209 創造的進化
「セプティム……我らがトゥールイン軍には時間がないのでな、そろそろ決着をつけさせてもらおう」
クラウディオの瞳が怪しく光るのを見てセプティム、アドリア、ロラン、ヒルダが構えをし直す。目の前の混沌の戦士は元騎士ではあるが、人間をやめた段階でどのような能力を得ているかわからない。
不気味な力が目の前の巨躯に集約していく……足元へと黒い泥濘が染み出すと、クラウディオの体を泥濘が覆っていく……。
「羽化……そういえば私と昔戦った時はそこまではできていなかったな」
セプティムが三日月刀を構える。アルピナの時と同じ……混沌の眷属において一定以上の階級に達したものは、その魂の本質に近い姿へと羽化ができる。
アルピナとの戦いの後、セプティムは過去の文献について調査を行い、混沌の眷属についての知識を多く学んでいた。その中で過去に存在していた混沌の戦士が姿を大きく変化させるという能力を持っている記載と、アルピナ戦での羽化を目撃していたことで、彼らが姿を変化させることで大きな戦闘能力を発揮することを理解した。
セプティムは身構える三人に向かって軽く声を掛ける。
「気をつけろ……君らは知らんかもしれないがこれからが本番だ」
彼の言葉に表情を固くする三人……その目の前でクラウディオを覆い尽くした汚泥がまるで風船のように大きく膨らんでいくと音を立てて地面へと再び戻っていく。
その中からまるで恐ろしく巨大なナメクジのようなぬらぬらとした下半身にクラウディオの上半身、そしてその力強い腕は六本へと増加した……冒涜的な姿の混沌の戦士の姿が現れる。
「ようやく……本質を理解したよ、セプティム」
「ナメクジのような姿が本質だと? お前の性根らしくひどい有様だな!」
セプティムが叫ぶや否や、クラウディオへと踊りかかる。ヒルダが連続でクラウディオに向かって矢を射掛けるが、その矢は太い胴体を膜のように覆っている粘液に絡め取られて無効化されている。
クラウディオが軽く腕を振るうと、その腕はまるで骨など入っていないかのように鋭い槍のように伸びる……セプティムは放たれる腕を交わしながら接近していくものの、そのうちの一本が無防備に見えるアドリアへと伸びる。
「くっ……」
「あぶないっ!」
ロランが大盾を構えてその腕による攻撃を受け止めるが……恐ろしく重い攻撃が腕に伝わりロランは顔を顰める……恐ろしく重い一撃。まともに食らったらタダでは済まないだろう。
痺れる手に力をこめてジリジリと攻撃を押し返していく……その様子を見てニヤリと笑うクラウディオ。良い戦士だ、防御に関しては巧みで隙がない。
「大丈夫ですか? まずは……祝福を!」
アドリアの魔力がクラウディオに立ち向かう仲間の力や速度を加速させていく……その力を得てロランは一気に吠えるように攻撃を押し返した。
その間に加速したセプティムが三日月刀を振るいクラウディオの側面から切りつけるが、その攻撃を素手で受け止めるとセプティムに向かって別の腕が振るわれる。
「単純に外皮を厚く、強くしたのか」
セプティムはすぐに後方へと飛びすさり、間一髪攻撃を避けるが着地地点へ次々と振るわれる腕の攻撃を避けるために距離をとりながら回避に専念せざるを得なくなる。
「私がっ!」
ヒルダは走りながら弓に矢をつがえてクラウディオに向かって射撃を繰り返すが、単純に威力としては脅威と見做していないのかクラウディオは打ち込まれる矢を無視しながらセプティムへと次々と攻撃を繰り出す。
ロランが槍を構えて前進するものの、クラウディオが片方の腕を鞭のようにしならせて大盾に叩きつけたことでそれ以上の接近を防ぐように立ち回る。
「フハハ! まだまだ……これでは足らんなあっ! もっと自由に、もっと創造的に私は進化する……」
メリメリと音を立ててクラウディオの背中から、新しい腕が生えていく……その腕はまるで蟹か何かのような装甲のような外皮をしており巨大な鋏のような先端となっている。
その新しく生えた腕を振るい、セプティムへと躍りかかるクラウディオ。
「めちゃくちゃだな……既に生物の範疇から外れかかっているぞ」
セプティムは迫り来る腕による攻撃を交わしながら切りつけるものの、装甲の分厚い腕には簡単に弾かれてしまい顔を顰める。これは……恐ろしく硬い、見た目通りの性能というところか。
三日月刀を再度振るうとセプティムは体制を立て直してクラウディオへと相対する。
「だが、人間の成長や経験を甘くみるなよ。私はお前たちを倒すために……知識をつけているのだから」
_(:3 」∠)_ 創造的に進化するってもさ、限界あるよね(台無し
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