44 令嬢は思う
クラプフェン王国、第一王子『リンディアス』
今回の舞踏会の目的は、時期王太子の婚約者の選定。
嫁ぎ先の最高峰だ。
多くの家門の親や息女が、栄華を求め目指す。
麗しの容姿も併せ、せめてもの記念に僅かでも言葉を交わしたい息女達が、リンディアスの前へ長蛇の列をなしていた。
それを見て、嘆息する者が一人。
サクラ・カザナース侯爵令嬢。
貿易行で益をあげる有数の資産家令嬢である。
彼女の父方の祖母は、前々王弟の後妻であった。
ウェインライト公爵令嬢の次女として、生を受けたフローズン。
それが祖母の名前であった。
臙脂色の癖のある髪は、艶やかで華やか。
コバルトブルーの大きな瞳は、見る者を引き込む魅惑の色。
スタイルはまだ年齢的に子供のままだが、ツンと形の良い鼻梁と陶器肌は、正式なデビュタントとなる16才前にはほぼ完成していた。
お茶会等に参加はするも、既に婚約者も決まっているフローズンは、呑気に幸せな毎日を過ごす。
婚約者のサタディも侯爵家の嫡男で、幼馴染みの2人は穏やかな結婚を夢見ていた。
そして16歳のデビュタント。
サタディにエスコートを受け、舞踏会のホールでくるくるとドレスをはためかせ拙く踊る2人。
時折「失敗しちゃった」と、苦笑するフローズンと気付かなかったと微笑むサタディに、周囲は暖かな微笑みを浮かべる。
そこで踊るフローズンを、絡み付くように見詰める視線が一つ。
翌日、穏やかな日常に翳りをおとす手紙が・・・・・
王弟(ブルーギルグ大公)のロックソバンから、妻に迎えたいとの内容だった。
フローズンの父フロイトは、王弟の元、財務管理を行う部署(財務省)で勤務している。
ロックソバンが財務大臣、フローズンの父が副大臣だ。
ロックソバンは48才で、亡き愛妻との間に息子が2人、娘が1人おり、後継者は長男に決まっている。
息子が25才と、22才。 娘は20才。
長男は結婚し妻子もいるが、次男と長女は婚姻前である。
フロイトは、何かの冗談かと思った。
ロックソバンの子供達よりも年下の我が娘に求婚だなんて。
自分の長男は19才、長女は17才。
フロイト自身も40才になったばかりだ。
ロックソバンではなく、その子供達との婚約ならば釣り合いは丁度良いのに・・・・・
変態なのか?
いや、今まで浮わついた話を聞いたことはない。
亡き妻一筋だったと聞くが。
それにもう、幼い時から決まっている許嫁もいるのだ。
もし大公家に嫁いでも後継者がいる為、子が産まれても大公家も継げない。
他にも爵位は保持しているだろうが、次男もいることだし確実に揉めるだろう。
年齢だとて私より高齢だ。
いつまで元気でいられるか?
はぁ、問題しかない・・・・・
だが、こちらから断れる話ではないのだ。
何しろ王弟、王の愛する弟なのだから。
まだフローズンには話せない。
はっきり決まるまでは、迂闊に話したくないのが本音だ。
可愛い可愛い愛娘を、出来るなら不幸にしたくない。
更に翌日、仕事を終えた執務室で呼び止められたフロイト。
ロックソバンは、思い詰めた顔で婚姻についての返答を求めてきた。
手紙が届いた時点で、ほぼ断れないとは思ったが、気の迷いと言うこともある。
どうしてフローズンを娶りたいのか、尋ねることにした。
ロックソバンは言いづらそうにしながら、『デビュタントで一目惚れをした』と言う。
あの時に初めてフローズンに会ったと。
夜会はデビュタントが初めてで、他で出会う機会はなかったであろう。
それは解る。 解るがあの短時間で見初めたと言うのか?
