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21 混沌の戦士(ケイオスウォリアー)06

アルピナ戦最終幕

 俺の作戦は至極単純なものだった。


 おそらく黒い紋様は絶対防御能力を持っているとはいえ、展開されている部位が比較的面積が広い部分に限定されていると予想できる。

 魔法や弓矢などの攻撃ではアルピナは腕などで受けるわけではなく、そのまま放置しても紋様が自動的に防御していたが、セプティムの攻撃などの攻撃では手に紋様を移動させて受け止めていた。つまり四肢などの防御では何かしらのきっかけがないと防御ができないかもしれない、という点。

 またその際にアルピナはきちんと()()()()()()()


 視界外からの攻撃に対しては自動防御しない、もしくは能力低下の可能性が高い。そこで俺は視界から外れた場所からの攻撃を考えたが、冒険者たちは流石にアルピナの注意を引いてしまう可能性が高く、ノーマークで行動できる俺が動いた方が得策だと判断した。

 まあ、カルティスもベアトリスも難しい顔をしていたけど、これ以外に作戦が立てられそうにない点、確実にアルピナは俺の行動は放置するだろうと考えたことも大きい。


 何せアルピナの前で見せた炎の矢(ファイアアロー)は攻撃力がさほど高いわけではないので脅威にはなりにくい。

 正面から撃つ分には対処が簡単だ。でも俺には奥の手がある……それを信じてアルピナの視界から外れて、後背に回り込むと冒険者達の攻撃を防御しているアルピナの後頭部に手のひらを突きつけることに成功した。

 まあ、実際にアルピナは本当に俺のことなど気にしていなかったのか、蜘蛛の背中に乗っても全く俺に気がついていなかった……それはそれでどうかと思ったが。


「しまった、どこへ……」

 アルピナが狼狽したようにあたりを見渡す。でもその時には俺はすでにアルピナの背中にたどり着いていた。

「ここですよ」

 俺はアルピナの後頭部、紋様の展開されていない無防備な場所に向かって魔力を全力で注ぎ込んだ炎の矢(ファイアアロー)を解放した。


<<企画(プランニング)、魔力ブーストを発動します>>


 来た! この土壇場で能力(チート)が発動する。

炎の矢(ファイアアロー)!!」

 アルピナの頭部の半分がブーストされた炎の矢(ファイアアロー)の爆発で四散し、青い血を撒き散らしてゆらり、と体勢を崩していく。

「バカなあぁ! お前のような餓鬼に……嘘ダァああああ!」

 ゴボゴボ、と血を噴き出しながらアルピナが動きを止めた。

「セプティムさん!」


 回復される前にトドメを刺さなければいけない、俺は叫んだ。ハッとした顔をしたセプティムの表情が変わる。

混沌の戦士(ケイオスウォリアー)は体の中に(コア)があったな……それを破壊すればッ!」

 一気に突進し、三日月刀(シミター)を腰だめに構えたセプティムの鋭い突きが胴体を貫く。


 その一撃は見事に(コア)を貫いたようで、アルピナの動きがビクン、と止まり……三日月刀(シミター)の刺さった部分を中心にヒビが入った。

 バキバキと音を立ててヒビがアルピナの身体中に広がっていく。セプティムが三日月刀(シミター)を捻り、引き抜く。

「終わりだ」


「……ハ、ハハハ……」

 突然アルピナが笑い出す。

「油断した……油断した……こんな餓鬼にやられるとは……」

 血走った目が俺を睨みつける。

「あんたは危険だ……子供の姿をしているくせに何かが違う……あんたはここにいてはいけない、()()だ」

 ヒビが崩壊へとつながり、四肢からボロボロと崩れていく。

「ヒヒヒ……私たちは死なない……何年、何十年かかっても必ず戻ってくる」

 アルピナが狂気に満ちた目で俺を見つめ、そして歪んだ笑顔を浮かべる。

「その時には必ず……私のものにしてやる」

 そのまま動きを止めると、アルピナはボロボロと崩れ、破片が瘴気となり消え去っていった。


「勝ったのか?」

 カルティスがきょとんとした表情で呟く。

「……勝ったな」

 セプティムが尻餅をつくように地面に座り込み、もう立っていられないという表情だ。

「ジャクー、怪我をしている人を治療してやってくれ」

 そういうとそのまま大の字に倒れてしまう。


「勝てないと思ったが……最後まで諦めなかったクリフ……お前のおかげだ、ありがとう」

 ジャジャースルンドが()()()()()で俺に握手を求めてきた。が、めちゃくちゃ怖い顔にしか見えない。ただ、この質実剛健な戦士がこうやって笑顔を見せてくれることは素直に嬉しい。

 バーバランドラもやはり()()()()()で俺の頭を撫でてくる。こちらもやっぱり怖い。

 が、暗黒族(トロウル)が本当に喜んでくれているのを感じられて、俺も思わず照れ笑いをしてしまった。


「クリフさん……無茶をして……」

 いきなりグイッと引き寄せられ、フワッとした感触と汗と血の匂い、そしてあのフローラルな心地よい香りに包まれた。ベアトリスが目に涙をいっぱいに溜めて俺を抱き抱えていた。

「ごめんなさい……あなたにこんな危険なことをさせて……」

「いたた……ベアトリスさん、僕も身体中が痛くて……」

「ご、ごめんなさい!」


 ベアトリスが慌てて俺を引き剥がすが、俺の打撲や傷が痛み流石に悶える。そうなのだ、俺もそれなりに怪我をしていたんだ。

「だ、大丈夫で……あれ?」

 そして魔力を使いすぎた俺は緊張の糸が切れたのか、急速に眠気を感じた。


 冒険者達が慌てる中、俺の意識は暗転していった。

ちょっと前まで自分の中のシミターの造形イメージがショーテルっぽくなってたのに最近気が付きました。


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