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10 歩み寄る影 その2

 王城を背に向け右側へ10分ほど移動すると、周囲を白薔薇に囲まれたガゼボ(西洋風のあずまや)にでる。 


勿論薔薇以外にも、庭師により管理された季節の花々が咲き乱れている。


その横には初代王像が中央に鎮座した大きな噴水があり、涼しげな水音を立てていた。


ここは門から少し離れているので、休憩するのにはもってこいの場所なのだ。  


 ガゼボの奥には小さな森がある。


森林浴ができる程度の規模で、人一人が通れる位の道幅だが歩きやすいように整備されている。


見通しも良く霧以外ならば、奥まで人影がわかる程度に間引かれた木々。


定期的に巡回もされており、今まで不審者・物等の有無に対しても警備の不備は見つからなかった。





アマンダ:「今の所、コレット周辺の人物に不穏さは見られない。 となれば直接的な爆弾設置が予測されるわね」


 伯爵家の暗部により、乳母リサ、従姉妹タイミー、女騎士レイチェル、乳母補佐イライザの身辺調査は完了していた。


4人共に怪しい人物との接触はなく、金銭問題なし、バイオレットへの怨恨もなし。 

嫁ぎ先の縁故関係も正妃ソフィアとは直接の関係は見えなかった。 

但し不穏な動きがあっても察知できるように、1名以上の密偵は継続して各家に潜伏中である。


 アマンダは城内を見回った後、庭園・森の中と散策し悪意の感情が強い箇所を3つに(しぼ)った。

1つ目は、正妃・側妃の部屋周辺。

2つ目は、牢屋の周辺。

3つ目は、公園周辺。


1は関係性の良くない正妃と側妃ならば、常に牽制するのは仕方がないだろう。

2も言わずもがな恐怖・悪意は混在するだろう。

3は常に人が在中していないのに濃い悪意が感じられた。


 アマンダの魔法は2つ。 1つは悪意・憎しみ・妬み・裏切りなど、負の感情の強さを感じられること。2つ目は代々伯爵家当主に受け継がれる能力だが、今は使用する機会はなさそうだ。


 そもそも魔法の発動条件は、幼少期の強い体験だと言われている。 ドリップ・コレーは死の回避の為だが、ステナは平民の母の装飾品が乏しいことで、自分が何かプレゼントしたいという思い、シュパルは強い憎しみ、アマンダの発動もそうだ。


 父が伯爵教育を半ば放棄していた為、暗部を継ぐことになる頃の発動だ。 本来なら父の代わりは母となるのだが、精神的に不安定な母への負担を減らすことを目的とし、前伯爵逝去の6歳時に就任した。


 リプトン・ダージリンらの補佐があれど、いくら優秀とはいえ6歳で他者の思惑を汲み取るのは無理があった。  情報としての分析は皆と読み解くとしても、他貴族との調整・暗部の者達への指揮等、反発も裏切りも両手で足りない程だった。  


中にはポリフェノール家の仕事を奪い、その地位に成り代わりたい者は今が好機と攻撃を繰り返してくる。  


この頃は暗部当主を見定められている所であり、条件次第では見捨てられる可能性もあったのだ。  しかしそれは無理もないこと。  一度忠誠を誓えば自分の命を懸けることになるのだから。  


就寝中・移動中・食事中(は主に毒殺)と常に気を抜けない日々は続き、リプトン・ダージリンの隙をつき何度か殺されそうな瞬間が続いた(いかに最強の2人でも、24時間の完璧な守備は無理だった)。


 そんな中、アマンダの魔法・悪意関知が発動した。  能力で感情の読み取りが可能となり、敵味方の振り分けができるようになった。  疑わしいものには近寄らず、信頼できる貴族で結束することで、暗部への指揮も的確となり反発は減っていった。


 そして就任から1年後、7歳4ヶ月に入った頃に暗部全員がアマンダに忠誠を誓ったのだ。  魔法が発動していなければ、かなりの高確率で死亡しただろう。 


 前伯爵は、いろんな人種・職種・部署への根回しや、危機回避能力(人たらし含む)はフェインの適性だと思い結婚に繋げたのだが(母の希望だけを聞き入れただけではないようだ)、アマンダが全てを従えた今、現伯爵は必要なくなった。  


むしろ邪魔かもしれない。  

実務を継がず、母をないがしろにするなら・・・・・


 あらゆることを疑いながら接する癖がついた。

 あれから毒摂取を少量づつより開始し、料理皿1枚位ならばなんの症状もでなくなった。 それこそ熱や吐き気、震えを乗り越えられたのだ。


 父の暗殺は生死のメリットを天秤にかけ、まだ生よりだった為に生かしただけだ。  母がいなければとっくに殺しただろう。



 14歳になった現在、不動の当主となった。 もはや父の存在等どうでもよかった。



 公園周辺を重点的に探索。 噴水内に爆弾が沈んでいる可能性が強まり、潜水調査しプラスチック爆弾が50個が撤去された。


 爆弾の製作場所(作業と保存は、個数が多いため広い場所が必要)、火薬類の材料確保(多量に材料を仕入れられるルートと資金)、組み立て手順(個人で特徴があり犯罪歴がある可能性を探れることがある)、ここまでの潜入ルートなどの調査に、残り4日では困難だと思われた。


 「全てでなくてもできる限り調べて」と潜んでいるであろうリプトンへ指示を出す。


点と点を繋ぎながら予測を立てることはできる。 むしろ手がかりが何もないよりは、100倍マシなのだ。


 私は爆弾からの思念を追おう。  目的さえわかれば対策が立てやすいんだけど・・・・・


泣き言は決して言わず、前進していくアマンダだった。




 




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