十話
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王城にて、ステファンは机に突っ伏しながら尋ねた。
「アルマ・・ルミナの妃教育はどうだった?」
その言葉に、アルマはお茶を入れ直しながら感心したような口調で答えた。
「まるで妃教育を終えた淑女のようだと感じました。まだ幼いのにもかかわらず、あれほど洗練された姿勢、そして知識も豊かであり・・殿下、本当に彼女は殿下と同じ年なのですよね?」
「あぁ。」
「天才、なのでしょう。帰る前に、失礼かとは思うものの少しばかりテストさせていただきました。私の完敗です。見事なまでの返し。まさかとは思っていましたが彼女は妃教育を受けなくても完璧に妃教育をマスターしていらっしゃいます。一体どうやって学んだのかは謎ですが。」
本来ならば厳しいアルマが、そのように絶讚するなど思っても見なかった。
シャロンはその愕然とするステファンに苦笑を浮かべた。
「殿下の負けですね?」
「丁寧な言葉使いはやめろよ。」
「ふっ。分かった。でもさ、ステファンは一体何をしたんだよ?明らかにルミナ嬢はお前のことを嫌っていたぞ。」
「わからないよ。僕が聞きたいくらいだ。」
その言葉に、アルマは二人にお茶を差し出すと言った。
「殿下、僭越ながら一言。もう少し、ルミナ様ご本人をちゃんと見てはいかがでしょうか。どうにも、殿下は婚約者になり得る令嬢としかルミナ様を見ていないように感じます。」
お茶を一口飲むと、ステファンは唇を尖らせてため息をついた。
「婚約者が決まらねば、王太子になれない。」
シャロンはため息をついた。
「そんな考えを、ルミナ嬢は見抜いてるんだろ。」
ステファンは頭を抱えた。
「あー。一番婚約者として相応しいんだがな。」
シャロンはそんなステファンを見て僅かな苛立ちを感じた。
あんなにも真っ直ぐで、自分を持ち、笑顔が素敵な彼女を、どうしてステファンはちゃんと見ないのだろうか。
今、アルマに忠告されたばかりなのに。
もし自分ならちゃんと彼女自身を見る。
男が道に迷って泣いていてもバカにせずにハンカチを差し出してくれる彼女はとても優しい人だと思う。
最初に目の前に現れた時は、妖精か何かかと本気で思ったほど美しい子だと思った。
そんな彼女が婚約者になったなら、それはそれは素敵なことだろう。
そんなことを考えそうになったシャロンは、慌てて頭を振った。
ダメだ。
自分はそんな考えをもってはいけない。
ステファンの婚約者に一番近い子ではないか。
シャロンは一気にお茶を飲み干すと、ステファンと共にどうしたらいいのか、今後についての話を進めていく。
アルマが用意した甘いはずのクッキーを口に含むと、何故か苦い気がした。
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