二十八話
ルミナはベッドに横になり、自身の手をじっと見つめながらループが終わったのだということを実感していた。
まぶたを閉じれば、これまでのループの最後がまざまざと甦る。
辛かった。
悲しかった。
苦しかった。
何故自分がステファンの運命の相手ではないのだと泣いた。
悔しかった。
こんなにも自分は愛しているのに何故愛を返してはくれないのだと。
けれど、シャロンに愛をささやかれ、愛されていることを感じ、彼と一緒に過ごすなかで、自身の愛の歪さに気づけた。
執着、していたのだと思う。
シャロンとの愛を育むことで、やっとそれに気づけた。
ステファンとソフィーは自身が感じるお互いへの愛情はゲームによって作られたものなのかと苦しむ思いを吐露していた。
けれども、結局のところ愛とは時間をかければかけるほどに育まれるものだと、シャロンと過ごすなかで知ったルミナはそれを二人に伝えた。
今の感情が続いていけばそれはきっとゲームに関係なく、それは自信らの間で育まれた愛になるはずだと。
くすりと、自嘲気味の笑みがこぼれる。
自身を何十回と裏切ってきた相手に愛について話をする時がくるなんて思いもしなかった。
許せないと思っていたのに。
許したくないと思っていたのに。
シャロンとの運命を感じた私の心は晴れやかで、それでいて、ステファンとソフィーへの憎悪なんて汚いものを抱えていたくないと思えた。
そんなもの、残していたくなかった。
二人を許す。
素直にそう思えた。
シャロンがこれまでの自分の頑張りを受け止めて、これから幸せをくれるという。
だから二人を許せた。
ステファンに向けていた愛はどろどろとしていた。
シャロンに向ける愛は、きらきらと煌めく。
胸の中に納める愛は美しい方がいい。
「お嬢様。シャロン様よりこれが送られてまいりましたよ。」
うきうきと弾む侍女の声。
その手には可愛らしいピンクの花で作られた花束が。
『愛しのルミナへ。よい夢を。』
一言添えられた手書きのメッセージ。
怖い夢を見ないようにというシャロンのルミナへの優しい気遣い。
内心ステファンはこういう然り気無いところをシャロンに学ぶべきだなと笑いながら思う。
侍女から花束を受け取り、その甘い香りをゆっくりと胸一杯に吸い込んだ。
「貴方がいてくれたから、今世の私はきっと優しくなれた。」
ルミナは幸せな夢が見られそうだと、幸せを感じた。




