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18 見えない亀裂 その2

 カンファレンスルームに、リプトンが訪室する。


室内を見回すと、王族は全員この場所に集合できたようだ。


そう判断できるのは、王族の顔・名前・爵位・家族構成・領地の状態・明らかになっている賞罰等が知識としてあるからだ。 勿論男爵位までは完璧に覚えている。 ただし準男爵や騎士爵は、その年により増減があり正確でない為、確認が必要だ。


集められた者は何が起こっているか知らされず、不安を強めていた。


王(52歳)、王妃(第1、4王女)

  第一側妃(第2王女)

  第二(第5王女)

  第三(第3王女)

  第四(第6王女)

  第五(第7王女)

  妾と婚外子は、披露宴に参加していない為除外。

第4王弟(39歳)、王弟妃(第1王女、第2王女、第1王子)

ウェインライト公爵家(夫人が王叔母)

マグダリーン公爵家(婿が第2王弟)

マズダー侯爵家(婿が第3王弟)

マッコルム伯爵家(夫人が王伯母)

騎士団長(王妃弟)


今回参加している王族は上記の者で、公爵家・侯爵家・伯爵家は婦人や夫が同行。騎士団長は単独で参加している。



中央のソファーに座るコレットから離れ、アマンダへは扉近くに立つリプトンの方へ向かう。



「お嬢様、ポリプロピレン子爵家ですが、前子爵は家族を大変大事にしており愛妾を持つこと等なかったようです。 結婚後単独で外出することはなく、いつも夫人を伴っていました。 これは代々の執事の証言でも明らかです」


周囲に漏れぬよう互いに口唇を読み、極力小声で調査内容を精査検討していく。


それでは何故子爵は、周囲に聞こえるように義母へ報告したのだろう?


養子自体は特段珍しいことではない。


だが、大きめの声で前子爵の名誉を汚すように、庶子(弟)の子を引き取った等と。



何が目的なのだろう。 

勝手に戸籍の虚偽を語ったのがポリフェノール家の後妻の父で、なおかつテロ首謀者を城内に引き入れた可能性があるのは大問題だ。 


だがそれ以上に、わざわざダージリンの前に姿を表し、魔法能力の1つを見せた。 そしてダージリンへ弟君と言い「ステナ」という自分の名前を告げて去った。 


挑発?

誰に?

敢えて知らせたのだろうか?



弟、金目、魔法・・・・・


金目(ゴールデンアイ)は魔力の結晶と言われている。


覚醒すると、強力な創作魔法を産み出すという。


言われていると言っても、(金目の秘密を)知るものは王室の中でも極僅かだ。


王公貴族の顔を間近で直視できる者も限られてはいるが、公に認知されると王位継承にも影響を及ぼしかねない。 


その能力が高ければ高いほど、魔法で戦を征した初代王に重ねられるからだ。


その為、一般的に黄眼と金目は同一視されており、特段珍しい色とされていない。




 最後に顕現したのは22年前、失踪したとも亡くなったとも言われている第一王女ステナ様。(※ステナは死亡扱いされ、ソフィアの第2王女が第1王女として繰り上がっている)


ダージリンに弟と言ったことから、こちらのことも調査済みなのだろう。


ただ、ダージリンの特殊能力については漏れていないはずだ。


覚醒したのが3年前で、すでにこちらで生活を始めていたのだから。


もし知られていれば、ポリフェノール邸にスパイがいると見て間違いない。





 もしこのまま何か起きれば、ステナ様を養子としここに潜入させたポリプロピレン子爵と、縁戚となるポリフェノール伯爵家も無傷ではいられないだろう。


普通に考えればだ。


但し暗部(隠密部隊)を率いるアマンダには適応されない。


それは暗部当主になる際に、王家と自らの血で書かれた魔法誓約書を交わしているからである。


考えてみてもそうだろう。


仕事の裁量はある程度任されているが、受け継がれている業務内容を見れば、とっくに独立する力を持つ伯爵家だ。


何故王家に逆らわないかと言えば、血の誓約のせいである。


この誓約は、初代王の能力『強洗脳』からきている。


意思や思考は奪われないが、王家に反旗を翻したり危害を加えられぬようコントロールされた状態なのだ。




 だからアマンダのみは絶対に処罰されない。


ある意味、国を動かしている彼女を害すことはできないのだ。


それはアマンダも同じで、王家に背くことはできないし任務中に死亡しても事故死扱いされるだけであり、表だって王家は助けない。


 死亡はまた新たに、ポリフェノール家から当主を選ぶだけなのだ。

ただ問題は、アマンダはまだ成人しておらず勿論子供もいない。

血の繋がる兄弟姉妹もいない。

父に暗部当主は(知識・戦闘力的にも)無理であり、そもそも暗部の存在を知らない。 

最近まで庶民のように生活していた、義母や義妹も論外であろう。


 そのような理由から、今は王家からの危害は考えられなかった。



 誓約は王家の存続である為、王家が存続できなくなれば強洗脳は解けることになる。


今までアマンダが模索した、強洗脳を解く方法も実践できる目処がつき始めていたが、王家が断絶してしまえば解けてしまうかもしれない。


 ふふっと一瞬声を漏らすが、首を振り思いなおす。

コレットは可愛いから守ってあげるわと。


 分析した情報をリプトンが暗部に伝えに行き、シュミレーションのちここでの配置を決める。


カンファレンスルームで起こるであろう攻撃に、向かい合うために。


特殊能力のある暗部の隠密と魔法師団でカンファレンスルーム周辺の警備。 カンファレンスルーム内は、アマンダ・リプトン・ダージリンが。 披露宴に来ている人達や全体警備を騎士団に。


 どれだけの情報が漏れているか不明である為、室内の守りを私達3人にしたが、それが良いか悪いか判断はつかない。


いつも通りの直感頼みだ。


「お嬢の勘は特別だから、自信持ちなって」と無邪気に笑うダージリンと首肯するリプトン。


こうしていつも、仕事が開始となるのだ。

   



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