1
「では、成人の儀に続きまして、ジョブ検定に移りますので、検定水晶の前にー」
王都からの巡回検定団が、3年ぶりに村に来た。
一応、王国民全員に検定が義務付けられているが、 辺境の町や村 では有用なジョブが発見されることは少くないので、巡回経路もいい加減なもんだ。
訪れた先で飲み食いの歓迎をさせる習わしで、村や町の役付きからしたら、たかりと同じ扱いらしい。
ジョブが付けば王国に有益な人間に成りやすい訳だが、実際には血統による発現が確認されてるので、
本当に期待されていない検定なのだ。
「おぉーー!!騎士がでましたぞ!!」
「へ?俺?」
水晶に乗せていた俺の手を掲げて、検定士が騒ぎ立てた。
おぉーー!!集まった村人達からも歓声が上がった。
「ありがたや、長き信仰の功徳じゃて。1度もジョブを見つけられぬまま引退するところじゃったわい。オヌシ、ワシの列に並んでくれてありがとうよ!」
「・・は~。どういたしまして。」
「やったじゃん、リク!」「おー、我が村から!!」「リクくん、婚約しましょー!!」「リク!」「リク!」「☆!」 「♪!!」
皆に囲まれて、大騒ぎになった。
他の検定士達も一様に驚いている声が聞こえた。
「まさか、そんな!」
「本当に・・、そんなこと・・・!」
ジョブ付き、しかも騎士。
巡回一年間で10人と出ない、大きな城壁持ちの街でも1人出るかでないかという。そこそこ希少なジョブだ。
「そっか~。俺、騎士になれるのか・・・。」
嬉しくて、自然と涙が出てきた。
詳しくは判らないけど、きっと良い賃金が貰えるし今よりずっと良い暮らしを、父さん、母さん、妹たちにもさせてやれるはず。
それが、なにより嬉しい。
だから、家族に囲まれ、友達に応援され、村の皆に祝福されたことが素直にうれしかった。
明日、俺は村を離れる。村を挙っての宴会と家族との別れと早くに呼び寄せるとの誓いを皆で騒いで泣いて笑って、村人として最後の夜を過ごした。
そんな村人達の大袈裟すぎる騒ぎを、検査員達は苦笑いを浮かべて見送っていた。
「なー。」
「・・・」
「なー。」
「・・今は、言うな!」
「・・な~、これって、不味くね?」
「やっば?あの人出立前に、最後だから絶対出すって言ってたし。」
「えー!・・・。不味いって!」
「なー、ジステムじーさん。本当に騎士が出たのかい?」
「もちろんじゃ!ワシの眼が信じられんと言うのか!?」
「い、いや、そう言うんじゃないんだけどさ、何て言うか・・・」
「まー、様子を見よう。明日の朝か・・街への到着前に確認して決めれはいい事だし。」
「出立前の検査~?」
「今、この騒ぎを止めるのは次からの印象が悪すぎるって!」
「どっちもどっちだけど、直に見てる村人が居ない離れたとこでの方が気楽かな。」
「何を!ワシの検査が不服と言うのか!」
記念の日は村人達だけでと、宴会を固辞した清廉な検査団として村人達の好感度を上げて、村の夜は過ぎていく。