表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Future in an oblong box  作者: 鳴海 酒
第13話 黒の女王のマーチ
67/91

13-2


 レッドスペシャルを受け取った二人は、数日間の休みを取る。今回の旅は長丁場だった。体も装備も点検が必要だった。

 以前のときとは違い、同じ宿住まいの二人だ。休みといっても顔を合わせる。


 こちらからは何も言わなかったが、ノゾミは気付いていた。メドウスはずっと何かを考えている。

 何も知らない普通の人からすると、思い詰めているように見えて、心配されただろう。最近の彼の動向を知っている人間なら、疲れているんだろうと放っておくかもしれない。

 違う。

 ノゾミは覚えている、悪友のリックがよくあの顔を見せていたことを。あれは負けが込んだ時のリックが、残りのチップを全てベットするときの顔だ。

 ノゾミは思った。この愛しい相棒が賭け事で負けて帰ってきた時は、せめて最後に残った酒代くらいは自分が守ってやろうと。


 それから数日後、メドウスはノゾミを部屋に呼んだ。開口一番に言う。

「パーティーを解消してもらえないか」

 ノゾミは、自分が何か勘違いをしていたのだろうかと思い直した。普通の人が感じる通り、メドウスはどうやら思い詰めていたらしい。

「いやよ」

「ありがとう、そう言ってもらえて嬉しいよ。でも、ノゾミに迷惑はかけられないから」

 そういうやりとりはいいから、早く理由を話せとノゾミは急かす。


「王城に行って、女王陛下に会ってみたいんだ」


「ホワイトさん、ですか?」

 ラトルが確認する。

「うん。女王様は、たぶん君たちの同郷だと思う。そして、お師匠様が殺されたことについても、何か知っているんじゃないかと思ってる」

 メドウスらしい控えめな表現ではあったけれど、彼が口に出し行動に移すということは、はっきりとした確信があるということだ。

 容姿が瓜二つなだけではない。即位した年代と、ギルドの設立時期。ギルドの初期メンバー。ヴィエントの奥の部屋で見た、日記の内容。日付。オウロ山遺跡が発見された時期や経緯。果ては魔術師ゴードンの本が書かれた時期まで。

 荒唐無稽な物語が事実だと想定してみると、全ては薄ぼんやりとつながっていく。


 確信に至る証拠は、まだ見つけていない。

 しかし、矛盾点も何一つ出てこない。これだけばらばらな部品をかき集めているのに、どうしても()()()()が見つからない。

 メドウスはそれを考えている。


 ヒントを持つのが女王のみというのは、厄介だ。それも隠し事を聞きに行こうというのだから。

 メドウスはすでに王城に忍び込む覚悟をしている。忍び込むというスマートな言葉で収まるかは別として。


 ノゾミは軽く息を吐く。芝居がかった口調で煽る。

「オーケー、わかったわ。メドウス、あんたは分不相応な武器を手に入れた勢いで、クーデターを起こそうってわけだ。穴を穿ちたいのはジブラルタルの岸壁? それとも貴族社会だのとかいう、形のないあやふやなもの? 後者だとすると重症だわ」

 慌てるメドウスは、それを文字通り受け取る。

「ノゾミ、僕の話を聞いてたかい? そんなたいそうな話じゃない、個人的でささやかな理由のために行くんだ。ただ、場所が場所なだけさ」

 最後の方は絞り出すようだった。ノゾミは心から楽しそうに、にんまりと笑う。

「だからこそ、ついていくわ」

「危険だよ」

「私だって女王様に用事があるもの」

「ゲームのことかい?」

「そうね、そうかもしれない。明日までに考えておくわ」


 メドウスとノゾミは作戦を考える。そこへ黙って聞いていたラトルも加わる。

 王城のもとになった古城は、入植時にはすでにこの地に建てられていた。だだっ広く、現在もところどころで改修工事が行われている。平和な時代が続いていることもあり、警備は大したことがない。城自体への侵入は容易いだろう。

 問題は王族の居住区、こちらはさすがに厳重だ。

 バルサラの残したノートに城内の簡単な見取り図があった。こうなることを予感していたのかもしれない。細部に関しては出たとこ勝負か。

 見つかったら重罪だ。裁判なんて気の利いたものがあるわけもなし、カッコーの巣へと直行だ。牢番を殺して脱出なんて強硬手段に訴えたくはないが、捕まってしまえばそれが唯一の方法となるだろう。願わくば牢の中に、格子のない窓があらんことを。

 

 ノゾミは考える。ノットマンとマジックモーメントの力をフルに使えば、自分一人ならば何とかなるだろう。万が一見つかったとしても、その場から逃げ出すことくらいはできるはずだ。

 では、メドウスと二人なら?

 あてはある。

「酒場に行くわ、ついてきて」


 ノゾミは入口から店内を見渡す。しばらくきょろきょろして、茶色のコートを見つける。

 もしいなかったらギルドで聞いてみようかと思っていたが、一件目で見つけられるとは、運がいい。


「やあ、飲んだくれのお兄さん。少し時間をいただけないかしら?」


 ノゾミはグレンに声をかける。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