それ程才女でもなければ、傾国程の美女でもない。
私とすれば、目に入れても痛まない位愛しているが、それは置いておく。
顔を青くするフロイトの表情を窺いつつ、話を続けるロックソバン。
「妻の、亡くなった妻に生き写しなのだ……… 失礼だと思ってる。 だけど考えると止められなくて……… 妻は娘を産んで産後の肥立ちが悪く、そのまま亡くなって。 フローズンは、生まれ変わりとしか思えないんだ。 他の男の者になる前にと思い、結婚を打診した。 必ず幸せにする。 だから私にフローズンをくれないか? 頼むよ!」
縋るように言い募るロックソバン。
混乱するフロイト。
『これは一目惚れなんかじゃない。 完全な身代わりじゃないか』
馬鹿にし過ぎだと憤り、直ぐに固辞だと紡ごうとした言葉を、先にロックソバンが制した。
「でも、万が一断られれば、相手の男をうっかり殺めてしまうかもしれない。 それに見える所にいて手が届かないのは苦しいから、君には領地に戻って貰うかもしれないな」
仄暗い目が、フロイトを捕らえる。
確実に仕留める手段を放つ、肉食獣の囲い込み。
自分の代で、閑職に堕ちるわけにはいかない。
爵位を支える為には、領地だけの収入に頼る訳にいかない。
農耕地が多い領地だ、災害に備えて外貨(領地以外の金銭)の蓄えも必要なのだから。
それに娘の婚約者への殺害も仄めかしたぞ!
何てことだ!
その場で断りたい衝動を抑え、フロイトは帰路に着く。
権力に抵抗を許されない立場。
国王との仲も良く、(こちらに)何かしてきたとしても、隠蔽されることは容易に予測された。
再度家族会議をすると伝え、直ぐには頷かず何とか保留を勝ちとった。
帰り際「君は賢明だと信じてるよ」と、追い立てる言葉に震えた。
せめて被害を最小限に。
父親である前に、貴族の立場も捨てられないもどかしさ。
『娘には、恨まれるな。 本当にすまない。 でも父さんは、お前を愛してるよ。 ああ、命を狙うなどと酷すぎだ・・・』
ウェインライト公爵は、家族全員とサタディ・アフュートとその両親を呼び寄せ、一連の出来事を伝えることにした。
事は王弟(強権)も関わるので、簡単に婚約解消をして済む話ではないからだ。
ただフローズンの婚約解消をして、王弟に嫁ぐだけでは終わらない話だ。
もし、サタディが諦められず王弟に逆らったら………
もし、2人が駆け落ちしてしまったら………
もし、王弟と婚姻してからもフローズンとサタディが、仲良く話をしていたらそれだけでも逆鱗に触れそうだが、不義密通等してしまったら………
もし、王弟に逆らい結婚を強硬してしまったら………
そこまでせずとも、純潔を失ってしまったら………
これは両家が甚大な損傷、家門の没落にも繋がるかもしれないあり得る話。
だから関係者を集めたのだ。
今までフローズンには内緒にしていた為、衝撃は初めて聞くこととなったサタディの家族と同様だった。
さらにここで、残酷な決定をしなければならない。
両家の為にこの婚姻を解消し、フローズンを王弟に嫁がせることだ。
勿論フローズンもサタディも混乱し反対しようとしたが、その先に見える絶望を前に押し黙る。
サタディの親アフュート夫妻とて、2人を引き離したくない。
もう既に、フローズンは2人の娘に他ならなかったから。
俯いて泣く2人に、フローズンの祖父で前当主ホーンダック・ウェインライトは語りかける。
「二人の思いが強ければ、数年後に共に暮らす方法がない訳ではない。 ただ辛いことも多い。 聞くだけ聞くか?」
頷く2人だが、内容は若い2人にはあまりにも酷であった。
泣きそうな表情で見つめあい、サタディはフローズンの両手を固く握りしめた。
「どんな君でも、僕の愛に変わりはないよ」
そんな言葉に涙が堪えられず、泣きながらフローズンも返す。
「私だって、昔からサタディだけが好き、好きなの」
ホーンダックは再度尋ねると、是非試してみたいと言う。
愛し合っていても、亀裂の入りそうな作戦である。
しかし2人は互いに抱き締めあい、頷く。
この決断に双方の両親も、乗ってみることにした。
リスクは承知の上で、それでも大事な2人を犠牲にして生きることは、この家族には出来なかった。
それが最大の強み。
