179 戦士団突撃(チャージ)
「オラァ! チャキチャキ準備しろ!」
「ダラダラやってんじゃねえ! もう攻めてくるぞ!」
帝国傭兵部隊に緊張と怒号が走る……俺は戦場に立ったことはない、が今のこの状況はかなりまずいことすらわかる。帝国傭兵部隊は行軍の途中にトゥールイン軍の斥候部隊と遭遇して、戦闘に入るまえに逃げられた。
これも指揮系統が急に混乱したためなのだが……完全に気が抜けていたとしか思えない行動だった。
部隊は慌てて防衛のための準備を進めており、俺は木の柵などを立てる手伝いをしている……。ヤコボは取り巻きたちに何かを命令しているが、明らかに怯えた表情をしており戦いとなったら指揮など取れないであろうことがはっきりとわかる。
「あーあ、こりゃ死ぬかもな」
俺と一緒に木の柵を地面へと打ち込んでいたベッテガが苦笑する……ここ数日でベッテガと話すようになった俺は、少しだけ彼と行動する時間が増えた。なぜかはわからないが、彼はロスティラフにも笑顔で接するようになっていた。
初日のあれはなんだったんだ、と言うくらい彼は実にフレンドリーな対応のできる男であった。
「経験的に危なそうかい?」
「あぶねえな、相手も戦闘経験が少ないだろうが、俺たちはたった五〇〇人しかいないからな」
そんな俺とベッテガの元にカレンとロスティラフがやってくる。ロスティラフは混合弓の弦を締め直しながら、カレンは鎧通しは背中に差したままで、手には長弓を持っている。
「偵察に出た連中が戻ってこないね、下手をするとこっちに主力が来る可能性があるよ」
俺たちの眼前には大きく平野が広がっており、街道が伸びているためその方向から敵軍がやってくると予想して布陣しているが……。
「クリフ……傭兵は戦意がありますが、司令官含めて上層部はかなり危ない気がします」
ロスティラフが少し困ったような顔で俺を見る……撤退するタイミングなどもおそらく指示は飛ばないのだろう。傭兵たちは応急処置的に防衛体制を整えているが、これは長年の経験からくる対応なだけだろう。
「おう、竜人族! 弓兵が足りねえ、手伝ってくれ!」
他の傭兵から声をかけられて……ロスティラフはカレンと一緒に俺たちの元を離れていく。ベッテガと顔を見合わせて……彼は肩をすくめると小剣を二本とも抜いて苦笑いを浮かべる。
「ま、俺は危なくなったらカレンを連れて逃げる、お前はどうする?」
「俺もまあ逃げるけど、本隊に知り合いがいるからそっちに逃げるつもりだ」
その言葉に、少し何かを考えたような表情を浮かべた、ベッテガは少し間を置いてニヤリと笑う。
「貴族にでも知り合いがいるって感じだな、わかった俺たちもついていくぜ」
「余計に死ねないな」
俺たちは笑いながら……拳を合わせる。なんだよ、こんないい顔できるんじゃないか……そんな思いを目の前の少し背が低い悪人顔の男性に対して思う。
戦闘は……もうすぐ始まるだろう、俺は人生初めての戦場に立つことになる……視界の先に砂塵が巻き上がっているのが見える。そして怒号のような鬨の声が響き渡り……帝国傭兵部隊の戦陣に緊張感が走る。
「くるぞ! 武器を構えろ!」
「頭! 帝国の小部隊五〜六〇〇名くらいの集団が陣構えてやすぜ」
馬を走らせながらカイ・ラモン・ベラスコ男爵は部下からの報告を聞いて、はて? と悩む仕草をする。小部隊……と言うことは帝国軍は複数の進撃ルートを分散移動していると言うことだろうか。
素人か? 分散して行軍するのは戦場が遠ければリスク軽減になるだろうが……集合地点を少し手前に持ってこないと各個撃破の良い的ではないか。
「その程度なら踏み潰して終わりだな、それと頭はやめろ、せめて男爵って言ってくれよ」
その言葉に報告をした兵士鎧を着用したガラの悪そうな男は、へへと笑う。
「そうでしたね……でも男爵って柄じゃねえですよ」
まあな、と苦笑してカイは腕をさっと高く上げる……その行動に呼応して三人の騎士が彼の元へと馬を近づけていく。
「ブルネッロ! 弓もちを連れていけ、射撃ごとに場所を変えろ! 決して接近されるな」
ブルネッロと呼ばれた、壮年の髭面の男性がニヤリと笑って、長弓を振るって男爵の命令に応える。
「おうさ、男爵こそ簡単に死なないでくださいよ!」
「馬鹿言え、俺が死ぬって顔してるか?」
ガハハと笑うと、ブルネッロは弓を持った軽騎兵三〇〇名ほどを引き連れて離れていく。その様子を見ながら、カイは次の一手を考える聞き慣れない音と威嚇効果で戦意を挫く……それで相手が浮き足立つだろう。
「ジョルジェット! 竜騎兵を指揮して、射撃と離脱を繰り返せ。敵の弓兵の方が射程が長い、無駄に犠牲を出すな。音で威嚇するんだ」
ジョルジェットと呼ばれた、金髪碧眼の男性は黙ったまま頷くと、彼に付き従う一〇〇名程度の竜騎兵……帝国ではまだ実用戦力として見られていないラッパ銃を携えた騎兵が付き従って走っていく。西方世界でもそれほど集団で運用できていない竜騎兵、今回虎の子のこの部隊を持ってきたのはカイ本人の判断だった。レヴァリア戦士団ではこの新兵器の有効性を生かすために集団で運用できるように訓練している。
そして……相手の戦意を完全にへし折る突撃が最後にあれば、一方的に勝利を収められるだろう。
「ダヴィード! 槍騎兵持っていけ、タイミングは任せる」
「承知! えーと、男爵!」
ダヴィードと呼ばれた短髪黒髪で肌の浅黒い男性はニヤリと笑って、槍騎兵二〇〇名余を引き連れて離れていく。槍騎兵の突撃で最後の抵抗をへし折る……これで王手だ。
「残りは俺の指揮下だ。いいな、無駄死にすんじゃねえぞ! 突撃!」
「応!」
その言葉にレヴァリア戦士団の戦士たちが大きく咆哮する。地響きを立てながら西方世界最強の傭兵団、レヴァリア戦士団の戦士たちが突撃を開始していく。
敵に魔法の使い手がいる場合もあるが……魔法使いは集団使用しなければ脅威にはなりにくい……帝国がそれを実証した。カイは視界に入ってきた帝国軍の戦陣を見て確信する。
「ここまで近づいても魔法がすっ飛んでこないってことは……魔法使いはいないか少ないな。いくぞ!」
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