表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お母様はイケメンで失敗しましたが(笑)、最後に笑うのは誰?  作者: ねこまんまときみどりのことり


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/63

3 ジンジャーの気持ち

 アマンダが去った後、伯爵は2人を各々の部屋へ案内した。


 伯爵:「二人とも疲れただろう? 今日からここが君たちの家だからね。ゆっくり過ごして」と、穏やかな笑顔で労りの声をかけた。


 ジンジャー:「ありがとう、フェイン。とても素敵なお家ね。でも、奥様が亡くなったばかりなのに、私たちがここで暮らすことに娘さんは何も言わなかったの?」

 不安げな表情で伯爵を見上げる。


 伯爵:「大丈夫さ。物分かりの良い子だからね」と、薄く笑った。



 現伯爵フェイン・ポリフェノールは、スクラロース前伯爵家の三男である(現在、長男が当主になっている)。


 突出する才はないものの、人当たりが良く物腰が柔らかな様子は、万人に好かれた。


 時々、同性からの嫉妬も買ったが、軽く往なすスキルも持ち合わせ済みだ。


 幼いときは、可愛いくりくりおめめの天使とも言われた。


 成長するに連れて、母親譲りの美しさが前面にでると、老若男女が笑顔になるほどのイケメンとなる。


 如何せん顔以外は、武勇・魔力・知力とも平々凡々だったので、冒険者にでもなり世界一周でもしようと、のんきに考えていた。


 野心も攻撃性もない。


 良く言えば優しいが、優柔不断なのだ。


 イケメンなので、女性からのアプローチは多いが、女性側も内面を知っているため、都合の良い恋人止まりで、本人もそんな状態に甘んじていた。



 だが、ここでアマンダの母の登場である。


 ある舞踏会で、ファーストダンスを踊り、恋に落ちてしまったのだ。


 惚れっぽい性格だったので、このようなことは何度かあった。


 そのため、ポリフェノール伯爵達は、いつもの気の迷いだろうと様子を見ていたが、日に日に恋やつれしていく娘の姿が。


 仕方がないので、スクラロース家に婚約を打診。


 スクラロース家は、奔放な三男が有力伯爵家の後継ぎになれると、喜んで受諾したのだ。


 フェインの意見は無視した形で、トントン拍子に話が進み、婚姻となったのである。


 貴族にはよくある政略結婚だったが、フェインも妻からの思いは嬉しく、しばらくは穏やかな時間が流れた。


 しかし、ポリフェノール伯爵からの後継教育は厳しく、息抜きのために領地の視察と言って、度々伯爵邸を離れた。


 そのせいで、次第に期待されなくなったのだろう。


 でも、それで良いと思っていた。


 伯爵家の使用人は、執事から下働きまで優秀な人材にあふれていたから、自分が不在でも支障はないだろうと。


 その影で、アマンダが背負った重責にも気づかないまま……。


 フェインの持ち前の物腰と優しい笑顔で、邪険にされることはなかったが、頼られることもないように感じていた。


 妻だけは、いつもフェインを優先したが、邸宅内の居心地の悪さは常にあった。


 優秀な人材の中にいると、自分自身の出来の悪さが拭えないからだ。


 妻は愛らしく、守ってあげたいと思う。

 唯それだけで、恋慕などは感じたことはない。

 娘に対しても可愛いとは思うが、何よりも優先される程の愛情は感じられなかった。



 その最中に出会ったのが、ジンジャーだ。


 暗いダンジョンを、男の冒険者さながらに剣を振るい、魔物を捌いていた。


 張り付いた微笑みや、見え透いたお世辞や嫌みなど無縁の、生き生きとした眩しさ。


 自分の唯一の特技である水魔法で、サポートした際の満面の笑みに心を奪われてしまった。


 ジンジャーはフェインのことを、こんな辺鄙なダンジョンに居るのだから、家を継がない下位貴族だと思っていた。


 気が合い楽しいので、付き合っても問題ないだろうと。


 しばらく付き合った後、フェインから現状の説明を受けたが、その頃には別れられないほど好きになっていた。


 日陰の女でも良いから、ずっと一緒にいたいと初めて思った相手なのだ。


 そんな自分が伯爵邸にいる姿は、誰が想像できただろうか。


「あなたが側にいるだけで、何もいらないわ」

 本心からの言葉だった。


 

 そんな母を横目に、マリアンヌは一瞬冷ややかな表情を浮かべた。


 マリアンヌ:「本当にここに住むのね。お嬢様になるのね。素敵、素敵!」

 そう言うと、無邪気にその場をクルクルと回って見せた。


 フェインもジンジャーも、嬉しそうにその様子を眺めていた。



 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