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ガラガラと音をたて走る馬車を、アーマードモンキー達は執拗に追いかけてきた。
人食いではないとはいえ、固くアルマジロのような皮膚に20匹~30匹の大群では致命傷を負いかねない。
追い付かれては食料を投げ、その隙に逃げたり休んだり、また追い付かれては食料を投げを繰り返し、城壁が見える所まで来てやっと、アーマードモンキー達を振り払った。
正しくは、振り払ったのは王都外縁守備隊であったが。
「検定団の皆さん、怪我した方はいますか?」
「いえ、お陰さまで助かりました。ありがとうございます!」
「そうですか?そちらの寝てらっしゃる方は?」
「「「「「 ヌハッ!! 」」」」」
「どうか、なさいましたか?」
「「「「「イエイエ!何も!」」」」」
「フワァー、よく寝た。・・あれ?騎士様?てことは、もう王都に着いて騎士修行の始まりですか?」
「「「「「 ヌホッハッ!! 」」」」」
「おー!検定で騎士になられた方でしたか!」
「はい!リクと言います!よろしくお願いします!」
「はい。騎士候補となれば我らより高位となりますので、こちらこそよろしくお願いします。私は外縁守備隊のリギアと申します。騎士門まで同行させていいただきましょう。」
「「「「「 ・・・は・・い・・ 。」」」」」
「わ~、ありがとうございます! あのー、リギアさん守備隊と騎士とは違うものなのですか?」
「ええ、かなり違いますよ。主に・・・」
「やべーよ、動きだしちゃったぞ!」
「どうすんだよ!騎士に引き合わせんのか?」
「外縁守備のリギア様って侯爵寄りの出じゃなかったっけ?平民に挨拶までさせてほぼ対等に話してるのに、今から確認しますって通じないだろ?!」
「門から騎士舎までの間に再鑑定して、検定局に報告してそっちから部隊を誤魔化して連絡すれば俺らの事は印象に残らなくね?」
「「「「それだ!!」」」」
「外縁守備隊と巡回検定団の組み合わせとは、何かあったのかね?」
「おー、これは騎士団長良いところで会いましたな。新人騎士をお連れしましたよ。」
「「「「「「ドゥッホッ!」」」」」」
「ほー、それで巡回検定団と共に言うわけか。かたじけない。しかし、恐れ多くもリギア殿直々に送られての騎士団入りとは幸運な奴よ。」
「リクと申します。よろしくお願いします。」
「ほー、しかと型に則ったではあるな。すでに騎士の礼を仕込まれておるとは、巡回の肝いりと言うわけか。」
「「「「「「 ハヒィィ!! 」」」」」」
「騎士見習いリク、確かに預かった。検定団お勤めご苦労であった。」
「「「「「「・・は・い・。」」」」」」
「ロージアス隊長、誰かを付けて見習いを検定局から騎士団の宿舎に送らせてくれ。」
「では、私はこれで。リク君、頑張りたまえ。」
「はい!リギアさん!ありがとうございます!」
「「「「「「見習い決定とか!」」」」」」
「・・ウッワー・・。マズイッテ・・・」
「オレシラネー。隊長責任発生中~~!」
「ヤバイ。マジ、ヤバイ。ドウシヨウ。ドウシヨウ。ドウニモナンネー。」
「フッハッハハハッ!ヒィィヒッヒッィィ~♪」
「あ、ジステムさんが壊れた。」
「うっ・わ・の・せ!うっわ乗せ!退職金に上乗せ~♪決定~!♪あ・と・の・こ・と・なんか、知ったこっちゃねー♪」
「うっわー!この人、最悪だー!」
「では、巡回団経由で新人の騎士団入団を検定局での手続きは終わりました。リク君はこのまま騎士団に配属となりますので、着いてきて下さい。」
「はい!検定団の皆さん、お世話になりました。
あれ?ジステムさんがいないですね・・・。」
「・・あっ・・そうみたいだね・・どうしたのかな・・・ハハ・ハハハハ・・・」
「ご挨拶したかったのに、残念です。感謝していますとお伝え願えますか?」
「うん・・ジステムさんも感謝していると思うよ・・・」
「?そう、ですか?? では、これから騎士としてよろしくお願いします。」
「「「「「・・う・ん・・。・・こちら・・こ・そ・・」」」」」
「あ~あ。行っちゃった。」
「グワァ!どうしよう、どうなるんだろ!」
「隊長、もう、腹括って成り行きに任せましょう・・」
「あ、隊長。局で上乗せ確定の確認とれたので、ワシ、今日付けで辞めますので。サヨウナラ。」
「「「「「えっ!ジステムさん!ちょっとー!」」」」」
「・・・・あの人、あんなに早く歩けたんだ・・・。」