二十六話
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皆が集まった部屋の中で、泣き続けるソフィーに代わってルミナと、そして王城で何があったのかをステファンが話し始めた。
ソフィーがルミナに話したことと同じような事をステファンにもソフィーは話たという。
ステファンはウソのような話を聞いたとたんに、ルミナと同じように全てが真実なのではないかと感じたと言う。
そして、ステファンはソフィーの言葉に首を縦には振らなかった。いや、振れなかった。
一度家に帰るよう伝えたが、その時の様子にステファンは嫌な予感がし、騎士達と共に公爵家へと向かって来たとのことだった。
ルミナは自身にはこれまで数十回ループしていたという事を伝え、ソフィーの話の信憑性は高まった。
しばらくの間、部屋の中に沈黙が訪れ、自然と湯気の立つお茶にソフィー以外が手を伸ばした。
「ソフィーが言った事が真実なら、婚約破棄しなければ、物語は最初に戻らない。つまり、婚約破棄さえしなければいいんじゃないかしら?」
ルミナの言葉にソフィーが真っ赤な瞳から涙をぽろぽろと零しながら言った。
「そんなの・・わからないわ・・・それに今回が最後・・・その場でこの世界は消えるかもしれない。」
また沈黙が訪れる。
ステファンは静かに口を開いた。
「ルミナ・・・すまなかった。」
突然の言葉に、視線がステファンへと集まる。
ステファンはじっとルミナの瞳を見つめながら言った。
「僕は君に、本当に酷い事をし続けたのだな。すまない。」
「殿下?」
「僕は自分勝手に・・君を婚約者という立場に縛り付けようとした。・・・君を何十回と僕は裏切ったのだろう・・?」
ルミナは過去を思い出し、苦々しげに頷いた。
「すまない・・本当に。僕は最低な男だな。君の言った通りだ。・・すまない。」
ステファンは胸にてを当て、苦しむように項垂れた。
「すまない。」
何度も苦しむように呟かれるその言葉にルミナはすっきりとした表情で首を横に振った。
「いいのです。私は納得しました。どんなに頑張っても、覆らない運命。それが物語ゆえならば仕方がない事。それに・・私はもう自分の運命の相手を見つけました。」
シャロンを見つめるルミナに、ステファンは二人を見つめて、静かに頷いた。
「・・そう・・か。」
ステファンは悲しげに視線をソフィーへと向けた。
「運命とは・・・恐ろしいな。」
ソフィーが泣きながら顔を上げ、そして言った。
「私だって・・・私だって怖いです。勝手に書き換えられて・・・お姉様を・・バグを直せって・・・でも私は・・本当はそんなこと・・・・うぅ・・でもそうしないとこの世界は消えてしまうかもしれないって・・・。」
ルミナは微笑むと言った。
「ソフィー。今回のことは、内密にしましょう。大丈夫。貴方が本当はいい子なのは私は知っているわ。」
その言葉に皆が驚いたように顔を歪める。
「お姉様・・いえ、私は残りの期間、罰を受けます。どんなことがあろうと、姉に刃を向けるなんて・・」
ポロポロと涙を流すソフィーをルミナは抱き締めた。
「一緒にいてほしいの。私、貴方のことも大好きなのよ?」
「お・・おねぇざまぁぉぁ・・・」
その顔はヒロインにしては不細工すぎる泣き顔で、ルミナは笑う。
世界が消える。
そうなればループも終わる。
ルミナはまた訪れた沈黙の中で静かに口を開いた。
「殿下、婚約破棄をしてくださいませ。」
「なっ・・・なんだと?」
ルミナはすっきりとした表情を浮かべると言った。
「だって、私は皆様の事が好きです。だから消えてほしくなんてない。」
自分が物語のバクなのだとしたら、自分がちゃんと動けば世界は元に戻る。
ならばそうすればいいだけ。
以前までの自分は嫌がっただろうが、自分にはシャロンがいる。
何度この物語を繰り返そうとも、シャロンがいると思えば、楽しんで動いていける気がする。
「お姉様・・・?」
ソフィーの頭をルミナは優しく撫でると言った。
「辛い思いをさせてごめんなさいね。」
「おねぇさまぁぁぁ・・・・・・」
ソフィーは子どものようにまた泣きじゃくり、そしてルミナはそんなソフィーの頭を優しく撫でる。
大丈夫。
自分はもう一人じゃない。
ルミナは晴れやかな気持ちで婚約破棄される決意をしたのであった。
たくさんのブクマや評価ありがとうございます!
今回は自分なりに目標をもって書いた話だったので、たくさんの方に読んでいたき、また評価もいただけてとても嬉しいです。
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