17 混沌の戦士（ケイオスウォリアー）02
戦うシーンの上手い描写を知りたい……
混沌の戦士。
堕落し混沌の下僕として操られる存在、というのがこれまでに学んだ知識。目の前にいるアルピナと名乗る女性も混沌の戦士だと名乗った。
「あなた達の名前も一人一人知りたいけど、でもまあ一人残してあとは殺してしまえば覚える必要は無いわねぇ」
アルピナは不気味に歪んだ笑顔で一人一人を値踏みするように見て回る。
「私の好みは、そこの可愛い子なのよぉ。さっきからジロジロ見てくるお兄さんも合格点なんだけど……子供の可愛さには負けるわぁ」
アルピナの虚無的な目が俺を見る。凄まじく不快な気持ちを掻き立てられて俺は思わず目を逸らした。
「その子を大事に可愛がってあげる……逃げられないように鎖につなげて。そうしたら毎日毎日私なしでは生きていけないくらい隅々まで愛してあげるわ」
ケタケタと不快な笑いをあげつつ、興奮しているのか吐息を漏らしながらアルピナが恍惚とした表情になる。
「この子は渡せない、お前のような汚らわしい化け物にはな」
ジャジャースルンドがメイスを突き出し、アルピナに向ける。
「あらぁ……暗黒族さんもいたのぉ。残念なんだけど私の守備範囲外なのよねぇ」
アルピナはジャジャースルンドとバーバランドラを交互に見ると、興味がなさそうに手を振った。
「でもぉ、この場所にいた暗黒族は可愛がってあげたわ。縛りつけて皮を剥いでいったら泣き叫んだのよ、いけない子ねってお仕置きしたら動かなくなっちゃった。案外暗黒族も脆いのよ」
狂ったようにクスクス笑うアルピナ。
サラッととんでもないことを言ってるなこいつは……そして完全にクレイジーだ。
「それ以上は聞くに堪えん」
ジャジャースルンドが音もなく突進し槌矛を振るう。冒険者すら誰も動けない状況での完璧と言える奇襲攻撃だった。槌矛の一撃は確実にアルピナの頭を捉えた、かのように見えたがいつの間にかアルピナの手に握られた片手半剣によって阻まれ、甲高い音を立てた。
「おイタはしちゃだめよ？」
アルピナがニヤニヤと不快な笑いを浮かべながら、剣を振るってジャジャースルンドを下がらせる。あの一撃を片手で払いのけるのか……。
「ジャジャー、一人で行くな」
セプティムが剣と盾を構え、ジャジャースルンドに並んだ。冒険者達もようやく金縛りが解けたように動き出し、各々の武器を構えて様子を伺う。
「あらあら、淑女一人にこんな人数なんて……殿方は乱暴なのね、嫌だわぁ」
アルピナは残った片手半剣を片手で地面から引き抜き、大きく構えた。ベロリ、と紫色の舌でアルピナが唇の周りを舐めた。
次の瞬間、凄まじい速度でセプティムの眼前に迫ると片手半剣の攻撃が打ち込まれた。
「……っ！！」
ギリギリで反応したセプティムがかろうじて円形盾でその攻撃を防ぎ、バックステップして距離をとる。
「風よ！ 我が敵を切り裂け！ <<風の刃>>！」
ベアトリスが放った風の魔法がアルピナを捉える、が何事もなかったようにその魔法の刃を受け流すと、不気味に目が光った。
「面倒だ小娘、動くな」
アルピナの言葉に呼応して、ベアトリクスの建っている地面から黒色の蔓が伸び、ベアトリクスに纏わりついた。
「これは混沌魔法？！ きゃあっ！」
ベアトリスを縛り上げた蔓はギリギリと音を立ててベアトリクスを締め上げる。
「ベアトリスさん！」
「ベアトリス！」
あまりの締め付けにベアトリスの顔が苦痛に歪む。
俺とカルティスが急いでベアトリクスにまとわりついた黒色の蔓を短剣と小剣で剥がしにかかる。が、蔓の締め付ける強さが尋常ではなく、うまく引き剥がすことができない。
ベアトリスが苦悶の声をあげ、蔓がギリギリとか細い身体を締め上げる。
アルピナの方向を見ると、セプティム、ジャジャースルンドが完全に防戦一方に回っている。
ジャクーは神性魔法で二人を援護している。支援系の魔法が主体となっているため能力の底上げや物理攻撃の緩和という意味では致命打を防いでいるようだが、二人の状況は好転してない。
バーバランドラはスリング射撃で援護を入れるが、アルピナに当たる前に投石が砕けた。
「対遠距離攻撃用の魔法障壁か、厄介だ。それなら……うわぁっ！」
ジャクーが新たな魔法の詠唱に入ろうとした瞬間、その詠唱を邪魔するかのようにアルピナの虚無の瞳が怪しく輝き、地面が衝撃破で裂け、集中していたために避けられなかったジャクーと反応出来なかったバーバランドラが大きく吹き飛ばされた。
さながら暴風のように剣を振るうアルピナ。
「さあ！ もっと遊びましょお！」
セプティムとジャジャースルンドは弱くない、弱いわけがない。だがアルピナの攻撃は大雑把に見えて人間ではありえないレベルの身体能力で制御されていて、とんでもない位置から振われるため対応に苦戦しているように見える。
防御に専念しているようだが、それでも防ぎきれないようで細かい傷がどんどん増えている。
「くそっ、この蔓め！」
苦戦の末、ようやく俺とカルティスはベアトリスに纏わりついた蔓を引き剥がした。引き剥がされた蔓は地面に落ちると黒い瘴気を上げながら消滅したが、これは魔法の効果が切れたからだろうか……。
ベアトリスさんは締め付けられた肌が赤く傷つき、痛みを堪えながらも気丈に杖を支えに立ち上がり、アルピナに怒りの眼差しを向ける。
やだ、怒った顔も綺麗だわベアトリスさん。
そんなことを思いつつも俺も小剣を構えてアルピナの方向へ向き直る。
参考になりそうな小説を探してちょこちょこ他の方の作品を拝見しています。
本当に勉強になります。
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