二十五話
エドウィンとシャロンが王城に向かい始めてすぐの事であった。
道の先からすごい勢いの騎士達がこちらに向かって走ってきているのが見え、馬車は止められた。
「ん?」
エドウィンが首を傾げ窓を開けると、そこには馬に乗ったステファンが青ざめた顔をしてこちらを見ていた。
「ステファン殿下?」
シャロンも驚くと、ステファンは声を荒げて言った。
「公爵家へと急ぎ向かうぞ!ルミナが危ないかもしれない。」
「なっ?!」
「説明は後だ!」
ステファンはそう言うと馬を操り公爵家へと走り出す。
シャロンとエドウィンはその様子に騎士から馬を借りるとステファンの背を追いかける。
砂埃が舞い上がり、シャロンとエドウィンは困惑しながらもステファンに追いつき、そして公爵家へと舞い戻る事となった。
屋敷の扉を開けた途端に、響く声にステファン、シャロン、エドウィンの表情は変わる。
「ソフィー!やめなさい!」
ルミナの叫ぶ声が屋敷に響いていた。
シャロンはすぐに階段を駆け上がっていく。それに続いてステファンとエドウィンが続く。
扉を開けると、そこには銀色のナイフを振り回すソフィーがおり、ルミナは部屋の中の物を投げて応戦しながらも逃げていた。シャロンは駆け寄ると振り上げたソフィーの銀のナイフを掴み、そしてその腕を振り払った。
その反動でソフィーは床に打ち付けられる。
「ルミナ嬢、大丈夫か!?」
「シャロン様!」
ルミナはシャロンに抱きついた。
ソフィーは床に倒れると、ステファンは銀のナイフを拾い、ソフィーを見つめた。
エドウィンはその様子を見て息を吐くと、執事に医者を呼ぶように伝える。
「ルミナ嬢、大丈夫か?」
「は・・・はい・・・シャロン様・・あぁ手から血が!」
青ざめるルミナにシャロンは苦笑を浮かべると言った。
「大丈夫。深くはない。」
「そう言う問題ではありません!」
ルミナはハンカチで血を抑える。ジワリと広がっていく血に、ルミナの瞳からはぽろぽろと涙が零れ落ちる。
「泣くな。」
「ならば、怪我なんてしないで下さいませ。」
「気を付ける。それで、何があったんだ。」
ソフィーは両手で顔を覆って泣き続けており、エドウィンは大きく息を吐くと言った。
「場所を移し、落ち着いて話をしよう。」
その言葉によって客間へと皆は移動することとなり、ソフィーはエドウインに抱きかかえらた。
「大丈夫か?」
心配するような、シャロンの優しい瞳。ルミナの心は温かくなり、にこりと微笑みを浮かべた。
「シャロン様がいてくれるから・・・大丈夫です。」
自分はもう一人ではない。そう思えた。