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ゲームプランナー転生 異世界最強の魔道士は企画職  作者: 自転車和尚
第三章 大荒野編

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91 執行者(エクスキューショナー)との戦い

「それで? 貴様は何をしようと言うのだ」


 ファビオラが道征く者(ロードランナー)へ尋ねる。現時点ではファビオラの一存で執行者(エクスキューショナー)が起動できてしまう状況のため、俺たちは動けない。と言うより道征く者(ロードランナー)の目的がわからない以上、下手をするとファビオラの味方としてこの混沌の戦士(ケイオスウォリアー)と戦う、と言う選択肢さえ出てきてしまうのだ。迂闊に動けない。


「不完全なる調和」

 道征く者(ロードランナー)はゆっくりと手を伸ばし……その不気味な手には複数の指輪が嵌められており、その全てが不思議な魔法の力を宿しているであろう、妖しい輝きを放っている。

「正直これ以上、帝国に玩具(おもちゃ)を与えるのは些か不公平でな……。できるだけ長く、激しく、そして終わりなき混乱と破壊を、この世界にもたらすにはその玩具(おもちゃ)は大きすぎる」

「はっ! 何かと思えば……混沌(ケイオス)の使徒が調和だと?」

 ファビオラが道征く者(ロードランナー)の言葉を聞いて笑い出す。しかし……俺も不思議だ。混沌の戦士(ケイオスウォリアー)は完全なる破壊の使徒ではないのか? と言う根本的な疑問が今のところ彼の言葉から感じ取れる。俺たち『夢見る竜(ドリームドラゴン)』のメンバーも武器は抜いているもののどちらを敵として戦えばいいのか、完全に迷っている。


「聞く耳は持たんか、愚かな。知識の神の信徒が聞いて呆れる……」

 一瞬のゆらめきと共に道征く者(ロードランナー)の姿がかき消える。驚いた俺たちが呆気に取られたその瞬間、悲鳴が聞こえた。

「では、貴様に大好きな玩具(おもちゃ)をくれてやろう、喜ぶがいい」

 悲鳴はファビオラのものだった。道征く者(ロードランナー)がいつの間にかファビオラを羽交い締めにしており、ゆっくりと執行者(エクスキューショナー)の上部へと浮かび上がりながら移動する。

「や、やめ……」


 道征く者(ロードランナー)の手が光り輝く、それに呼応して執行者(エクスキューショナー)全体も鼓動を打つかのように鳴動する。ファビオラのローブを引き裂いた道征く者(ロードランナー)が背中越しに、手刀を突き入れ、ファビオラを貫いた。

「グハァアッ……」

 口から、胸から血を流しながらファビオラが悶え苦しむ……。呆気に取られて俺たちは傍観するだけしかできなかった。

「血の契約だ、執行者(エクスキューショナー)とお前のな」

 滴る血が執行者(エクスキューショナー)へと振りかけられる。その血を浴びた処刑人(エクスキューショナー)が大きく、のたうつように振動する。

「では使徒よ、その力を見せてみよ」

 道征く者(ロードランナー)が俺にお辞儀をすると……再び闇に溶け込むように消えていく。


 それと同時に遺跡全体が大きく震えるように振動する。各部が崩れ始めているのがわかる。

「ここはまずい、逃げるぞ!」

 ロランの一言で俺たちは慌てて出口に向かって走り始める。執行者(エクスキューショナー)の状態は確認できないが、最悪地上に出てから戦うことになるのか……。そこで俺はある重要なことに気がついて走りながら叫んだ。

「め、面倒ごと全部俺たちに押し付けて逃げたんじゃないか? あの混沌の戦士(ケイオスウォリアー)!」




 地上になんとか脱出すると、遺跡が大きく崩落していくところだった。

「崩れていく……」

 アイヴィーが呆然とした様子で遺跡を見つめている。遺跡は所々崩落と爆発を繰り返しているのだ。爆発するようなものなんかなかった気もするが、とにかく今現在目の前では崩壊が進んでいる……。

