十六話
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シャロンは父親に今回の件を相談し、そして父親から国王陛下と王妃にも話が通された。
最初はそうなることはないだろうと国王は必要ないのではないかと話をしたが、婚約者となるルミナ本人の希望と、そしてステファンの曖昧な態度を見ていた妃が国王を頷かせた。
もしも仮の婚約を解消する事態になった場合、ルミナとシャロンが婚約するという形を取ると決められ、それが公爵家にも伝えられた。
エドウィンは初め、ルミナの気持ちから仮の婚約も受け入れる必要はないと伝えたが、ルミナはそんな父親をさとし、仮の婚約者となったのであった。
王家のこの仮の婚約という形は、第一王子の成人の義をもって正式な婚約となると貴族間には伝えられた。
何故仮なのかについて言及できるものはおらず、ルミナとステファンの仮の婚約は承認され、公爵家が後ろ楯となったことから、ステファンは王太子となった。
ステファンはシャロンを伴い、ルミナの家へと花束をもって訪れていた。
両親への挨拶を終えて、庭に出る。
二人きりというわけにはいかないので、ステファンとルミナの少し後ろからシャロンが付いていっている。
シャロンは先日の話が嘘のようにルミナに視線を向けずにいたが、その理由をルミナはすでに手紙にて知らされていた。
『もし、18歳になるまでの間に二人の関係が深まっては本末転倒。なので、二人きりの接触は基本的には許可を出さないというものであった。』
これは至極当たり前であり、ルミナは納得した。
「公爵家の庭も素晴らしいな。」
ステファンの言葉は、これまでのループの中で何度も聞いていた。
なのでルミナは、その中で最もステファンの反応が良かった言葉を返す。
「殿下と歩くと、いつもの庭が新鮮に見えますわ。」
通常ならば、ご満悦そうにステファンは微笑むはずだったが、今回は違った。
「何だ?今さら猫でも被るのか?」
「え?」
「思っていないことは言わなくていいぞ。」
ルミナは、胸の奥がずくりと痛んだ。
確かに自分はこれまでの会話でステファンに対して不敬な言葉を伝えたかもしれない。
だが、ずっと好きで、愛してきたステファンにそう言われると、愛する気持ちなどもう一滴もないと思っていても、苦しくなる。
「ステファン殿下。・・ルミナ嬢が歩み寄ってるのですから、殿下も素直におなりください。」
二人の少し後ろに控えていたシャロンが口を開き、ステファンはため息をついた。
「母上から、僕のお目付け役を賜ったからといって、あまり口うるさくはするなよ。」
「殿下もルミナ嬢を愛する努力をすると言ったでしょう?歩み寄りは必要です。」
ステファンは大きくため息をつくと、ルミナに視線を向けた。
「すまない。意地の悪い言い方をした。」
「いえ。」
いつもとは違った反応。
いつもとは違った様子のステファン。
ルミナは一瞬頭の隅に、本当に今回のループでは自分を愛してくれるのではないかという淡い期待が横切っていく。
それに慌てて自分自身を律する。
惑わされるな。
気を許すな。
もう二度と、愛さないと決めた。
ルミナはちらりとシャロンへと視線を向けると、優しい瞳に心が落ち着いた。
大丈夫である。
シャロンもついている。
ルミナは18歳の時までをどうにかやり過ごせるようにと、心の中を落ち着かせるのであった。
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