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Future in an oblong box  作者: 鳴海 酒
第10話 ドラゴンの島へ
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10-2


 ラトルの思考の出発点は、マジックで発生するエネルギー量が多過ぎるという疑問だった。

 マジックとはマナを放出する技らしい。

 マナという未知のエネルギーがあるのは、まあいい。そういうものだと考えよう。もしかしたらエネルギー効率がすこぶる良い物質なのかもしれない。ただ、それを前提としても、あんなにぽんぽん放出していたら、すぐにマナが切れるのではなかろうか。

 メドウスにそのことを質問する。回答は思った通りだ、マナ切れという現象は確かにある。

 連続してマジックを使い続けるとおちいる状態で、そうなるとマジックはもちろん、マジックモーメントもうまく使えなくなる。その場合、時間が経って回復するのを待たなければならない。何でも、空気中に漂うマナを吸収して回復するとのことだ。


 ラトルは思わず口に出してしまう。

 そんなバカな、と。

 これはマナ自体のエネルギー効率だとかそんな話ではなく、足し算と引き算の問題だ。放出と吸収の収支が釣り合っていないのだ。

 ガス欠を起こしたとするなら、空気中に漂っている程度でとても回復するはずがない。逆にその程度で回復するなら、そもそもガス欠など最初から起こさないだろう。


 ラトルは考える。マジックで放出されているのは、本当にマナという物質なのかと。マナは起爆剤やエンジンのような存在であり、放出されるエネルギー自体は外部から取り入れているのではないかと。

 例えるなら、ストーブとエアコンの違い。例えば空気中の熱量を集め、それを放出しているとしたら?

 そうだ、それならわかる。

 では、どうやって熱を集めている? 放出の仕組みは?


 メドウスの言葉を、図書館の書物の一片一片を反芻していく。そうだ、メドウスは言っていた。

「マナ同士は磁石みたいに引き合うから」

 死ぬ者から生きる者へとマナは引き付けられる。しかし、それは死の瞬間のみだ。マナを持たない者が死体やゴーストに触れても、マナは手に入らない。

 なぜ手に入らない? 直接触れているのに、少量が残留することすら無いなんて。

 もしかして、何かと反発しているから? 


 メドウスはマナを感じて敵の接近を察知していた。マナを持つ人間は、その力を感じることができるらしい。

 マナが空中を飛散しているのだろうか。それなら、空気中のマナを吸収して回復するのもわかる。

 いや、他にも仮説は考えられる。マナが力場を作っている場合だ。


 今までの話を精査していく。ポイントは、――引力、斥力、そして力場。

 この三つのヒントをそろえた時、ラトルは思わず吹き出した。なんだ、よくよく知っている力と似ているじゃないか。

 ケタケタと小気味よい笑い声がインカムから届く。

 メドウスは嬉しそうに聞いてくれた。

「何がわかったんだい、ラトル?」

「マナのことですよ、やっとわかったんです。いえ、正体はわかりませんけどね、あたしたちも似たような力をずっと使ってたんだなーって思って」

 よくわからないまま、微笑を浮かべて聞いてくるメドウス。ラトルは一つの単語を教えてやる。もったいぶって、仰々しく。わざと地球の言葉で難しく言ってやる。


「マグネティック・フォースです」


 眉を寄せるメドウスに、意地悪そうに「磁石の力のことですよ」と付け加えてやる。

 もちろんそのものではない。マナの正体は依然不明のままだ。

 ただ、似た特性を複数持つならば、その他の特性が似ていても不思議はない。つまり、使用方法や応用についても。




 そして、例の二本の杖の実験でついに確信を得たのだ。

 いくつもの実験を踏まえ、ラトルがドラゴンの牙から作り出そうとしているのは、レールガンだった。既に青写真はできている。

 ノゾミは何も言わないだろうが、一応言い訳も用意してある。正体不明のやつらに対抗するなら、強力な火器は絶対に必要です。奴らの想定外の武器が。

 ただそれでも、ラトルの動機は純粋な好奇心のみだった。そう、人工知能にだって好奇心はあるのだ。計算だけでなく、実験と観測を経て、科学は発展してきたのだから。


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