「俺たちが未探索の場所に何かあったのかもしれないな……」

 その時、大きな咆哮があたりを包んだ。甲高い、そして物悲しい叫びのような。遺跡の崩落が止まり、一瞬の静寂があたりを包む。


「まだ終わってないようですぞ」

 ロスティラフが複合弓(コンポジットボウ)を構え、油断なく遺跡を見ている。その時、遺跡が大きく爆発し、中から轟音と共に巨大な影が姿を表した。馬鹿でかいエイのようなシルエット……執行者(エクスキューショナー)だ。

 甲高い咆哮を上げながら、宙を舞い外界へと躍り出たその姿は、石像として安置されていた時と違い、生き物のような……そして艶やかな光沢を帯びた皮膚を持っていた。皮膚には紫電のような、不思議な魔力が脈動するように走っている。そして……執行者(エクスキューショナー)の頭部には一体化したファビオラ……すでに自我も無く目と胸から血を流した彼女が見える。

 執行者(エクスキューショナー)は俺たちを見つけると、ゆっくりと目の前へと舞い降り……再び甲高い咆哮をあげた。

「これは……倒さなければいけないわよね?」

 アイヴィーが刺突剣(レイピア)を構える。ロラン、アドリア、ロスティラフも同じく武器を構える。そうだな……ここで倒しておかないと……。再び咆哮をあげた執行者(エクスキューショナー)が襲いかかってきた。


 執行者(エクスキューショナー)が甲高い咆哮をあげると、複数の雷撃の槍ライトニングジャベリンが空中に出現する。この魔法は魔力で、雷の槍を作り出して相手を攻撃する炎の槍(ファイアランス)とは別属性の魔法だ。魔力の大きさから考えて、一発一発がかなりの威力を持っているに違いない。咄嗟にアドリアが魔法の障壁(プロテクション)を展開して俺たちを防御する。

堕落の落胤(バスタード)よりも厄介ですね……っ!」


 雷撃の槍ライトニングジャベリンが次々と発射されるが、魔法の障壁(プロテクション)を貫通できない。アドリアの魔力は三年前よりも高く、この程度の攻撃であればそう簡単に崩されることはない。

「炎の王……火炎魔人(イフリート)よ、異界よりその力を欲する我の前に、力を顕現せしめよ。<<火炎の嵐(ファイアストーム)>>」

 俺の火炎の嵐(ファイアストーム)執行者(エクスキューショナー)を包む……が、火炎の奥で紫電が走ると、火炎の嵐(ファイアストーム)の威力がかき消されていく。まるで魔法を無効化しているような……。

「嘘だろ……ってあぶねえ!」

 呆然とする俺に向かって執行者(エクスキューショナー)が襲いかかる。巨大なヒレを使って薙ぎ払うような攻撃だ。大振りの攻撃だが、重い一撃はギリギリで後退した俺ではなく、地面を軽く抉り轟音を上げて粉塵が舞う。


 まるで空中を泳ぐように大きく宙を旋回し、再び対峙する執行者(エクスキューショナー)。再び甲高い咆哮をあげて俺たちを威嚇する。体の下にある大きな口が開き、そこから複数の人間サイズのエイに似た魔物が射出される。その小型エイがロランとアイヴィーに向かって躍りかかる。

「うぉ……なんだこいつら……」

「くっ……」

 ロランが大盾(タワーシールド)を使って小型エイの攻撃を受け止め、(スピア)を突いて攻撃する。アイヴィーも攻撃を避けつつ、刺突剣(レイピア)を振るい、小型エイと接近戦を演じる。小型エイは素早く空中を舞いながら、2人の戦士と戦っている。いわゆる空母と艦載機……かな、これは。複数人数との戦いも含めて、この怪物は対応できるようになっているのか……。


 執行者(エクスキューショナー)に向けてロスティラフの複合弓(コンポジットボウ)から矢が放たれるが……矢は表面に走る紫電に阻まれて命中する前に消滅していく。

「ロスティラフ本体よりも小さいのを、アイヴィー達の援護を頼む!」

 俺の言葉にロスティラフが頷き、小剣(ショートソード)というにはあまりに大きいその剣を抜き放って、ロランたちの援護へと走る。

「アドリア、俺たちで本体をどうにかするぞ」

 アドリアが頷き……俺達は執行者(エクスキューショナー)へと対峙した。


 執行者(エクスキューショナー)は再び甲高い咆哮を上げた。

_(:3 」∠)_  やったボスキャラだ!


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