13 ゲームプランナーは恐怖と死を克服する
どうせ書くなら戦闘シーンは少しこだわりたい。
そんな気分です。
「くう……こども……くわせろ」
山羊頭がボタボタと涎を垂らしながら斧を身構える。漫画やアニメで山羊の頭をした化け物が襲いかかってくるシーンは何度も見たが、それはあくまでもスクリーンの中の話だ。笑って見ていた時間が懐かしい。
実際に異形の化物を前に体が震えている。
怖い。
斧は大きさからして俺を一撃で殺すことができるだろう、どれだけの痛みがあるのか想像すらつかない。
前世の死に方は意識がなかった……痛みすらない。気がついたらあの声が死んだことを教えてくれた。
でも今目の前に「死」が迫っている……初めての経験と恐怖で身が縮み上がりそうなのを抑え、なんとか立っている。
心臓は早鐘のように鳴り響き、汗が流れる。小剣を持っている右手も汗で濡れ、先端が小刻みに揺れている。左手で胸を押さえた、そうでもしなければ怖さで倒れてしまいそうだったからだ。
ただ、今のところ山羊頭の攻撃は俺には当てられず、俺の小剣はリーチの問題もあって届かない、魔法に集中しようとすると山羊頭の斧の一撃が飛んでくる。
「どうすれば……」
斧の一撃が再び飛んでくる。それをかわすと俺は小剣を突きだし、山羊頭の胴体に攻撃を繰り出すが、鎧が思ったよりも硬く弾かれてしまう。慌てて飛び退いて距離を取ることで追撃を避けた。
時間稼ぎはできるだろうが、山羊頭が力押しで接近してきたらかわし切れるだろうか。
正直集中しながら回避を続けるのも疲労感が大きい、俺の精神年齢は前世と加えると30代後半だが、肉体は8歳の子供だ。
大きく息が切れてきたことで、このまま交わし続けるのは難しい気がしている。早くセプティムや誰かが来ないと……。
「ぐあっ……しまった……」
ジャクーが押し切られたらしく、槍の一撃を肩に受けていた。苦し紛れにジャクーが振るった槌矛が鹿頭の顔にぶちあたり、鹿頭がよろける。
「ガアアアアアァァ!」
よそ見をした俺に山羊頭が一気に距離を詰めてきた、今までと違って反撃を気にせずに飛び込んできている。
この攻撃はヤバい、今までよりも速度が早い。慌てて飛び退いたが、疲れもあって俺の着地体勢が大きく崩れた。
そこに斧の柄の追撃が飛んできた。
強い衝撃と激痛。相手の攻撃が当たった?!
痛む額を押さえて山羊頭に向き直り、慌てて小剣を構える。柄の一撃は俺の頭に当たっていた。
押さえている左手にぬるりとした感触が広がり左目の視界が暗くなった……血が出て視界を塞いでいるのかもしれない。
「クリフさん!」
ベアトリスの悲鳴に近い叫び声が聞こえた。彼女のいる位置もここからは距離がある上に、ベアトリスは他の獣魔族と戦っている。
痛みで意識が途切れそうになるが、なんとか持ち堪える。
「クリフ! 待ってろ!」
セプティムが目の前の敵を切り倒し、慌ててこっちに走ってくるのが見えた。が、まだここにくるには距離がある。
「うまそう……こども……くう」
涎を流しながら山羊頭がベロリ、と舌なめずりをする。斧を最上段に構えてゆっくりと近づいてくる。
このままじゃ……俺が使える最高の攻撃は魔法しかない。血で濡れた左手を山羊頭に向ける。
ベアトリスによる魔法の講義をふと思い出した。
詠唱=仕様の再確認
構成=仕様の構成
発現=効果を出す
改良=効果の改善
魔法の効果は改善できる。さっき放った炎の矢は覚えた時の構成で撃った、それでも殺傷能力は高いと思ったが山羊頭は対して気にせずに動いている。
あいつを倒すには攻撃力を上げるしかない……魔力を集中させればできるのだろうか。
「くわせろおおおおおおおぉォォォォ!」
叫び声をあげ山羊頭が一気に距離を詰め飛びかかってきた。渾身の一撃だ、山羊頭も俺を倒せると判断したのだろう、今までのような様子を見ながらの攻撃じゃない。
俺は……その場から動けなかった。
死
脳裏にバルトやリリアの顔が蘇る。巨大な斧はゆっくりと俺の眼前に迫ってくる。
恐怖と絶望と、そして心の奥底で声がする。
「死にたくない」と。
<<企画、魔力ブーストを発動します>>
機械的な声が脳裏に響く、なんだこれ。
さっき放った炎の矢の時よりも大きな魔力が手のひらに集まっているのを感じる。
「炎よ、我が敵を打ち倒す力となれ! 炎の矢!」
言葉とともに手の平に集中した魔力が一気に光と炎を顕現化し、ひときわ大きな炎の矢が出現する。そのまま凄まじい速度で山羊頭の胸に突き刺さると、肉体を貫くように爆発した。
胸に大穴を開けた山羊頭は驚愕の顔を浮かべながらそのまま倒れる……土壇場だけど構成の強化が上手くいったようだ。
ベアトリスが何かを叫びながらこちらに走ってくる。冒険者たちも獣魔族を倒したらしく、ジャクーの援護にも入っていた。
「……助かった……」
そのまま俺は意識を失った。
うーん、チート能力かなーやっぱり
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