23 勧誘 その1
周囲が落ち着くまで、アマンダ達とステナ一行は、商店街に建つ宝石店の地下部屋で過ごしていた。
監視の目的もある為、全員で生活ができて逃走も困難として選択された場所だ。
リビングが10畳でテーブルの他、大きいソファーベッドが2つ、キッチン・トイレ2つ・浴室・乾燥室、寝室は4部屋。
各寝室二段ベットが2つと、机と椅子が設置されている。
大きい冷蔵庫もあり長期間の滞在も可能だ。
因みにコンロは熱が調節できる魔道具で煙がでず、体にも安心。
換気も風魔法の魔道具でいつもクリーンである。
リアル秘密基地だ。
実際に暗部作戦前、結構な頻度で利用されている。
最初は警戒していた4人だったが、1週間も一緒に過ごすと奇妙な連帯感が芽生えていた。
「今日の朝食は、新鮮なミルクとカリカリベーコンとスクランブルエッグ、焼きたてクロワッサン、コーンスープ、サニーレタスとトマトのサラダ。
おやつに林檎のシフォンケーキです。今回の紅茶はオレンジペコですよ」
リプトンがメニューを読み上げると、部屋の中央にある丸テーブルに全員が集合し、食事が開始される。
コーンスープとサラダは1人分づつ小分けにされているが、他の物は大皿で、好きな分だけお皿に取り分けるスタイルだ。
買い出しから戻ったまま食事を作っていたリプトンは、宝石店のユニフォーム用背広を纏っていた。
色付き眼鏡に茶黒の短髪かつらを着用。
軽い変装ながら印象がガラッと変わる。
「市場で仕入れた新鮮素材で作りましたよ。沢山召し上がってくださいね」
潜伏している閉塞感から、食事に対する期待値は高い。
「「「「「いただきます♪」」」」」
「う~ん、幸せ。今日も玉子がふわふわだわ」
口内にスクランブルエッグを詰め込み、ステナは目を細めて咀嚼する。
「俺クロワッサン好きなんだよ。このバターの香りでもう幸せ。う~味も美味しいです。ありがとうございます」
シュパルも嬉しそうに、暖かな焼きたてパンを頬張っている。
ドリップはここに来る前までは、食事の担当をよく押し付けられていた。
調理していた立場として、短時間でこれほど手の込んだ物を作る手際の良さと、やはり味付けに感動を覚える。
「ドリップさんすごいです。なんでこんなに料理が上手なんですか? これでも僕、2年位料理をしているんですが、こんなにおいしく作れたことないです。コツとかあるんですか?」
生真面目な性格は、ここでも答えを求めてしまっていた。
「コツですか? え~と、まぁ30年位お嬢様方に使えていれば出来るようになりますぞ。ふふっ」
いつも厳めしい顔のリプトンも、ドリップと話すときは自然と笑顔になっている。
親近感を感じているのだろうか?
う~ん、30年。
「ちょっとリプトン、その言い方だと私がすごく年上みたいじゃないの。まだ14歳のピチピチ娘に失礼だわ」
私が怒ると、「ぷっ」とコレーが、口にスープを含み中に笑いのツボに嵌まってしまい、苦しがっている。
ケホケホッとむせながら、「ピチピチって。どこの親父ですか? ふふふっ、くふ~っ」
ここに来てからもずっとクールな彼女が、涙を流しながら声を殺せず笑っている。
それを見て、皆もニヤニヤしだした。
「だってしょうがないでしょ。私の周りは親父しかいないんだもの。私だってむさい親父より、可愛い女の子ときゃっきゃうふふと恋の話でもしたいわよ」
顔を赤くして訴えると、コレーがまた笑う。
「きゃっきゃうふふって。もう殺す気ですか? くっくっふ~。もうだめ~。やめて~」
顔がくしゃくしゃになるまで笑っている。
「もういいよ。やんなっちゃう」
照れ隠ししながら、リプトンが買ってきた新聞を読み始める。
クロワッサン片手に読み進め「ようやく落ち着いたようね」と呟くと、「無事終了しましたな」と言って、リプトンが紅茶を注いでくれる。
王の葬儀が済み、混乱なく王弟に無事政権が渡ったようだ。
新聞が荒れていないことから、このまま落ち着いていくのだろう。
朝食途中でダージリンが訪問し、「お嬢、会いたかったよ~」と抱きついてきた。
開口一番がこれである。
ステナ達は、またニヤニヤだ。
今日はリプトンも言葉遣いを咎めず、皆とニヤニヤしている。
くっそう、何て日なのよ。
そしてダージリンも普通に入ってきてよ、恥ずかしいから。
まあ、無事で良かったよ。
お疲れ様。
本人には言わないけどね。
「え~と、これからのことを相談したいから、一度城に来て欲しいみたいだよ。新しい王様が償いしたいってさ。罪とか問われないから大丈夫だよ。
あ、爆弾で壊れた城の修理も終わったよ~」
「「「「あっ!」」」」
どうやら思い出したようだ。
まあ、大丈夫って言ってたし。行こうかお城。
ようやく笑いは止まったようである。
ちょっと顔色悪くなったかしら?
「王弟、あっ、今は王か。あの方は公平な良い人だから大丈夫だよ」
一応、フォローしておこう。




