友人兼弟である。
出会い方も関係するが、シュパルは恋心も併せ持つ熱量でステナが好きである。
ステナにその気はないので一生片想い決定物件で、ステナが結婚するまで次の恋には行けないだろう。
軽い口調で、グレーの銀髪が肩にかかる164cmの細身体躯。
中性的でややつり目の大きな目、鼻筋はスラッと通り、薄い唇の男性にしてはやや高い鈴のような声。
そして商会長の孫達。
兄はバリアー『障壁・防護壁』、妹は防音『遮音:音を跳ね返して反射し音を通さない+吸音:音を吸収して小さくする』を魔法能力として持つ2人。
以前は茶髪に染めていた髪色を止めて、本来の銀髪と菫色に戻している。
ドリップは16歳ながら、祖父の右腕として経理業務に就いている。
コレーは14歳ながら、大人びた風貌で20歳前後と言っても納得する落ち着きを持っており、気のおけない仲ならいつもニコニコだが、仕事中は一切の感情を捨てた商会秘書となっていた。
6か国語が堪能で、周辺地域の言語なら聴書可能でさらに他国の言語も学習中である。
2人とも母譲りの甘い美形は隠しきれず、今も伊達眼鏡で美貌を隠している。
「貴女が僕を好きになってくれるまで、いつまでも待っています」
「ステナさんを本当のお姉さんと呼ばせてください!」
ドリップは隠すことなくステナに好意を伝え、コレーはバックアップしている。
2人ともステナが大好きである。
そんな3人が、自分が冒険者に戻れば着いて来ると言うので、冒険者に戻ることを保留にしていた。
やがてその生活も落ち着いてきた頃、アマンダから協力要請が来た。
アマンダの隠されていた顔を知る4人。
言いづらい出自も全て知られている、敵に回せない女からである。断れない。
手紙によると、自分が王国を不在にする間、王宮の警備をして欲しいと言うのだ。
そして怪しい者が居れば伝えて欲しいと。
どうやらアマンダは警戒されていて、王宮の悪だぬきの尻尾を掴みかねているらしい。
手は出さないで良いと。
3人にもメイドや従僕、文官として時期をずらし潜入し普通に仕事をし、アマンダの部下たる暗部と夜間接触し情報交換して欲しいらしい。
外部の訪問等があれば、役職づきの暗部が呼び出すので彼らを護衛をして欲しい。王宮にはステナ達を高位貴族の寄子として雇い入れの申請をしており、親戚(の暗部)に呼ばれたとしても抜け出せるようにしてあるそう。
これは特別なことではなく、そう頻回でなければ若年貴族なら多々あるとのことなので目立ちはしないそうだ。
ステナが以前テロの為に、数年間に渡り密かに集めた仲間達。
『前王の御落胤』
信じられそうな者12人、利権に絡みたい者5人程で、1名は城に入る前に捕まっていた。
その1人は後者で、特に理念もなく利権の為に仲間に入った者だった。
ちなみに利権組には城に(テロに)来る者以外には、詳細を知らせていなかった。
どこからか活動資金を持つことを知っていて、向こうから接近してきたのだ。
大体は手数料を渡して物品購入を頼む程度だったが、金が欲しいと実行班へ加わって、その1名は案の定捕まったのだ。
テロの後、ステナからの情報でこれらの者達を調べあげた。
今後も王国に仇なすことがないか調べる為に。
そしてステナは、テロの件についてはできうる限り罪に問わないように願った。
実際ステナが信じられる者の中から、新しい国王の側近となった者もいる。
が、足取りも掴めず出自自体、名乗った家門自体が合致しない者が数名いた。
その者は恐らく、本国または他国の間諜だと思われた。
それらの者から国王を守って欲しい。
そして新たな情報が得られるなら、尚ありがたいとのこと。
勿論ステナ達に護衛を依頼したのは、恩に着せる訳ではない。
所謂テストのようなもの。
今後の王国の方向性を、ステナ達にも考えて欲しいからだった。
今後アマンダは、ある方向に向けて歩き出す予定があった。
そして今の最大の予定は、リプトンと共にある者を訪れることだった。
リプトンの記憶に残る前世の(リプトンの)育ての母、ポリフェノールに合う為に。
メイファー・サントマイムが亡くなった事件の後、リプトンは夢で導かれた。
そして自覚した、自分の前世がスターディネスであったことを。
前世のバルデスことリーディオと、前世のアルバことアマンダと、前世のサンドことダージリンのことも。
……そしてアマンダの母が前世の愛する女性クロウ、マリアンヌの前世がサンド(ダージリン)の妹のミストだと言うことも。
夢のような映像が前世だと言うことは、目覚めて直ぐに枕元に立つポリフェノールによって証明された。
「お前の母を導いたのは私だよ。見覚えがあるだろう?」
その姿は、幼い頃に出会ったままの姿のポリフェノールだった。
リプトンの母が亡くなった時に、伯爵の隣にいた美しい女性は確かに彼女だった。




