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お母様はイケメンで失敗しましたが(笑)、最後に笑うのは誰?  作者: ねこまんまときみどりのことり


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24 勧誘 その2

 ダージリンから罰せられないと言われたステナ達だが、さすがに不安は残った。だが、今さら逃亡することもできず焦りも感じている。


「言い訳するつもりもないんだけど、悪かったと思っているわ。もし私が自分の城をあんなにされたら、キレるもの」


 いろいろと思う所はあるが、気持ちが落ち着いた今、謝罪したい気持ちに偽りはない。


 最初は水蒸気爆発を起こして、あたり一面を吹っ飛ばそうと考えたのは内緒にしておくつもりだ。 

 さらに混乱を誘いそうだから。 

 たぶんアマンダにはばれていそうだが、そこはスルーである。


 大型の馬車に全員が乗り込み、王城に移動する。


「ガタン、ゴトン、ガタン、ゴトン…………」


 うん、ちょっと狭いけど仕方ない。


 ステナ達を分散して乗せられないし、私とリプトンも能力を封じる為に同席が必要だからだ。


 逃亡するとは思わないが、最善策を取るのは必要なことだ。


 皆いろいろな想像をしているようだが、声には出さなかった。




 アマンダは初めて会った時から、ステナ達の能力に注目していた。


(良い魔法(能力)よね。お互い信頼していて、裏切りの心配がないから遺憾無く能力が発揮できてる。良いチームプレーだわ)

 目をキラキラさせ、スカウトに向けて動き出そうとしていた。


 そんなアマンダをリプトンは察している。


(良い人材がいれば、貴族平民関わらず声をかけるから困る。今は成長されたからまだ良いが、7、8歳の幼子の時からこれだから、まったく……)


 暗部当主になった当初から、人材のスカウトは続いている。


 本人曰く、『せっかくの才能を埋もれさせるのはもったいないから』と。 

 それは方便であり、かなりの確率で理不尽から守る意味があった。


 酔うと、『手が届く所に困った人がいれば、1人位助ける人がいても良いじゃない』と。 

 自分がそうだったからと、恥ずかしそうに言っていたこともある。


 7、8歳時当時も、スカウトの声をかけ続けた。

 最初は何を言っているんだと侮られたが、あまりにも真剣に話をする為、最後には受け入れられていた。

 にこりと笑うと花が咲くようだった。

 中には相手にされないこともあったが、それはそれで深追いはしない。

 自分の人生は自分のものだから、こちらが全て正しいとも思わないからだ。



 リプトンは血筋だなと笑って諦めている。

 前伯爵に拾われた身として、なるべく危険に近づけたくない反面、行動は止めないと決めていた。

 その為に努力は惜しまないと。


 もし自分が死んでも、ダージリンをはじめとする優秀な後任も育っている。


 ただ可能なら、お嬢様の宿願を果たしてあげたいが。



 そんな思惑の中、馬車は王城に到着した。



◇◇◇

 門からの道すがらの、左右に腰まである柵が城まで続く。 

 黄・赤・桃色・白の木香薔薇の蔦が、柵に絡まり広がっている。小さな花をたくさんつけており、甘い香りが漂っていた。


「良い香り。色で印象も変わるのね。綺麗だわ」

 コレーが、初めて見る木香薔薇を嬉しそうに見ている。


 本来木香薔薇の開花は春だが、城を飾る花として年中使用される為、城を囲む柵に空調魔法がかけられ1年中咲き乱れているのだ。


 正面階段を10段登り、城の扉をくぐると大広間に続く廊下にでる。


 壁側に白磁の彫刻物と絵画が、所狭しと陳列されている。


 一目見ても名のある作品だと思われた。



 移動途中で、迎えに来た近衛騎士と合流し、王の謁見室へ向かう。


 謁見室の扉前で王へ到着を知らせ、許可を得て入室する。


 テニスコート50個分程の広さのホールと、20段の階段の上に王が鎮座している。


「我が国の太陽よ。アマンダ・ポリフェノール、御用命によりステナ王女と共に参上いたしました。」

 アマンダが階段下まで移動し、王へ挨拶をする。


 ステナ達は騎士に指示された位置で、片膝を着き礼を取る。


「ああ、ご苦労様。席を用意しているから、向こうへ移動しようか」

 そう言って椅子から移動し、階下に降りた。


「隣の部屋におやつを用意したから、皆おいで」

 王は笑顔で、私達を隣の来賓室に誘導した。


 気安い様子に戸惑いを見せたステナ達だが、もしかしたら敢えてそう振る舞ってくれているのかと思うと、無償に胸が熱くなった。


 王族でも、ダイアナ様以外に良い人がいるんだ。


 考えれば当たり前のことなのだが、それ程までに王族への期待が薄かったのである。


 皆で来賓室へ移動すると、山のようにお菓子が置いてある。

ケーキ、スフレ、マカロン、ポテチ、チョコケーキ、プリン……テーブルに所狭しと置かれていた。


 侍女が紅茶を入れ退室すると、王が口を動かした。


「おやつをつまみながら聞いてくれ。まずはステナ王女。貴女はは王になる気はあるのか?」


「「「「えっ!」」」」    


「失礼ですが、私達は城を壊した人間です。何故、慮外なことを言われるのですか?」

 一瞬何を言われているのか、理解が追い付かなかった。

 反射的に言い返してしまう。


 すると、「無理にとは言わないが、ステナ王女が生きていれば第一継承権は君になるので、その確認なんだよ。確かに遺言では僕にということだが、王女が生きていたと発表すれば君が継いだって問題ないんだ。 

