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36 プランナー・イン・ザ・ダンジョンズ04

「さあ、アイヴィー。僕にその魔導石を渡してくれたまえ」


 現在、想定される最悪のケースが発生している。

 目の前にいるのは帝国貴族ロレンツォ様と愉快な仲間たち。魔導石を入手した翌日、帝国貴族チームと鉢合わせした俺たちは、今そんな状況に置かれている。


「何を申すか、この魔導石は我々が苦労して入手したもの、渡すわけにはいかぬ」

 わー、トニーさん主人公みたいだね。肝心のアイヴィーは困惑の表情を浮かべて戸惑っている。

「こ……これは私が友達と一緒に……」

「帝国貴族であろう?アイヴィー、僕は婚約者……お前の忠誠を信じているぞ」

 貴族らしい尊大さでロレンツォが命令する。その言葉にアイヴィーが戸惑いを見せる。

 心にもないことを言いやがって、とは思うが貴族として刷り込まれた教育はその言葉を否定することは難しいだろう。

 ロレンツォがアイヴィーに笑いかける。こいつ本当に貴族様なんだろうか?

 アイヴィーはロレンツォの言葉に戸惑って、俺達とロレンツォの方を何度も見返す。


「アイヴィー! なぜ婚約者……主人である僕のいうことが聞けないのだ!」

 イライラしたのかロレンツォが怒鳴りつける。ビクッとアイヴィーが肩を震わせる。取り巻きどもはニヤニヤと笑みを浮かべて待っている。

 これではアイヴィーは自分の意思で何もできないじゃないか……。ロレンツォの我儘をそのまま通して、果たしてそれが彼女の幸せになるのか?と思った時に流石に我慢できなくなった。

「あんた婚約者を物か何かと勘違いしてないか?」


「帝国貴族である僕はアイヴィーの婚約者としての権利がある、これは法である」

 ロレンツォが自信満々に答える、ああ、だめだこいつクソ野郎だ。こんな奴のためにアイヴィーが犠牲になることはない。


「ク…クリフ……」

 アイヴィーが俺の腕を掴んで制止をする。アイヴィーの眼には大粒の涙が浮かび、対抗してはいけないと何度も首を横に振っていて……困惑と恐怖がその眼に浮かんでいる。

 違う……彼女はこんな目をしない。俺の知っているアイヴィーはちょっと気が強くて、勝ち気で笑顔が可愛い女の子だ。


 こんな可愛い子を泣かせる奴ぁ許せねえ。


 俺はアイヴィーに向きなおり、両手を握ってじっと目を見る。

「大丈夫……俺を信じてくれ、アイヴィー」

 アイヴィーが驚いたように目を見開く。


「クリフさん、貴族に喧嘩を売るのは良くないです。いくら聖王国内とはいえ帝国貴族と事を構える状況を作るのは……」

 流石にアドリアが見ていられない、と制止に入る。

「違う、これは俺に売られた喧嘩だ。アイヴィーも貴族も関係ない」

 覚悟を決めてロレンツォに向き直って宣言する。


「魔導石が欲しければ一騎打ちで俺を倒して奪い取るんだな!」

 今度は俺から指をさして宣言する。その姿を見たロレンツォは一瞬フリーズしたようだが、次にプルプルと震え始めた。

「ド庶民が帝国侯爵の子息である僕に一騎討ちだと? 笑わせるな!」

 お、ブチ切れた。

「よかろう、僕がお前を消し炭にしてやる。手出し無用である」

 取り巻きが頭を下げて後ろへと下がる。

「みんな、危ないから下がってくれ」

 アイヴィーが何かいいたげに手を伸ばすが、アドリアとトニーがアイヴィーを止める。

 とはいえ周りを巻き込むような魔法はこんな場所じゃぶっ放せないだろうから、単体攻撃系の魔法を中心にしてくるだろう。




 ロレンツォと俺が相対する。

 ちなみに俺は冒険者生活のなかで何度か魔道士と戦ったことがある。

 この世界の魔道士同士の対決はシンプルなケースが多い。魔力の強い側が圧倒的な破壊力の魔法攻撃でカタをつけるケースが大半だ。あとは行動不能系の魔法をぶち込んで終わり、というのもある。

