11 歩み寄る影 その3
現在アマンダ・リプトン・ダージリンは王の執務室にいる。
王の背部には騎士団長と魔法師団長が控えており、王の側には宰相がいて議事録をとっている。
騎士団長は32歳182cmの筋肉質で、紺の騎士服をしっかり着込んでいる。 金髪灰色の瞳で彫りの深い顔立ち。 威厳のある態度でこちらを見ている。
魔法師団長は線が細く黒の長ローブを羽織ると、さらに長い印象を受ける。 銀縁眼鏡使用中。 赤い瞳に青い髪。 猫目のようにややつり目も童顔で愛らしく見える。 28歳168cmで騎士団長の隣にいると弱々しく見えるが、雷魔法の使い手であり一撃で敵を死滅させられる。
宰相は茶髪黒目でブラウンのスーツを着用。 気苦労が多いのか目の下のくまがひどい。 中肉中背の175cm、34歳だがもっと年嵩に見えてしまう。 ややたれ目で優しげな雰囲気がある。
王と宰相は執務机に、アマンダ達は来客用のソファに座り調査報告を行う。
噴水で回収した爆弾50個を調べた結果、その全てに信管がつけられていた。
まとめられた状態の爆弾ならば、誘爆するため上部数個の取り付けだけで充分なはずだ。
そして遠隔操作が目的なら、電気式の起爆装置が普通であるがここで使われているのは導火線式の雷菅である。
その場で引火したり火や爆発物を投げ入れるとしても、この爆弾の火薬量ならば1km四方まで巻き込むので逃げ場もないだろう。
「この結果から、犯人はこの爆弾を起動させるつもりがなかったと推測されます」アマンダが伝えると、
王よりどういうことなのかと問われる。
「そうですね。 脅しかフェイクで油断を誘う。 またはその両方かもしれません。 あの爆弾を作る為の資金力もあり、1つ1つのクオリティの高さから慎重さが感じられます。 作成面でも癖がなく、今までに逮捕歴のあるものではありませんでした。 搬入経路にも悪意の強く残存している所はなく、脅して入った様子はありまでん。 協力者か気づかれずに入れる何らかの魔法を有していると考えます」
「うむ、この短時間でよくぞここまで。 して潜伏先はどうだ」
国が貴族や商人に対して爆弾製造を許可しているのが65件、その内王城に往復1,2日で移動可能なのが20件、納期が守られていないまた廃業しているのが2件。 その2件の工場は機材は買い叩かれて何もなく埃をかぶっており、利用された痕跡はないと。
「範囲を絞った中には、表面上潜伏先の該当はありませんでした。 工場でなくとも、広範囲の空間と材料があれば作成は可能ですので、現状これ以上は探査不可能です」
「そうか。 外部に人を割くより、警備に力を注ぐ方が良さそうだな。」
続いて少し躊躇してアマンダが尋ねる。
「気配の遮断や隠蔽魔法の使い手はご存じないですか?」
王は俯いて、把握できていないと言う。
本来なら王族の血が流れる者あらば把握し保護する所だが、前王と現王は性にだらしなかった為、貴族以下の保護はまったくなされていなかった。
身分に関わらず、王族の血に魔力を宿すことは国民でも知るところであるのに。
アマンダ達も、王家で把握できていないであろうことは予測していたが、やはりかと力を落とす。
前王からの血脈は子・孫・ひ孫と拡がり、もはや王族よりも数では平民の方が魔法使いが多いことになる概算だ。
プラスで現王も、若気の至りがひどすぎた。
当日までの警備体制を、騎士団・魔法師団・暗部で練り直す必要がある。
どこの団も自分の団が一番強いと自負しているで、揉めないでくれれば良いが。
この時、ここにいる全員がいつもの敵とは違い、予測できない不気味さを感じていた。