 サポートは勿論していくよ。君が考える国にしていくこともできるんだ。やってみる価値はあると思うよ」と、嫌みや嫉妬などない純粋な申し出を受けたステナ。



(私が国を……酒の席で考えたことはあった。でも違うんだよ。何も知ろうとしなかった私では、無理だ…………)


「大変ありがたいことですが。今の私では無理です。確かに考えていたことはありましたが、それは不満をぶつける一方的なものでした。 

 王公貴族がいなくなれば平和になるんじゃないかとか、一般の民衆と同じレベルでしたから。今なら解ります。 

 急激に力を持つ者をなくし国力が低下すれば、暴動や他国からの侵略始め、収集がつかない状態になるのは明らかです。既に見識のある方にお願いしたいと思います」


 ステナは率直に伝えた。

 今回テロ前に調べることで解っただけでも、願望と現実は違うと痛感していたからだ。


「君は考えを示せば良い。私達が手足となり動こう。それでもだめだろうか?」

 王はさらに問うた。


 ステナはすぐに、首を横に振る。

「私に時間を割くより、この国を良くすることに時間を使ってください。私達も出来ることで国に尽力します。それが今回の罪滅ぼしになるならば」


 王は狼狽える。

「罪を問うなんて……兄の悪政を私達は止められなかったんだ。忠告は何度もしたが、強く言うとイノディオン家に暗殺されそうだったから。忠臣の大臣達が何人か殺害されたが、捜査でも証拠もでない。 

 だから大それた事を仕出かさないように、監視くらいしかしなかった……いや、できなかったんだよ、勇気がなくて」


 王は皆の前で体裁を捨て伝えた。

 悔しさが滲む表情で。


 ステナ達のことは、きっかけに過ぎないと言う。



「正攻法でイノディオン家を責めても、証拠は握りつぶされさらに闇に潜っただろう。

 一方的な鎮圧では他の貴族からの反発が強まり、恐怖政権と思われ経済活動の制限がかけられてしまう。

 治世の為に膠着していた。いや、ただ怖かったんだと思う。全ては言い訳だな……」


 だからある意味感謝していると。



 王の偽らない言葉にステナも応える。

「私には腹の探りあいはできません。と言うか嫌」

 舌を出すと、茶目っ気たっぷりに言う。


 固唾を飲んで注目していた周囲から、笑いが漏れた。


「ぷっ、そうですよ。こんなのに任せたら、国民全員脳筋にされる」

 シュパルが楽しげに言う。


 コレーも負けじと、「王女というより、女王ですからね。鞭でお尻を叩いて、悪い子を教育してるし。大人も子供も関係ない女王様。あ、勿論子供には手加減されてますよ。大人は全力ですが!」


 ステナが顔を赤くして、若干震えている。


 それを見て、「何を言ってるんだ。ステナさんの筋肉美が解らないなんて。戦う女性の何が悪いんだ!」とドリップが力説。


 論点がずれてる?

 何だか筋肉の話になってきた。

 なんとなくのカミングアウトは置いといて。


 収拾がつかないので、アマンダが喜々として仕切りだす。

「解りましたわ。皆さんは筋肉の国は望まないので、ステナさんには今までの女王様でいて欲しいと言うことですね」


 リプトンが目を手で覆う。

 悪のりし過ぎです、お嬢様。

 でも口元は笑っている。


 王も口角が上がり、堪えた顔をしている。


「悪かったね、ステナ王女。既に治める国があったのだね。それじゃあ、僕がこちらを治めよう。王同士仲良くしておくれ」

 しれっと言ったよ。

 王弟様は、昔からそういうとこあるよね。

 あ、今は王だった。


 ステナも諦め「そう言うことならば、よろしくお願いします」と頷いた。

 顔は真っ赤だが、長引かせたら負けと流れに乗ったのだ。



 その後細々した話は続くが、お菓子を食べながら穏やかだった。



 今後イノディオン家が手がけていた貿易業の一部を、ドリップの祖父の営むクレッセント商会で取り扱うことになった。


 世界にネットワークがあり、他国との流通も増えるだろう。


 そしてアマンダの仕事にも、協力してもらうことになった。

 目的は人材の協力。

 ステナ達の能力も侮れないが、危険仕事の介入はお互いに望まなかった。

「後でゆっくりと話したいから、邸へご招待します」と、王の前での言及を避ける。


 王も追求しなかった。

 暗部の話は、ポリフェノール家アマンダに一任しているから。


 テロ後の王とステナの顔あわせは、無事終了したのだ。





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