19 邂逅 その1
アマンダから今回の首謀者や既に見せた能力、こちらの部屋を中心に迎え撃つ計画を聞かされ、王は驚きを隠せなかった。
「・・・・・我が王女が、テロの首謀者なのは確かか?」
蒼白な顔で呟くように問われる。
アマンダは首肯し、
「こちらに顔を見せ、名乗りもしておりますのでおそらく」
「そうか、生きていたか・・・・・ さぞかし余を恨んでいるだろうな。 あの子にとって、ここは地獄のようだったろう。 最後まで可愛がることも、庇うこともしなかったな」
「あの時の王は、当然のことをなさいました。 御自分をお責めにならないで下さい」 ソフィアは王の肩に手を重ね慰めていた。
過去の情報を掴んでいるアマンダとしては、何を庇い合っているんだ元凶がと思うが、勿論口には出さない。
王より作戦の指揮は、アマンダの部隊に任せると告げる。
「今回のことは王家というより、私の過去の過ちが招いたことだ。 当時私なりに考えての行動だったが、今になってそれがどれだけ残酷なことかがわかった。 養子の件は、ポリフェノール家も巻き込まれただけだろう。 罪は問わないと約束する。 狙いは余への恨みだろうから、最悪私が死んだとしても罰しないと誓う。 だから子供達や妻を守って欲しい。よろしく頼む」
カンファレンスルームに響く声で、宣言したのだ。
ここにいるのは皆王族で、当時のことを知る者も多い。
ほとんどの者が首肯し、同意している。
追い詰められた状態で、王なりに最善策を取った形となる。
う~ん、ほぼ丸投げで渡されたが、こんなものでしょう。
逆に口出しされなくて良かったと考よう。
画してクラプフェン国の命運は、今アマンダの手へ渡ったのだ。
戦力として①隠密部隊(アマンダ以外は黒装束〔忍者のような布の衣装〕で口も覆っている)人数は極秘、②魔法師団(障壁と炎と風が中心)50名、③騎士団(近衛+王宮)国境警備や魔物討伐で出払っている者を除き、2000人で城を囲んでいる。
もともとシュミレーションを、緊急ということでアマンダ達が組んでいた。
王より任命を受けた今、式系統で異論があった者も応じることとなった。
そしてアマンダは告げる。
「城の中でここが一番危険が少ない所なので、何があってもでないように。
不安は強いと思いますが堪えて下さい。
1ヶ所に纏まっていただき、万が一こちらが手薄になった場合、王は障壁を。騎士団長には剣でこちらをお守り下さい」
言い終えてから、魔法で威力の向上した長剣を手渡す。
「私で守りきれるだろうか?」
いつも強気な騎士団長が、いつになく神妙な面持ちで尋ねる。
言っておくが苦情くらいしか接点のない私達。
余程不安なのだろう。
敵軍や魔獣と戦う時は、攻めの戦闘スタイルだ。
守備一辺は気が抜けない。
それでも「潜入し敵地に行けば、私達はいつも命がけです。
余計な味方は期待できない。
できるかできないじゃなくて、やるんだよ!!!
あんたに命預けてる奴は、この部屋だけじゃない。
国だと思って死んでも戦え」
フリュイはビクッとし、一瞬顔が固まり
「そうだよ。 そうだよな、すまないな悪かった」
そう言うと、大声で笑いだした。
アマンダも、一瞬ドキリとするがいつもの淑女の笑みで
「失礼しました。少々言葉が乱れましたわ」と軽く頭を下げた。
思ってもいない癖にと毒づかれるも、余計な力は抜け豪快に笑う騎士団長は迷いない顔で言う。
「あんたも死ぬなよ。 酒の量なら負けないから付き合ってもらうぜ」
張り付けた笑みでなく、素の笑顔で「私だって呑みくらべで、全勝ですわ」
そう告げ背をむけた。
騎士団長はニコッと口元に弧を描き、それを見送った。
「ドゴン バリーンッツ ドシャーン ドゴッ ドガッー」
ホール辺りから爆破音と、人々の絶叫が響く。
戦闘の幕開けだ。