ホーンダックは強く語る。
「この国もかつて理不尽が横行していた。
それを正したのは、1人のエルフだった。
そのエルフの力は今もこの国に根付いている。
詳しくは語れんが、きっと力になってくれるだろう。
幸いなことに、我々には既に家族の味方がいるしのぉ」
豪快に笑い、今後の作戦を立て始めるホーンダック。
王弟には、まずはフローズンとサタディの婚約解消を告げ、直ぐに再婚約は体裁が悪いとして、1年の猶予を置いた。
その間、何度もお茶会を行い交流を深めることにし、それまで純潔を守らせることを魔法で誓約させた。
これは望まぬ妊娠を避ける為に必要だった。
王弟もしぶしぶ承諾した。
何だかんだと無理を通したのは理解しているので、親の心情を思い婚姻まで純潔を守ることは受け入れた。
その間サタディ達は、隣国グラナダリアで商売をする拠点を設ける為にホーンダックとその親友の女性と、毎日駆けずりまわっていた。
今後隣国で暮らす為に。
そしてサタディ・アフュートは、隣国のエイン・ウェイパーの戸籍も手に入れたのだ。
勿論クラプフェン王国にもそのまま戸籍はあり、カモフラージュで弟の婚約者であったユンファナと結婚した。
弟にもユンファナにも、王弟を欺く為に白い結婚を承諾してもらっていた。
きっと独身のままだと未練があると思われて、命の危険が生じる可能性があるからだ。
思惑通り、結婚したサタディには一切興味を失った王弟は、今までつけていた監視をはずした。
そして一年後、王弟ロックソバンと、フローズンは婚約。
その半年後に2人は結婚した。
フローズンの両親と兄と姉、ロックソバンの子供達と長男の妻と子で婚姻届けの調印を見届け、会食をして終了である。
ロックソバンは大々的な結婚式を希望したが、後妻に入ることになるフローズンは、前妻の子供達の気持ちや後妻の身には相応しくないと固辞したのだ。
ロックソバンの子供達も、最初は財産狙いではと警戒した。
ロックソバンは、顔は美形ではあるが年相応でシワも弛みもある。
一部フケ専と言うおじさんが好きな女子もいるが、以前の婚約者は同年代であり違う気がする。
体だって腹も出ているし、スマートとは程遠い。
性格だとて優しい所はあるが、兄の国王に甘やかされ我が儘だ。
今回の婚姻も、噂としてはデビュタントで互いに引かれあったと言うものだが、既にあった婚約を解消してまでかと思うような強い動機は考えられない。
噂もきっと、こちらで巻いたものだろうし。
フローズン、サタディ共に侯爵家で、身分も財産にも困窮していない。
初婚ならまだしも、自分の親より上の年齢のおじさんである。
何か裏があると思い、時期大公の権限で執事を問い詰めると、あっさり暴露した。
自らの親ながら、愕然とした瞬間だった。
それでもまだ、白い結婚をして財産を持たせて逃がしてあげるなら納得もしただろう。
妹を産んで亡くした、最愛の母によく似た美少女。
どんなに女性に迫られても、靡かなかった父。
娼館等にも通う素振りもなかった父。
寂しさに暮れる日もあっただろう。
その父が側で慈しむだけなら、心は波立たなかった。
でもあの目は、欲情している者の目だった。
フローズンを母の身代わりにして愛することが解り、吐き気がした。
財産狙いでないなら、脅迫だろう。
皆を守る為に己を犠牲にする彼女に、どうしようもないやるせなさを感じた。
自分の可愛い子供、最愛の娘パティに同じことが起きれば正気でいられる気がしない。
でも犠牲を無にしないように、周囲も耐えていることに気づく。
彼女に意地悪などしないように、弟妹に言い含める必要がある。
そしてその兄弟妹は、フローズンが穏やかに過ごせるように使用人にも通達するのだった。
その対応が暖かくて、フローズンはロックソバン達の子供達と和やかに過ごし、使用人とも仲良くしていた。
時に娘とは気安く、前妻の肖像画とフローズンを見比べて、全然フローズンの方が可愛いと冗談を言い合える仲になっていた。
ロックソバンにも労りの声を掛け、生活に満足しているアピールもした。
相変わらず、茶会も夜会も買い物さえも許して貰えなかったが、文句の一つも言わなかった。
邸で外国語を学び、いつか旦那様のお役にたてるかもと真剣に話す。
