九話
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美しく、それでいて冷ややかな微笑でルミナは言った。
「殿下、いずれ殿下の運命の乙女が現れる事でしょう。どうか、18歳まで婚約者を決めるのはお待ちくださいませ。」
拒絶するように言われたステファンは、眉間にしわを寄せると言った。
「運命の乙女?どういう意味だ?・・・僕は今、キミに婚約者になってくれと願ったはずだが?」
「ですから、私は殿下の運命の相手ではございません。」
「何だと?運命だ何だと、恋愛感情で王族が動くと思っているのか。」
次の瞬間、ダン、と机を叩いてルミナが立ち上がり、立ち上るその怒気にステファンとシャロンは目を丸くした。
「殿下・・・・そのお口を閉じてくださいませ。」
ルミナは心の中で罵詈雑言を並べ立てていた。
どの口が言った?
どの口が恋愛感情で王族が動くと思っているのかと、さも当然のように言った?
はっはっは!
お前だよ!
お前が、恋愛感情で、婚約者を捨てて、そして、運命だと言う乙女を抱きしめながら私に言うんだよ。
婚約破棄をな!
頭の中の自分の口調がどんどんと悪くなっていくのを感じていると、シャロンが慌ててルミナの横に来ると怒りで顔を真っ赤にするルミナの背を優しく撫でた。
「だ、大丈夫か?顔が真っ赤になっているぞ。ゆっくりでいいから、その、ゆっくり息をすって、はいて、無理をしないで。」
穏やかなシャロンの声で、少しずつ自分が冷静になっていくのが分かる。
シャロンは落ち着いてきたルミナにほっすると、お茶の入ったカップをルミナに差し出した。
「一口飲んで。あ、ルミナ嬢の為にお菓子も用意しているだった。」
シャロンは侍女に命じて菓子を用意させると、にこりとほほ笑んで言った。
「お菓子好きなのだろう?ほら、ゆっくり、少し休憩しよう。」
優しい声に、ルミナは涙がこみ上げてきそうになるのをぐっと堪えた。
泣いてたまるもんか。
ステファンの前では絶対に泣くもんか。
ぐっとルミナは唇を噛むと堪え、そして出されたクッキーを口に含むとゆっくりと味わうように咀嚼する。
甘みが口に広がり、だんだんと心を落ち着かせていく。
「どう?美味しいでしょう?俺はここの菓子がとても好きなんだ。」
「えぇ、とっても美味しいです。」
シャロンは嬉しそうに笑い、お菓子を美味しそうに一緒に食べてくれる。
「ふふ・・・シャロン様は甘党なんですね。初めて知りました。」
「あ・・・内緒にしてくれると助かる。父に、次期宰相になるのだから、無表情を身につけろ!って言われているだ。」
「え?ふふ。あぁそういう事なんですね。」
ルミナは微笑むと、シャロンがここにいてくれてよかったとほっとし、そしてステファンに向き直ると言った。
「お恥ずかしい所をお見せいたしました。申し訳ございません。」
「・・・いや、いい。」
ルミナの様子から、婚約者云々を言いにくくなったのであろう。その後はその話が出ることはなかった。
「ルミナ嬢。」
「何です?」
ステファンは最後にルミナを引き留めるように名を呼ぶと、うつむきそして首を振った。
「いや、何でもない。」
その後他愛ない会話の後その場はお開きとなり、ルミナは馬車に揺られて家に帰ると、ばたりとベッドに倒れ込みそして大きく息を吐くとそのまま泥のように眠ったのであった。
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