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43 貴婦人達のおしゃべり

 いつの時代でも、女性達の関心は、ドレスや宝飾品等のお洒落に・美肌や体型等の美容・素敵な恋愛話である。


貴族社会とて身分の差はあれど、憧れを語るのは自由。

恋愛結婚等は極一部で、ほぼ政略の元に嫁ぐのが大半である。

だから夢物語として、不敬ではない程度に騒ぐのは微笑ましいこと。

娘ではなくとも、その母世代でも、毒なく場を和らげる緩衝材となる恋話、または恋話風なやり取りは楽しいものだ。


それでも、既に婚約者がいる男性に対しては、注意が必要ではあるが。

一番害がないのは、オペラ等の劇場の役者や歌手、手が届かない身分の男性の話である。


誰々の声が素敵だの、私があと何歳若かったら等、ありもしないことで笑いに繋げることで、リラックスを誘うのだ。

本当に真剣な話なら(おおやけ)ではしないので、安心できるはずなのだが。


「新王は、凛々しくていらっしゃいますね」


「ええ、前王はお優しい感じでしたから、たま違う印象ですね」


「第一王子様も、金髪に碧眼で王様に似て素敵ですね。」


「そう言えば、剣の腕もなかなか筋が良いと、騎士団長が誉めていらっしゃるとか」


「お素敵ですね」


「まだ、婚約者もいないそうですわよ」


「均衡の取れるお家は、気が気ではないですわね」


「前王は王女様しかいなかったし、てっきり王配になる者の選別に入っているものと思ってましたわ」


「とんだ番狂わせですわね。 既に婚約者のいる高位貴族の方が多いですのに」


「もし、はっきりリンディアス様が王太子と決まれば、婚約破棄してでも婚姻を結ぶ家も出るかもしれませんね」


「まあ、(わたくし)達の家格には、関係ないですけれども」


「「「「「「「ほほほほっ」」」」」」」」




舞踏会のホールでは、お喋り雀達が情報線を繰り広げる。


言外だが、この催しが婚約者探しであることは明確である。


既にリンディアスの姉2人が、王位に関心がないことを取得している貴族家では、どう動けば旨みがあるか算盤を弾き始める。

時期王太子妃を出す、またはその(妃になる)女性に加勢することで、後に便宜を図ってもらえるように画策する。

聞き逃すことは出来ない。


「誰々のお嬢様は◯才で、お若く婚約者がまだとか。 少し年齢は開きますが、王妃教育を受けるには丁度良いですわね」


「あら、◯◯侯爵の◯◯様は、留学中で婚約者もなしとお聞きしましたわ。 知性的で素晴らしいですわ」


「それなら、◯◯様なんて、お美しくて隣国の皇族からアプローチが来ているとか」


「まあ、探してみますとたくさん候補がいらっしゃいますね。 これから楽しみですわ」



扇で顔を隠しながら、女性達は囁きあう。

あくまでも小声で、優雅に、嫌味なく。



マリアンヌやサクラのドレスの披露で、若い婦女子がお洒落に興じている中、御婦人達は噂話を。


そして、本当に次期王太子妃を狙う親達は、真剣に娘に準備をさせてこの日に挑んでいた。

王達への挨拶も振る舞いも完璧である。

僅かにリンディアスと会話を交わし、頬を染める妙齢の女性達。


その様子を眺めながら、マリアンヌとサクラは女性達と関わりを深めていった。


会話の中で、リンディアスのことが話題にでると、そちらに意識が向いてしまっているマリアンヌ。


『あの方がリンディアス様。 婚約者がいない・・・のね。 そうなんだ』

顔に出さないように、(リンディアスの)情報も吸収する。

しかし、気合いを入れてサクラに向き直った。

『今日のメインは、ドレスの宣伝だもの。

まずは皆に受け入れてもらわないと』



そして目にする、リンディアスとアマンダとの会話風景。

それは毒物混入が無いように、配慮された只の水分補給。


暗部のことは公開されていないが、アマンダとアルベルトの剣技の技が高いことは周知されている。

昔からポリフェノール家当主は、剣技か魔法が秀でていることで、王族の警護に当たることが多い。

ポリフェノール家の執事や従僕も、何れかの技持ちしかなれないと言われている。

その為一介の執事達も、アマンダの指示あらば城への入宮が許されていたのだ。



アマンダに微笑み掛けるリンディアスに、マリアンヌは思う。

『私にも笑顔を向けて欲しい。 側にいられたなら』と。



誰もが憧れる美しい王子に、マリアンヌが頬を染めたって可笑しいことではない。

妙齢の息女達も、何人もそうしている。


その様子に困惑気味なサクラだとて、リンディアスの顔は割りと好みだ。

だからと言って、婚約者になりたい訳ではない。

過酷過ぎるし、長生きしたい。

因みにサクラも婚約者はいない。

それは、父には求められていない商売に生きる女になる為だ。

自分の商会を大きくするのが夢なのだから。

なので、無理矢理婚約者作りを断っている。

それも、いつまで続けられるかは解らないが。



そして牽制するように、2人を睨む女性が1人。

アガサ・マグダーリン公爵令嬢だ。

アガサは公爵家傍系の、伯爵家嫡男に嫁ぐことに決まっている。

幼い頃からの、政略的許嫁(いいなずけ)である。

しかし、その許嫁エキュー・サンガストンは顔は大変良いのだが、女にだらしなく人目がある所でも接吻する等、節操がなかった。


苛烈気味のアガサは、勿論抗議するも「嫉妬する君も可愛いね。 一番は君だから安心して」等と誤魔化され、流されるだけである。

両親に不満を言うも、サンガストン伯爵が持つ魔石やダイヤモンドの鉱山からの収益は国内トップであり、系列事業の見返りで潤うマグダーリン公爵家は不満を言いづらい状態であった。

婚約時は発見されていなかった、魔石が採掘されるようになってから、伯爵家の発言権が大きくなってしまったのだ。


エキューとすれば、経済力もあり陞爵(しょうしゃく)する可能性も高い我が家に、態々(わざわざ)プライドの高いアガサを迎い入れる必要性は乏しい。

それは、エキューの父サイファも同様だった。

だが、こちらからの婚約解消若しくは破棄は、慰謝料が掛かる。

その為、ずっと婚約継続をしているだけなのだ。



アガサもそれを解らないではない。

生家(経済面)のことも理解の上だ。

しかし譲れない矜持もあるのだ。


『もし私が王太子妃になれば、全て上手くいくのでは。 私がこれ以上惨めになるなんて、自分が許せない』

そう、この時アガサは、危険な賭けに出ようとしていた。

王太子妃になり、全てを見返してやると。


『そうすれば、エキューにもマリアンヌにも、・・・・・サクラにも、もう馬鹿になんてさせない!!!』






リンディアス否、男に信を置かないアガサは、ただただ王太子妃を目指す。

後日エキューに見切りをつけ、両親を説得しリンディアスの婚約者候補へ立候補するのだった。




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