周囲はこのままでは難しいと思いつつ、微笑みだけを返していた。
ぬか喜びさせたくないから。
そして1ヶ月が過ぎ、ロックソバンが仕事で長期出張(2週間程度)に行く際、護衛や監視をつけても良いから生家に戻りたいとねだった。
試しに許可すれば、買い物や飲食もせず、ただ生家へ行き戻るだけだった。
それなら安心と、出張がある毎に生家に戻る。
ロックソバンも、ストレスが溜まるよりはと思った。
自分が居る時なら許せないが、居ない時なら良いだろうと。
それが唯一のフローズンの外出となっていた。
そして結婚後、半年で懐妊。
翌年女児を出産する。
出産後、ウェインライトの領地の別荘で、静養することになったフローズン。
前妻の産後の肥立ちのこともあり、用心の為静養を許した。
フローズンの両親と姉、歴戦の武者で祖父のホーンダックも同行することとなった。
ウェインライトの私邸で、海と山に囲まれた場所だ。
私邸の道に入るには検問もあり、山に入りこむには切り立った崖を登らねばならない。
私邸周囲には、私兵がいて常に守りがある安全性に、流石のロックソバンも許可をするしかなかった。
1週間を過ぎた時、ロックソバンに連絡が届く。
明け方、朝日を見に行ったフローズンが行方不明になったと。
別荘のすぐ前は海で、水平線が広がる幻想的な水色の湖面。
朝夕で、日の出日の入りが大好きだったフローズン。
いつも家族が付き添い浜辺まで来ていたが、回復傾向にあったフローズンはその日、いつもより早く1人で家を出てしまったようだ。
テーブルに、『気分が良い目覚めなので、そのまま散歩して来ます』とメモが残されていた。
浜辺にはサンダルが残され、海に入った痕跡があった。
家族と私兵と地元の警察は、その後10日海山を捜索したが、遺体はおろか痕跡も発見出来なかった。
ロックソバンも連絡を受け、すぐ悲愴な面持ちで捜索に加わっていた。
捜索打ち切り後は、表情も抜け落ち脱力して1人では動けなくなっていた。
「産後にまた、私1人残し旅だってしまった…………… ベリフェナ、ベリフェナー、うっうっ」と、亡き前妻の名を呼び続け、王都に戻ってからも泣き崩れるロックソバン。
フローズンの名を一言も呼ばないことで、フローズンがただの身代わりだと証明されたようなものだった。
その不義理さに、ホーンダックはフローズンの遺児を連れて帰りウェインライト家で育てることを告げた。
フローズンは生死不明の行方知れずであるが、何処かで生きているかもしれないと、ウェインライト家で僅かでも捜索することにした。
そして、大公家の有責で離縁を願い出たのだ。
ロックソバンは、未だに大公家当主を息子に譲っていなかったが、今回の混乱から終息しない為、なし崩しで嫡男ジファートが継ぐことになった。
深く頭を下げ、大公家夫人に相応しい慰謝料を手渡した。
親権も手放し、ウェインライト公爵夫妻の養子となることを承諾した。
そしてフローズンが見つからないことが、とても残念だと言葉を続けた。
ホーンダックもフローズンの両親も、真摯なジファートとこれからも交流を続けていくことになった。
ジファートもジファートの弟妹も、フローズンの子供に会いに来たいと希望したからだった。
恐らくフローズンの生存は望みが薄い、でもこの子だけはその分幸福になって欲しいと。
「きっと幸せになりますよ。 こんなに周りに強い味方がいるのだから」
ホーンダックも、暖かい微笑みをジファート達に向けていた。
フローズンが行方不明となり、捜索に出たサタディも行方知れずとなった。
サタディの妻ユンファナは、サタディの失踪1年後に医師に診察を受け純潔であることで、白い結婚が証明された。
そしてサタディの弟であり、元々の婚約者のサンディスと結婚したのだ。
今フローズンは、ミラン・アーガスチルの戸籍を取得し、グラナダリア王国の国民である。
サタディ・アフュート改め、グラナダリア王国のエイン・ウェイパーと結婚し、ミラン・ウェイパーになる。
2人は以前の婚約解消後、何れ2人で暮らすことを夢見て隣国での商売を始めていた。
ウェインライト領地特産の、メイプルシロップを使ったお菓子やデザート、飲料と共に売り出し始めた。
