12 戦闘開始!無事には済まなそうな状況になった
戦闘シーンなどがあります。
気になる方はお気をつけください。
「聞こえるか? ……もうすぐだぞ」
駐屯地から近い、少し広めの空き地の周りに俺たちは隠れていた。
作戦として、この空き地に獣魔族を誘き寄せる。そして隠れているカルティスたちが一気に遠距離攻撃で襲撃をかけ殲滅する。釣り出す役はセプティムとジャジャースルンドだが、うまく獣魔族を誘き出せているようで、喧騒がだんだんとこちらに向かっていることがわかる。
「クリフ、ジャクーと一緒に退路を断つ方に入ってくれ。ジャクーはこう見えても戦い慣れている」
カルティスが最終的な位置の調整を指示している。このチームはセプティムという圧倒的に強い戦士がいるため、力押しで物事を解決するのかと思っていたが、カルティスが補佐役として戦術面で補佐をしている面が強いようだ。
ジャクーと一緒に入り口付近に隠れていると、かなりの速度でセプティムとジャジャースルンドが空き地に飛び込んできた。
「ジャジャー、反撃に移ろう」
「応」
急に仲良くなってない? この二人。そんなことを考えていると不気味な叫び声をあげながら獣魔族が10体ほど空き地へと走り込んできた。
獣魔族を初めてみた……頭が山羊や鹿っぽいものが多い。あ、馬もいるな。着用している鎧は革製のものが多いが、上半身は筋肉質なものが多く、武器は汚れた斧や槍を持っている。足先が蹄になっていて、鹿や山羊と同じように太い下脚部で走っているが、速度はそこまで出ないようだ。
セプティムたちは足がはやいとはいえ、動物のような速度では加速できないらしい。
「さあ、来い!」
セプティムが三日月刀と円形盾を構えると、先頭にいた獣魔族が鋭く槍の一撃を繰り出してきた。セプティムが珍しくその一撃を盾で受け止めると、ジャジャースルンドが動きが止まった瞬間を狙って獣魔族の頭部に槌矛の一撃を叩き込む。
グシャリと嫌な音を立てて、血飛沫を上げながら獣魔族が吹き飛んだ。
「今だ!」
カルティスの合図と共に隠れていた仲間が立ち上がり、一斉に攻撃を繰り出した。弓矢、投石、魔法の攻撃が獣魔族に集中する。何体かの獣魔族は攻撃を受けて倒れた。
が、まだ立っているものがいる。
小鬼族は走って獣魔族に集団で攻撃しに向かっているが、いきなり一体が頭をかち割られていた。大丈夫なんだろうか?
残りの獣魔族達は攻撃を受けつつも、勇敢に反撃を開始した。
ジャクーと俺も退路を塞ぐために立ち上がり、武器を構えて接近する。こちらには鹿頭の獣魔族が1体向かってきた……逃げようとしてたのだろうが、退路を断たれたことを感じて戦士よりも戦いやすい、と判断してきたのだろう。
かなり冷静に動ける個体のようだ。
「行くぞ!」
ジャクーが鹿頭に槌矛の一撃を見舞うが、獣魔族は手に持っていた槍の柄でそれを受け止め押し合いになる。かなり力が強い個体のようだ。
「思ったよりも力が強い……」
「大丈夫ですか?!」
俺はジャクーを援護しようと、小剣を構えて近づこうとした……と、そこで寒気を感じ全身の毛が逆立った。
危ない! 反射的に横に飛び退くと、それまで俺がいた場所を斧の一撃が空を切る。
危ない……これ食らったら即死だったな。バルトの剣術稽古に付き合っていなかったら何もできずに死んでいたかもしれない。
体勢を立て直して攻撃が来た方向を見ると、小鬼族を倒したらしい山羊頭の獣魔族が1体、不気味な斧を構え、口から涎を垂らしながら立っていた。
「こども、みがかるい……こども、くうとうまい、くわせろ」
山羊頭が涎を拭おうともせずに斧を構えてゆっくりと近づいてくる。この個体はカタコトでしか喋れないようだ、明らかに目が獲物を狙う目だ……正直いうと怖い。周りを見ても皆戦闘で余裕がないようだ、これはやるしかない。
「炎よ、我が敵を打ち倒す力となれ! 炎の矢!」
左手で炎の矢を打ち出して山羊頭に攻撃を仕掛ける。炎の矢が山羊頭の左肩に突き刺さるが、攻撃もお構いなしに山羊頭が距離を詰め斧を振るう。
「くわせろォォォォ!!」
俺は後ろに大きく飛び、その攻撃を回避する。
「にげるなァ! ……くわせろォ!」
斧を振り回しながら山羊頭が次々と攻撃を繰り出してくるが、俺はバルトの剣術稽古に付き合ってきたこともあって、バックステップやサイドステップを多用することで、攻撃を回避することができた。
バルト……父ちゃん、戦士としては結構強いんだな。山羊頭はバルトほどの技量がないらしく、動作が鈍い。
攻撃の合間に魔法を撃ってみよう、とは考えてみたものの疲れも見せずに攻撃を繰り出してくる山羊頭の勢いもあって、集中できるタイミングが掴めない……。
「クリフ! ぐっ……この……」
ジャクーが鹿頭と押し合いながら叫び、押しのけようとして足で鹿頭に蹴りを入れている。
が、鹿頭は頑丈な肉体のようでびくともしない。
他の冒険者達は大丈夫なのだろうか。
見直していて気に食わなくて、何度か手直しを入れています。
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