八話
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「も、もう止めてくれ。」
ステファンの言葉に、ルミナは小首をかしげるとその場に膝をつき、顔色を青くさせているステファンを見た。
その横にはシャロンもおり、こちらも顔を青ざめさせて両膝をついている。
「まぁまぁ、まだ王妃たる者の姿勢教育第二巻一章目ですよ。こちらは十章続きますのに。」
困ったように言うルミナをステファンは化け物を見るかのような視線で見上げると、首を何度も横に振った。
「姿勢だけで・・・一時間以上同じ姿勢じゃないか。それに、さっきまではお茶の飲み方の姿勢だったりダンスを受ける時の姿勢だったり、姿勢ばかりで十章まで続くなんて・・・ウソだろう。」
「いえ、こちらは基本的な姿勢でして、第五巻まで続巻がございます。」
「っひ!嘘だろう。」
「殿下。まで基本姿勢についてでございます。それに、これからは教養についてもまだまだ続けるつもりなのですが。」
「ちょっと待て。本当に待て。」
「はぁ・・・これでは妃教育がなんたるものなのかについて、十分の一も伝えられていない状態なのですが。」
あまりにも早い白旗に、ルミナは心底がっかりしながら大きく息を吐くとステファンとシャロンに椅子に座るように促し、侍女にお茶を入れてもらうようにお願いをした。
二人はお茶を一口飲んでやっと顔色が少し戻る。
まだ妃教育がなんたるかについて話し始めて四時間もたっていないのに、二人はげっそりとしている。
ルミナは仕方がないとばかりにため息をつくと、お茶を一口飲んでから静かに言った。
「妃教育と一言に申しましても、種類は多種多様でございます。姿勢、礼節、各儀式での口上や動き、語学は妃教育では五カ国語以上が基本となり、また隣国などでの式典のマナー、正装、他にも細かく言えばいくらでも出てきます。また城の調度品や各式典の食事のメニューの最終的なチェックに、舞踏会やお茶会の準備の指示や各貴族らとの交流、情報交換などもあります。私も自国の妃教育しか存じ上げませんが、国王陛下が国を守る立場というならば、妃は城や貴族間のかかわりを繋ぐ役割を果たしていると考えております。」
ステファンは姿勢よく美しくお茶を飲むルミナに見惚れながら、ほうと息を吐くと言った。
「お前は・・・すごいな。」
「は?」
「いや、自分は王太子となるのだと頑張っているつもりでいたが・・・つもりだったらしい。妃教育を軽んじていたことを認め、ここに謝ろう。ルミナ嬢、気づかせてくれてありがとう。」
真っ直ぐにステファンに見つめられ、ルミナは胸の中がすっとした。
初めてである。
初めて、ステファンがルミナを認めた。
それがルミナにとっては嬉しかった。だが、次のステファンの言葉は別である。
「キミが僕の婚約者にふさわしい。どうか僕の婚約者になってくれ。」
「それは、国王陛下からの命令でなければお断りいたします。」
即答されたステファンは目を丸くし横にいたシャロンは驚いたように口をあんぐりと開けていた。
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