78 冒険者と単眼巨人(サイクロプス)
数人の男女が一つの巨大な影と戦っている。
巨大な影は、身長が一〇メートル近い巨大な外見をしており、手には大きな木片……この形状だともはや棍棒としか言いようがないが、巨大な武器を持っている。
さらに特徴的なのはその顔だ。頭には頭髪のようなものはなく、つるりとした頭部をしている……先端には大きな角のようなものが生えており、異様なことに顔には巨人の顔には目がひとつしかない。そして口は大きく、牙のようなものが生えている。
『単眼巨人』
巨大な影は大陸でもそれほど生息数の多くない巨人族だった。単眼巨人は大きな咆哮を上げながら、棍棒を横なぎに払う。しかし重武装の男性が構える大盾がその棍棒を受け止め、大きな衝突音を立てる。
「はっ! この程度か単眼巨人!」
男性は片手に持っている槍を突き出し、単眼巨人の足に命中させる。苦悶の声をあげて、武器を持っていない片手を振り払い、重武装の男性を後退させる。
そこへ一本の矢が単眼巨人の肩口へと突き刺さり、再び悲鳴をあげて単眼巨人が踏鞴を踏む。
複合弓を構えた竜人族が、牙の生えた口元を歪めて笑う。裸同然の上半身には複雑な刺青が刻まれており、腰には何かの骨を削って作られた、複雑な形状をした小剣を下げている。長い尻尾の先端には青色のリボンが付けられているのが印象的だ。
「油断大敵、一人で我々と戦おうなど……」
「お先ぃ!」
その横を駆け抜け、軽装の女性剣士が駆け出す。金色の髪を靡かせ、赤い眼を輝かせる女性は、貴族然とした美しく整った顔をしており、口元に薄く笑みが浮かんでいる。体型は大人の女性らしく、大きな胸と締まった腰、膝上にカットされたスカートとブーツの間に白い健康的な太ももが見えている。
彼女は革鎧を胸と肩、小手、脛など部分ごとに分けて身につけており、稼働部分を大きくとった機動性重視のスタイルであることがわかる。
そして手には銀色の……魔法の武器であろう刺突剣が握られ、走りながら顔の前に軽く立てると、単眼巨人に飛びかかった。
「危険ですってば!」
女性剣士に声を掛け、ローブ姿の女性が魔法を唱え始める。女性剣士の体に淡い光が灯り、ぼんやりと光る……防御系の魔法だろうか。
女性は少し尖った耳と藍色の髪が特徴的な、半森人族の少女だった。見た目は一五〜一六歳の少女だが、理知的な光が瞳に宿っている。手には連接棍を持っているが、前に出ることはしていない。
「ありがと!」
金髪の女性剣士は単眼巨人の攻撃を舞うようにステップで躱していくと、棍棒を持つ手に刺突剣を突き立てる。細身の剣だが、まるでバターに突き刺さるかのように滑らかに刺突剣が突き立てられ、痛みにあえぐ単眼巨人は棍棒を落として、手を押さえる。
最も簡単に刺突剣を引き抜き、女性剣士は大きくステップしてその場を離れる。
そこへ魔法の詠唱が始まる。
「炎の王……火炎魔人よ、異界よりその力を欲する我の前に、力を顕現せしめよ。<<火炎の嵐>>!!」
単眼巨人の足元から炎の渦が巻き起こる。炎の勢いは凄まじく、悶え苦しむ巨人をあっという間に包んでまるで炎の竜巻か如く荒れ狂う。
この火炎の嵐は高レベルの攻撃魔法だ。異界より炎を召喚して、敵を包み込む。有効半径も広く、複数の敵を巻き込むこともできる……。
魔法を放ったローブの魔法使いは、杖……というにはあまりにごつい、持ち手から下が直剣のような刃が付いている所謂剣杖を手に、ニヤリと笑う。腰には小剣を下げておりローブは緑色……その端から見える手には金属製の小手、足も脛当てが付けられており、普通の魔道士には見えない。
「いやいや、やっと炎の精霊たちもいうことを聞いてくれるようになったなあ」
「使えるまで、結構かかってましたよね〜」
半森人族の少女がローブの魔道士に笑いかける。魔導士が苦笑いを返す。
単眼巨人の断末魔の悲鳴を背に、この男女五人の集団は再び近くへと固まる。
「立ち上がってくると思うか?」
「どうだろうな……」
ローブの魔道士と大盾の戦士が会話を交わす。その前で炎の勢いに耐えきれなかったのか、単眼巨人の体が朽ち果て、地面へと轟音をたてて倒れ伏す。
ようやく全員が息を大きく吐き、安心したようにお互いの状況を確認する。全員怪我もなく無事だった。
「さ、戦利品を獲得して街へと戻りましょう!」
半森人族の少女が冒険者達に声を掛けると、全員が笑顔で頷く。
冒険者が集う冒険者組合に併設された酒場へ五人の冒険者風の一団が帰還する。
「あれが『夢見る竜』か……」
酒を飲んでいた初老の冒険者がぽつりと呟く。周りから見てもこのパーティは不思議な構成だった。
戦士の一人は大盾と槍を所持し、少し特徴的な……ここから東へと向かった場所にて、拠点を構える高名な傭兵団で使用されている金属製のヘルメットをかぶっており、美しく磨かれた鎖帷子を中心に、胸には金属製の胸当てを、四肢には金属製の小手や脛当てをつけている。
それと対照的に金髪をツインテールにした剣士の女性は革鎧を部分ごとに分けて装着しており、兜は付けていない。腰には美しく装飾された刺突剣を下げている。そして何よりも肖像画などでも登場していそうなくらいの美しい顔と、ルビーのような赤い眼が特徴的だ。さらに酒場にいる冒険者たちの視線は、その女性のアーマーの下でもわかるくらい豊満な胸と、短めのスカートから覗く白い太ももに注がれている。
そしてその後ろには上半身には鎧をつけていない竜人族が続く。上半身に複雑な刺青を入れており、腰に申し訳程度に革鎧の腰当てをつけている。さらに小剣と背中には骨と木を組み合わせて、人間では扱えないだろうくらい太い握りの複合弓を背負っている。
長い尻尾の先には青色のリボンが付けられ、少し印象を柔らかく見せているかもしれない。
その横には半森人族の少女が続く。幼い少女のようだが、半森人族の年齢は見た目とリンクしない。腰に連接棍が下げられているが全体的に軽装で、白いローブを身に纏っている。
明るく竜人族に話しかけ、竜人族は無表情で少女に返事を返している。
最後に、一人の魔道士風の男が続く。杖……というにはあまりにごつい、持ち手から下が直剣のような刃が付いている所謂剣杖を手にもち、腰には小剣を下げている。彼のローブは緑色を基調とした使い古されたものだ……ローブの端から見える手には金属製の小手、足も脛当てが付けられており、戦闘を重視した装備なのだろう。手には……大きな袋を持っているが、その隙間から大きな角がのぞいている。
このパーティ『夢見る竜』は現在大荒野の都市国家、冒険者の街『デルファイ』の冒険者組合で最も依頼達成率の高い冒険者パーティだ。受付にドカッと袋を置くと、受付嬢が慌てて中身を確認していく……単眼巨人の角……周りの冒険者達は驚く、単眼巨人を倒せる力量があるのか……。
換金や報告を終えると『夢見る竜』の一行は酒場の端にある小さなテーブルへと座って、料理や酒を用意し始めた。
_(:3 」∠)_ 3章開始です! これからもよろしくお願いします!
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