2
「お父さん!お母さん!ハンナ!リヒタ!兄ちゃん、頑張るから!必ず王都に呼ぶから!」
村を離れる直前耐えきれず、馬車から身を乗りだし力の限り叫んでいた。
風にかすれながら、家族の声が聞こえた。
「リク兄ちゃん!」「リク兄~!」
「リク!お前なら出来るぞ!」「リク!体に気を付けて!」
力一杯手を振って、家族の声に答える!
「村の英雄!リク!」「リク、王都の奴等なんかに負けんなよ!」「リクくん、婚約して!」「リク坊、がんばれよー!」「」
村の皆の声が胸に迫るこの景色がこれからの俺の支えの一つになった日だった。
皆が見えなくなるまで手を振り続けた。
「皆、ありがとう。道を踏み外さないように、誠心誠意がんばろう。」
検定団の人達はそんな俺を、まるで気にしていない様子で静かに目をつむっていた。
あー、俺みたいになる奴を見慣れてるんだろうな。
「すみません、うるさくしてしまって。」
俺の謝罪に反応は無く、老齢な検定士のおじさんだけが答えてくれた。
「ファハハハ、よくあることじゃ、気にせんでよいぞ。」
「はい。すみませんでした。」
「よいよい、今までには馬車から落ちたり・・・・」
話好きなじいさんに捕まって、俺の返す生返事にさえ気をよくしたじいさんがずっと話続けた。
おかげで、王都での常識、国や階級からオススメスポット、採取のコツや王都ジョークまで、様々な事を教えてもらえた。
キツかったけど、良い人に出会えたのだと今では思える。キツかったけど・・。
途中、意を決した様に何度か話かけようとする他の検定士を割り込ませぬまま、王都までの4日間が過ぎ、今日が最後の野営になるらしい。
「君はもしかしたら、心安らかに眠れる最後の夜になるかもしれん。夜警はしなくていいので、深くゆっくり寝なさい。特別なハーブティーだ、これを飲むと良い。」
ほとんど話す機会の無かった検定士のリーダーらしき方が、優しさと労りの表情でハーブティーをくれた。
「はい。ありがとうございます!」
そうだ!俺は王都で、選ばれし騎士となるのだ。
過酷な訓練に国を背負って立つ重責!
この検定士さんはそれを知っているのだろう。
だからこその、優しさ、労りの表情に違いない。
それほどの過酷に、俺は耐えられるだろうか?
目をつむると村を出る時の家族の顔が声が甦り、村の皆の笑顔が甦る。そうだ、明日おれわゃ・・・
「リクくん?おい、リクくん!リークーくーんー!!」
「・・・寝たか?」
「・・あぁ、大丈夫だ。ちゃんと効いてる。」
「あー、いよいよ王都についちゃう訳だが・・」
「オレは嫌ですからね!!」
「それは、オレだってヤだよ、でも、誰かが再検定しないと!」
「ジステムさんが責任もってやれば良いじゃないですか!」
「バッ、馬鹿!お前!結果が判ってる検定なんて再検定って言わないだろ!」
「じゃー、団長がやれば良いじゃないですか!」
「そうだ、そうた!」「賛成!異議無ーし!」
「どうせ、検定したならお前が伝えろとか言うんでしょー!嫌ですよ!」
「うっわー!」「あー、あるあるだね!」
「クソッ!これもジステムさんのせいですからね!何そっぽ向いてしらばくれようとしてんですか?」
「・・あぁ・・、あっ、あ!」
「なんすか?とうとうボケましたか!」
「アーマードモンキーじゃー!!」
「うわー!逃げろ!」「馬車を出せ!」「くそ!夜食が!」