 大体の魔道士は前者のパターンを好む……楽だし反撃も受けにくい、何より力の誇示という点では前者の方が効果的に見えるからだ。


 おそらくロレンツォは前者を選択するだろうが、貴族は後者を選ばない。力の誇示が目的だから。

 ただ、もう少し選択肢を狭めておいた方がいい、冷静さを失わせて後者の選択肢を考えさせない。

「いいかド庶民、僕はお前を殺しても問題にならない。それは僕が栄光ある帝国貴族であるからだ。もし降参するというのであれば今なら許してやろう」

 相変わらず尊大な物言いだ。でもこれで誘導はできそうだ。

「お前……俺に勝てると思ってるの?たかだか親の七光りの分際で」


「な、なんだと! 貴様!帝国を馬鹿にするのか!」

 ロレンツォが顔を真っ赤にして怒り出す。よしよしこれで行動不能系の選択肢はないだろう。

「帝国の栄光に泥を塗る愚か者が! この僕ロレンツォ・カンピオーニが愚か者を抹殺してやる!」

 ロレンツォが腕を上段に構え、魔力を練り始める。詠唱と共に、光り輝く槍がロレンツォの手のひらの上に出現する。思ったよりも魔力の集中が高い、実力は結構ある方だな。


戰乙女の槍(ヴァルキリースピア)、ね……」

 この魔法は神界にいる戰乙女(ヴァルキリー)が使用する槍のイメージを召喚して攻撃する魔法で、結構ハイレベルの魔法だ。貫通力も高く、何よりも発射されてからの飛翔速度が圧倒的に速い。

 ……スピアって名前なのに飛んでくるのはちょっと狡いなと学んだ時に思った。

「フハハ!この僕の最強の攻撃魔法、戰乙女の槍(ヴァルキリースピア)で消し炭にしてやる!」


「守りの盾よ、我が前に具現化し身を守れ! <<魔法の盾(マジックシールド)>>」

 魔法の盾(マジックシールド)を最小の形で絞って展開する。昔は一〇〇パーセントの力でしか展開ができなかったが、訓練した結果こうやって範囲や、出力を絞ることもできるようになった。


 出力を絞るイメージは前世の仕様書の数式イメージをベースに考案したものだ。

 正確にはパーセンテージにはできなかったので、大体このくらい、とかそういうアバウトなノリだったが、何度も実験するうちに成功した。


「なんだ庶民はそんなチンケな魔法しか使えないのか」

「あいつ、そんな初歩魔法で……馬鹿じゃないのか」

 離れている取り巻きも笑っているのが聞こえる、丸聞こえだ。少しは隠せよ。

「まあいい、貴様が消し炭になった後でアイヴィーから魔導石を奪えばいい」

 ロレンツォが小馬鹿にしたような笑顔で俺を見る。


「庶民が! 死ね! <<戰乙女の槍(ヴァルキリースピア)>>!」

 高速で飛翔する魔法の槍が俺に向かって飛んでくる。その直線的な軌道を見つつ、最小の形で展開した魔法の盾(マジックシールド)の角度を調整していく。

「クリフ! いやぁ!」

 アイヴィーの悲鳴が聞こえる。


 戰乙女の槍(ヴァルキリースピア)が俺に突き刺さる寸前に、不自然な軌道を描いて滑るように逸れ……壁に突き刺さって轟音と共に消滅する。

「な……ん……だと?」


 それまで勝ち誇っていたロレンツォが驚愕の表情を浮かべて無傷の俺を見ていた。

ヴァルキリージャベリンでも良いかな〜と思うけど、まあスピアで。


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