モンク
スケルトンマローダーを捉え<ステップインナックル>を使用する。すると、俺のPCはスケルトンマローダーに素早く近づき、右拳を突き出しダメージを与えた。
俺の職業は『モンク』
拳闘術と棍法術を得意としている。
ステップインナックルは拳闘術ツリーのスキルで、初手として重宝している。ターゲットの一定距離内で使用可能で、自動で拳武器の射程内まで素早く近づき、攻撃を繰り出す。ダメージは通常攻撃と大差ないが、間合いを一気に詰められるのが特徴だ。特にPvPでは有効で、拳武器は射程が短く先制されがちだが、そこを補える。
次に通常攻撃を入れながらスケルトンマローダーの背後に回り込んだ。
このゲームには向きの概念があり、ダメージに差が出たり、特定スキルの追加効果の発動条件にもなっている。モンスターの攻撃モーション中は向きが固定されるため、見てから移動を開始すれば容易に背後がとれる。
背後から<オーバーターンキック>を使用する。ダメージに加え、追加効果によりスケルトンマローダーは転倒した。
オーバーターンキックは拳闘術ツリーのスキルで、発動条件を満たせば『転倒』の状態異常を与える。転倒は状態異常の一種で、一定時間一切の行動がとれず、防御パラメータの一つ『回避力』を無効化し『無抵抗』状態となる。無抵抗も状態異常の一種で、防御パラメータの一つ『物理耐性』を無効化できる。
続いて<コラプスナックル><スラッシュ><オーバースローナックル>を使用、いつものコンボを叩きこんだ。
コラプスナックルは拳闘術ツリーのスキルで、無抵抗状態の相手であれば、クリティカルが確定する。クリティカルは防御パラメータの一つ『防御力』を無効化できる。転倒・無抵抗とあわせて防御パラメータが完全無効となるため、常に最大ダメージを与える。
スラッシュは共通スキルで、一次職『ルーキー』のころから使用している。スキル説明文にコンボスキルとあるが意味はない。単純に発生が早く硬直もなく手数が稼げる良スキルだ。
オーバースローナックルは拳闘術ツリーのスキルだが、下位のスキルで二次職『アコライト』のころから使用している。野球の投手のように拳を振りかぶって打ち下ろすモーションで、発生が遅く硬直も長いが、ダメージ係数が高いためコンボの締めに使っている。
転倒コンボの後はしばらく通常攻撃でつなぐ。
他にも攻撃スキルはあるのだが、帯に短し襷に長しの微妙性能で、MP節約のため積極的には使わない。モンクは聖職者系統のため最大MPが高めなうえ『チャクラ』の効果で自然回復量も多い、MPに余裕はあるのだが。
(いつものことだが、もう一押し火力が欲しい。)
俺はモンクに不満をもっていた。
俺がなぜモンクをやっているかというと、チュートリアルで武器にナックルを選択して以来、拳武器一筋で他の職業が頭になかっただけだ。ナックルを選んだのは空手の経験が生きると思ってのことだったのだが、まあ、そこは所詮ゲーム。オンラインゲームが初めてなこともあり、少しでも知ってるものに手が伸びただけかもしれない。
(レンに『グラディエーター』になることを薦められたこともあったが、・・・アレだけはない。)
脳裏に竹刀を担いだ人物がよみがえる。
・・・腹をさすってみたが特に違和感はない。今日は虫の居所がいいみたいだ。
レンが張り替えてくれたハードシールドが壊れるころにはスキルが再使用可能になっていた。すかさず転倒コンボ二週目を叩きこみ、バーストスキル『チャクラバースト』を放った。
バーストスキルは三次職で追加された要素『バーストゲージ』を消費して使用できるスキル。モンクのバーストゲージはチャクラという名称で、時間経過で増加するため、戦闘開始時はMAXでスタートする。チャクラゲージ量に応じて基本ステータスがバフされ、HP・MPの最大値と自然回復にもボーナスがつく。また、ダメージや状態異常時間を軽減する効果もあるが、代償としてチャクラゲージを消費する。聖職者系統は最大HPも防御も戦士系等に劣るが、チャクラゲージの恩恵で前衛が務まっている。
「お疲れ。フィニッシュが攻撃一回分早かったね。」
バフやシールドの管理めんどくさそうなのに、相変わらずよく見てる。
「大分余裕あったな。やっぱ1レベルでも火力変わるわ。」
内心不満があるのだがレンにぶつけても仕方がない。まずはカンストが先だ。
「僕のほうは実感ないけどね。」
「支援職は新スキル覚えるとかないと、Lvアップの実感ないかもな。」
アップデートによりエンチャンターもLv60でバーストスキルが覚えられるから、早くLvをあげてやりたい。
「う~ん、0.1%もないね」
レンの予想を下回っていたようだ、Lv57の時は0.11%くらいはあったが、確認してみる。
「経験値?0.08%ってところか。」
「ざっと1250体かな・・・。」
必要経験値の上昇率がエグイ。Lv50からLv55にあがるのに必要な量と大差ないように感じた。
「1体1分として・・・20時間か。」
「はぁ・・・。」
励ましの言葉でもかけてやりたかったが・・・、俺も同じ気持ちだった。