34 プランナー・イン・ザ・ダンジョンズ03
第3階層には魔導人形がいなかった。
ということで探索を終えると早々に第四階層へと向かった。
「案外深い場所まで作られているよなあ……」
「何階層まであるのかしらね」
アイヴィーが返すが俺は彼女の方を見ずに頷く、というかなんか気恥ずかしくてアイヴィーの顔が見れない。
彼女とは特に何もなかった、というか何もできなかったのが正しい。朝まで時々思い出したように話をしながらずーっとくっついてただけだ。
俺は子供か! と思ったが、転生後は子供だったから仕方ない。アイヴィーも朝になったらいつもの調子に戻ってた。
でも時折見せてくれる笑顔は本当に可愛かった……正直何度か危なかったが俺の理性は最後まで防御を崩さなかった。
第4階層でも何度か戦闘が起きたものの、その都度事前に決めていた役割に応じて敵を撃退していく。
チームの動きも洗練されてきており、相互の連携もスムーズになってきた。
他チームの動きはわからない、第4階層に入ってから他の学生を見ていないので、別ルートで探索を進めているのかもしれない。
夜も初日と同じような形で夜の警戒も怠らずに交代で休んだ。二日目はトニーと俺がペアになったが、トニーとは他愛もない話だけで終わってしまった感じだ。
まあ……もう一度アイヴィーとペアになった時に、何を話していいのかさっぱり思いつかなかったので、これはこれでよかったと思う。
三日目……第五階層に進入して探索を進めていく中で、少し広めの部屋に入った時に違和感を感じた。
「ちょっと待った、何かおかしい」
俺の言葉に皆が武器を構えて警戒体制に入る。
部屋は今までの階層ではなかったくらいの大きさで、柱が何本か建てられている。
その先に四体の悪魔像が設置されていて、その中心に鈍く光る宝石のようなものが安置されている。こういった場所にある悪魔像なんてどう考えても魔導人形っぽいんだよなあ。
そんなことを思っていたら、四体の悪魔像の首が軋み音を立てながらこちらを向いた。
「これは確定だな」
「きますぞ」
悪魔像……魔導人形がゆっくりとこちらへと向きを変え、重量感のある動きで歩き出していた。
「アドリアは防御魔法を、それとアイヴィーは剣を折らないように注意して。トニー支援を」
「わかったわ。炎よ、我が剣にその力を与え給え<<炎の武器>>」
アイヴィーが刺突剣に魔法の炎を纏わせる。炎の武器自体はそれほど高位の魔法ではないが、手軽に攻撃力を強化できるということで人気の魔法だ。弱点は炎に強い敵にはあまり効果がないところだけか。
そして今回は俺も召喚魔法を使うことにした。出し惜しみはしない。
「水の精霊よ、我が前にその姿を現せ。我が命令に従い敵を打ち倒せ<<精霊召喚>>!」
俺が今現状で使える魔法の中でもお気に入りの魔法が召喚魔法だ。
単純にダメージを出すのであれば、他にも攻撃系の魔法が使えるのだが、召喚魔法は継続的に敵への攻撃が可能だ。
ベアトリスが炎の精霊をよく使っていたのも、効率的に相手への攻撃を繰り出せる、という点で有効だったためだ。
ただ、俺は炎の精霊と契約ができていない。契約しようとしたら「……なんか気にいらない」と即答されてしまったのだ。そんなことってあるのか、とは思ったが大学で勉強していくとある程度精霊側にも好みがあるのだと書かれていて納得した。
つまり俺は炎の精霊からはあまり好かれない何かがあるのかもしれない。
俺の前に水の柱が湧き上がり、その水が形を変えていく……。
「あら、私の可愛い契約者様。お呼びですか?」
水の精霊がその姿を表す。俺の契約した水の精霊は妖艶な人間女性の姿をしている。
別にこの姿じゃなくてもいいと思うのだが、たまたま声をかけて契約した水の精霊がこんな外見だったのだ。
「ああ、魔導人形を倒したくてね……協力してくれないか?」
「わかったわ、可愛い坊やの頼みだもの、頑張っちゃうわ」
なぜか俺の水の精霊はよく喋る。そして機嫌が悪いと命令を聞かない。
王国魔法大学でこいつを呼び出した時に他の学生からびっくりされたこともある。普通はこんなに喋らないのだとか。
魔導人形の一体目掛けて水の精霊の口から強烈な水流が打ち出される。
動きの遅い魔導人形はこの水流をまともに受けて腕がもげた。
「胴体は結構硬いですわね」
水の精霊が再び水流を打ち出し、足を狙う。
大きな音を立てて魔導人形の足がもげてそのままひっくり返る……そのまま近づいて、ジタバタと動く魔導人形に愛用の杖を叩きつける。
何度か殴ると、魔導人形はピクリとも動かなくなった。
アイヴィーも支援魔法を受けて魔導人形の関節部分に刺突剣の突きを叩き込み、行動不能にしていた。やはりアイヴィーの剣の腕は素晴らしい……的確だし体の使い方がしなやかだ。
「あはは、これは叩きがいがありますね〜」
さらにアドリアは連接棍を手に的確に別の魔導人形に打撃を加えていた。次々と部位が破壊されていく。攻撃を加えているアドリアはなぜか非常に楽しそうだ。
最後の一体はトニーを追いかけているが、トニーは淡々と魔導人形の攻撃をかわしている。
鍛えているだけあって魔道士とは思えないくらい動きが早い。
ただ、トニーは武器を持っていないので攻撃ができない……魔導人形は石像ベースなので、かなり強固な作りになっているのだ。素手で殴ったら骨が折れるくらいは覚悟しなければならないだろう。
「こちらもお願いしますぞ!」
「任せなさい!」
アイヴィーが素早く魔導人形とトニーの間に滑り込むと、刺突剣の突きを叩き込む。
ガラガラと音を立てて魔導人形が動きを止めた。
思っていたよりも魔導人形は強くなかった、というか俺たちが予想よりも強かったのだろう。アドリアも担当していた一体を破壊していた。
「これでまずは魔導石は確保できるわね!」
アイヴィーがアドリアに駆け寄って二人で喜んでいる。
「魔導石はこれだな」
鈍く光る宝石を拾うと、石の表面に「魔導石確保おめでとう!」と大陸共通語のメッセージが表示される。
こういう仕組みもどうかと思うが、まずは第一関門突破ということか。
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