十四話
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庭とは言っても、先日のお茶会のひらかれた広い庭ではなく、王城の裏手にある小さな、本当に小さな花壇の方へとシャロンはルミナの手を引いて歩いていく。
まだ幼い二人だから、男女で手を繋いでいても何とも言われないが、ルミナはシャロンの行動に首を傾げたくなる。
静かな小さな花壇には、綺麗な花が植えられていた。
シャロンはそこで足を止めると、ルミナに向き直った。
「ねぇ、どうしてそんなに辛そうなんだ?」
「え?」
シャロンの言葉にルミナはどうしたのだろうかと訝しげに首を傾げる。
「ずっとだ。ルミナ嬢はステファン殿下との婚約が嫌なんだろう。なら何で他の令嬢に押し付けないんだ?それに、殿下が絶対に自分を愛さないと、どうして言える?」
真っ直ぐなその視線に、あぁ、シャロンはやはり公平な男なのだなとルミナは思う。
側近ならば殿下の肩を持つのが普通。だが、シャロンは自分の気持ちにも耳を傾けてくれる。
それが、ルミナにはとても新鮮で、それでいて、堪えていた涙が、先ほどの悲しみを思い出してあふれ出てくる。
大きな瞳から、ぽたりぽたりと大粒の涙が流れる。
堪えきれなかった。
馬車まで耐えろと思っていたのに、不意に優しげな瞳で心配されているのが分かったから。
シャロンの声は、自分を気遣っているのが分かったから。
ルミナは涙が堪えきれず、嗚咽をこぼしながら涙した。
シャロンは慌ててハンカチを取り出すと、ばつが悪そうな顔を浮かべた。
「・・・これ・・・ルミナ嬢に借りていたハンカチ・・・返そうと思っていたんだ。返そうと思っていたもので悪いんだが・・・」
差し出されたハンカチは自分の物であり、ルミナはきょとんとしながらそれを受け取り、その事で、涙が少し止まって笑ってしまう。
「ふふ。ありがとうございます。」
「すまないな・・・その、あっちに座ろう。」
シャロンはベンチにルミナを促し、二人は並んで座った。
柔らかな風が吹き、花の香りが鼻をかすめていった。
ルミナはふぅっと息を吐きながら、シャロンにならば話してもいいかなとそんな事を思った。
全部ではなくても、少しだけ。
「・・・シャロン様。殿下が私を愛すると思いますか?」
「分からない。だが・・・俺の眼から見て言わせてもらえば・・・ルミナ嬢はとても可愛らしいし、優しいし、君と婚約して、愛さない理由も分からない。」
「へ?」
シャロンの言葉に、頭の中が真っ白になって、先ほどの言葉が何回も何回もリピートされる。
「え?」
もう一度考えても、何をシャロンが言っているのか、分からず、ただただ顔が真っ赤になっていくのが分かった。
可愛らしい?
優しい?
愛さない理由が分からない?
シャロンは至極当たり前のように真面目な顔で、ルミナの様子を伺いながら言った。
「ルミナ嬢は、殿下が君を愛さずに他に愛する人が出来ると、思っているのか?」
顔が赤く、熱くなっているのを感じながらもルミナは頷いた。
「それが、君は不安なんだな?」
もう一度こくりと頷く。
「うん。じゃあルミナ嬢が嫌でなければこうしよう?18歳になった時、殿下に好きな人が出来ていたら、君を殿下が愛さなかった分、俺が君を愛するよ。」
「は?」
「大丈夫。殿下には内緒にして、父上に相談してから、内密に話をちゃんと通しておくから。どうだろう?」
「ちょ、ちょっと待ってください!」
ルミナの頭の中はパニック寸前であった。
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