03-4
戦いが終わり、程なくして応援が到着した。
最初、遠回りに敵を減らしていたことで、ノゾミの思っていた以上に時間が経っていたようだ。
リーダー格の男が驚く。
「いやあ、もう終わっているだなんて思わなかったよ。斥候の報告は聞いた、そこまで数が多くなかったとはいえ、鮮やかなもんだな」
「え、あれで少ない方だったんですか。まあ、ばらけていて助かったなーとは思いましたけど」
「ああ、勘違いしないでくれ。一人で相手するには十分過ぎる数さ。ただ、やつらが本気で群れたときは、あんなもんじゃない。次があるなら、参考に覚えておいてくれ」
どうやら運は良いほうだったらしい。
ノゾミの役割はあらかた終わりだ。キャラバンのまとめや周囲の安全確保は冒険者たちに任せ、手ごろな岩に腰掛ける。
スチーヴとリーダーが打ち合わせをしている間、ノゾミは少し離れた岩陰でカチカチとヘッドギアをいじっていた。
まずい。非常にまずい。
落馬する直前、一発食らった時からだ。どうやってもモニタが暗転したままなのである。時折ざざっと砂嵐がよぎるが、それだけだ。
初戦でいきなり機器を破損させてしまった。しかも、情報を与えてくれる一番のアドバイザーが。
先ほどの戦闘には支障なかった。モード変更も、マスタリーの起動も問題ない。試しに岩の向こうで談笑しているキャラバンのメンバーをスキャンしてみると、ノイズ混じりではあるが、軽快な電子音も一応鳴ってくれた。
ふうむ、だめになったのはおそらく、モニタの部分のみか。不幸中の幸いと言っていいものかどうか。
頭を抱えているノゾミに、リーダーが声をかけてきた。
「ランバード、キャラバンの皆が移動する準備ができた。さあ、街に戻ろう」
「ありがとうございます、すぐに行きます」
それだけ言うので精いっぱいだ。その様子がよっぽど気落ちしたようにみえたのだろう、リーダーは気遣ってこんな言葉をかけてくれた。
「帰りの護衛くらい俺たちに任せて、キャラバン連中と一緒に馬車の中で休んどきな。スチーヴから聞いたよ、炎でゴブリンを順に焼き払っていったんだろ? ケガはなくとも疲れはひどいはずだ」
ん? ノゾミはそこでやっと、ある違和感に気付く。
「炎って、あの、驚かないんですか?」
「驚くさ。なんたってあの距離の敵を仕留めるんだ。それに傷口も小さかったな、あんな炎の使い方をする奴を見るのは初めてだ。――じゃ、早く乗りな。置いてくぜ」
いや、そうじゃない。レーザーの精度について驚いているのはわかる。しかし、その口ぶりだとまるで――
ノゾミが頭の中を整理しているうちに、リーダーはすでに冒険者の連中に紛れてしまっていた。