40 噂を逆手に
「私、決めましたわ。貴女を広告塔として使いたいの。見返りは、悪い噂を一蹴させることでどうかしら?」
サクラ・カザナース侯爵令嬢。
父は他国との貿易業を手広く扱う、辣腕経営者である。
その娘であるサクラも、商会の一部門を任されていた。
少女・婦人服部門である。
幼い頃から英才教育を施されてきた彼女であるが、絵画や骨董品、宝石の目利きが絶望的に出来ない。
美術品等の高額取引が成功する為には、必須スキルなのに。
まだ14才と言われるかもしれないが、目利きとは生まれついての才能。
魔法能力と同義と言っても言い。
どんなに努力を重ねても、駄目なものはダメなのだ。
カザナース侯爵家において。
だいたい殆どの子は、5才で物の良し悪しが理解できるようになる。
年が上がる毎に、素材、大きさ、色等が本人の見る物にだけ表示される。
さらに年を経ると、産地や加工者の名前、加工の細工技術も表示された。
家系による特殊能力と言って良いだろう、目利き能力。
なぜかサクラには、付与されなかった。
時々他能力、若しくはスキルなしの子もいるが、危険な能力が発現するよりは、ない方が良いとされていた。
10才前後に受ける魔力測定では、残念ながら目利き能力は(サクラの)鑑定に出なかった。
それ以降の年に現れることもあると言うが、それは稀であるようだった。
「女の子は嫁に行くのだ。余計なスキル等なくても良いんだよ」
優しく微笑み、頭を撫でる父親。
だけどサクラは納得出来なかった。
人一倍努力した。
兄弟達の何倍も、幼い時から無駄と言われても頑張ったのだ。
しかし結果は出なかった。
だとて諦める彼女ではない。
目利きではない、商品の販売方法。
流行を作り出すこと。
それがこの家で生き残る道なのだ。
そうでなければ、政略の道具として直ぐに売り払われる。
商品価値の高い、若いうちに。
そんなことはお断りだ。
自分の価値は自分で作る。
彼女は、成人者の自国と他国のモード(流行)と、この国の若者のファッション傾向を、街頭の調査と販売経路(個数・場所・年齢等)で把握。
また国民が憧れる、現王室の服飾の好みを把握し分析。
その上で、最高の職人の技を用いて芸術(服飾)を作り出す。
それには、誰もが注目する広告塔が必要。
目に入れなければ、勝負にもならないのだ。
誰にも負けない気品と美しさ、優雅さで、そのブランド力を上げるモデルは、マリアンヌしかいないと思った。
父親譲りの美しい顔と悪い噂で注目される彼女が、実は可憐で傷つきやすい令嬢と知れれば、そこにはギャップ(へだたり)が生じる。
所謂、ギャップ萌え。
それは人の心に突き刺さるキーワード。
幸いこのクラスは、優等生で高位貴族の子息・息女も多い。
今回の件で、まだまだ粗削りのマリアンヌを、応援する追い風もある。
私は、彼女に賭けるわ。
その為の根回しも、勿論全力でする。
彼女には、兄が2人と弟が1人。 女の子はサクラだけで、3番目の子。
厳格な父以外には、めちゃめちゃ兄弟に可愛がられていた。
母は童顔なのもあるがとても可愛い。 父は我が儘を許し放題で、(母は)仕事なんてしない人だった。
カザナース侯爵家切っての、根っからの商売人魂の塊であるサクラ。
与えられるのではなく、働いて掴み取る心。
そして信じた者には、大量のコインベットだ!
というかね、魅了されたんだわ。
美しいマリアンヌさんに。
でも手を貸すだけではダメ。
私は商売人だから。
ギブアンドテイクよ。
「私に任せて。最高の淑女に仕上げるから」
決戦は2週間後の王宮舞踏会にて、輝くマリアンヌを披露するわ。
マリアンヌが承諾しない間に、何かが決まったようである。
でも、何だか味方してくれるようだし、立ち止まる訳にはいかない。
アマンダだって、今のところ攻撃はしてこないけれど、いつどうなるか解らないし。マリアンヌがポリフェノール姓を名乗れないことを、登校日に伝える意地悪もしてくるし。
家では顔さえ会わせないし……もう~。
うん。受けて立つ! ドンと来いだ!
そんな感じで、マリアンヌに友達が出来た。
「よろしくお願いいたします」と、サクラに微笑むマリアンヌだった。
※因みに、アマンダがちゃんと意地悪? すれば、既に3人の葬式か失踪届けが出ているだろう。
強く怒りを向けているのはフェインなので、(最近忙しくて)マリアンヌはアウトオブ眼中なのであった。