クラプフェン王国には、せいぜいメイプルシロップしか販売できなかったが、グラナダリア王国にはホーンダックの親友の伝で驚くべき多くの流通に乗せ、成功させることができたのだ。
ウェインライト領は表向き、ただメイプルシロップの販路を拡大しているだけになっている。
しかし、お菓子類の販売やその店の経営は、新しくグラナダリア王国の戸籍を取得したサタディだった。
サタディはエイン・ウェイパー名で、ずっと駆け回り頭を下げて、商売はチェーン店になるほど繁盛した。
そしてフローズンが置いてきた子供『サンフロート』は、正真正銘フローズンとサタディの子である。
フローズンは結婚して大公家に住んでから、欠かさず避妊薬を飲み続け、行為の後は毎回膣を念入りに洗浄していた。
純潔の魔法で誓約したので、やむなく処女はロックソバンに散らされた。
苦しくて悔しくて、行為を終えてから1日中泣き続けた。
新婚旅行もなく、幸いなことに財務大臣のロックソバンは、決算期であり休めない。
夜になるまでに涙は枯れ、警戒されないように、笑顔で帰ってきたロックソバンを迎えた。
ただその夜は、体が痛いと言って行為は止めてもらった。
その日も避妊薬は、飲んではいたが。
翌日は盛られ、1日毎に行為が行われる。
痛いと言わなければ、毎日行われたことだろう。
毎日避妊薬を飲み、洗浄を繰り返す。
流石に気が滅入りそうだった。
しかし、ロックソバン以外の家人は優しく穏やかで、安らぐことも多かった。
夜の行為に限界が及んだ時、定期的に財務の視察があることを知った。
そこで生家に戻り、サタディと子供を作ることにしたのだ。
最初は警戒されていると思うので、ただ帰るだけだったが、次第に警戒が薄れた頃、使用人に扮装したサタディがフローズンの部屋で朝から待機し、下で待機している護衛の目を潜り愛を重ねたのだ。
フローズンは、純潔を失くした自分を受け入れてもらえるかずっと心配で不安だった。
だけどサタディは、生きて腕にいてくれるだけで何にも替えがきかないと、強く抱き締めてくれたのだ。
そして、隣国に行くまでは生き延びることを約束し、互いに出来ることをしていった。
フローズンは、ロックソバンを愛していると演じた。
ただ大公家の人達は、フローズンを気の毒に思い、大層親切にしてくれたので胸が痛んだくらいだ。
外国語を旦那様の為にと学んでいたのは、勿論サタディの為である。
娘のサンフロートには、10才の年に全てを打ち明けた。
時々、旅行でグラナダリア王国に来ていたサンフロートは、とても喜んでくれていた。
そして、「両親が4人もいるなんて、最高だ」とも言ってくれた。
養女だと知って辛い時期もあったろうに、優しい子に育ってくれたものだ。
本人は、『実は父の不義の子では』と心配していたそうなので、悩みもなくなったとか。
そしてカザナース侯爵家は、大公家からもぎ取った慰謝料の一つである。
サクラの父は婿養子なのだ。
そして12才の年にサクラも、隣国にいるのは本当の祖母だと知らされた。
だからサクラも力をつけて、振り回されず生きる為に商売を頑張りたいのだ。
そして結婚に夢など見ない。
何かあれば隣国に逃げようと思っているが、肩身の狭くないようにやっぱりお金を持っていきたい。
そんな自分の前に、勉強は出来ても貴族のことに無知なマリアンヌが現れたのだ。
マリアンヌが、王子に憧れるのは良いと思う。
高慢ちきな令嬢が、王太子妃になるのは嫌だもの。
ただ色々と教えてあげるわ、本当に自分をかける価値があるか考える力をね。
野心があるけど、純情そうでなんだか心配なのよ。
悪い(女誑し)ジゴロに捕まりそうで。
なんだかんだで、人の良いサクラ。
だが、自分の父が愛人に貢ぐのはちょっと業腹。
悪さが進めば、母につく覚悟なのだ。
『だいたいの男は信用なきにけり』byサクラ心の俳句
(東国の留学生に習ったのよ、俳句良いわね)
因みにホーンダックの女の友人は、ポリフェノールである。
『目には目を 歯には歯を 理不尽には理不尽を 行うことに
躊躇なし』
ポリフェノールも、東国の友人に短歌を習ったらしい。
2人ともまだまだ素人で、表現の崩れと字余りと季語なしが減点。 発想の評価は加点と言うとこか?