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92話 キューティーバニー

 翌朝、エドモンドさん達と軽めの朝食を取る……会議室で。


(まだ眠い……)


 若干2名は、朝からこの間同様、ステーキをぺろりと平らげた。

 

 この後、時田さんとニールさんを除く皆で、この前ミオンが服をオーダーしたお

店『ジャネル』に向かう。


 本来、2週間かかるはずだったミオンがオーダーした服は、エドモンド王の肝い

りで、わずか1週間弱で仕上がったそうだ。


(流石って言うか……王様の権限ってすごいね)


 前回同様、王城から30分くらい歩いたら、白い漆喰の壁の木造の2階建の建物

『ジャネル』に到着した。


 店に入りミオンは早速フィッテングルームで試着するため2階の部屋に上がって

行った。ミオンを見送った俺達は、お店1階にあるウエイティングルームで、お店

の人が出してくれたお茶を飲みながら、ミオンの着替えを待った。


 約10分くらい待っただろうか、2階のフィッテングルームからミオンが降りて

来た。


「じゃーん!」


そう言って、俺達の前で1回転して服を見せるミオン。


「「えっ!」」


((((???))))


 シノブとゲキは絶句し、ソフィーを初めとする異世界のメンバーは、頭に”?”を

浮かべていた。


 異世界組が頭に”?”を浮かべるのも無理はない、ミオンの格好は見るのが初めて

だろうから……。


 そう、70’のアニメのヒロイン(のちに何度もリメイクされているが)。

『キューティーバニー』だった。


 一見、所謂バニーガールの姿だが、黒い衣装のお臍の部分がハート型にくり抜か

れていて、ピンク色のステッチで飾ってあり、足には網タイツで膝下まである黒い

ブーツを着用、当然頭には白いウサギの耳が付いて、お尻には白く丸いウサギの尻

尾付き。


 また、首には白字で黒の縁取りがされ真ん中にピンクのハートマークが付いたチョーカーが付いている。


 この服は、チョーカーに仕込んであるハート形の魔水晶の働きで、服を用途で変形できる。


 因みに、本来の『キューティーバニー』はその体にある空間元素固定マシーンで

7つの変形をするのだが。


ナースバニー

バニー七変化の1形態。看護師の姿になり、治癒能力に長ける。(精神的

な治療も含む)


アイドルバニー

バニー七変化の1形態。アイドル歌手の姿になる。歌やダンス、の能

力に長ける。


キャビンアテンダントバニー

バニー七変化の1形態。キャビンアテンダントの姿になる。


フォーカスバニー

バニー七変化の1形態。カメラマンの姿になる。情報収集能力に長ける。


プリンセスバニー

  バニー七変化の1形態。お姫様の姿になる。


ライダーバニー

バニー七変化の1形態。女性ライダーの姿になる。運動神経全般に長ける。

オートバイなどのあらゆる乗り物を乗りこなす。


キューティーバニー

キューティーバニーの戦闘形態。武器はレイピアと腕輪が変形しブーメラ

ンになる。


 オリジナル(アニメ)の『キューティーバニー』はこう言う能力なのだが、ミオ

ンの今回注文した服はオリジナルと大きく2つ違うところがある。



 まず一つ目は、オリジナル(アニメ)の方は7つの形態にしか変身できないが、

ミオンの服は、それ以外でもミオンがイメージをすればいろんな服装にチェンジ出

来る。


 二つ目は、オリジナル(アニメ)のように服装が変わっても、その能力は変化し

ない。


 つまり、格好だけ……ってことだ。


それでも、ご満悦のようで『バニーフラッシュ!』と叫んではいろんな格好に変身して、皆に見せびらかしていた。


(しかし、魔法の世界はある意味、ミオンの欲望を満たしてくれる世界だともいえるな)


 そう思いながら、1人りファッションショーを繰り広げるミオンを見ている俺であった。




◇◇◇◇◇





 お金を支払い店を出る。

お店に支払ったのはこないだ手に入れた白金貨1枚(100万円)なのだが……こ

れが高いのか安いのかよくわからないので、後でニールさんに聞いたら……。


 実はミオンの服……本当は白金貨5枚(500万円)らしい、王の命令でわずか

1週間足らずで仕上げたのもあるが、もともと最低白金貨3枚(300万円)は、

掛かるそうで、王は俺達に内緒で足らない分をこっそりお店に支払っていたそうだ。


 だろうね……いくらなんでも特注オーダーの上に魔法付与の服だものね。


それはさて置き、こないだ変な奴に邪魔され、挙句アントマンに襲われて、ろくに

街の散策が出来なかったので、クレアさん達の案内で、街を見て回った。


 『ジャネル』からしばらく歩くと貴族エリアの端に到着する。

貴族エリア、平民エリアと言っても別に高い塀があったり、屈強な騎士が門番をし

ているって言うようなことはない。


 別に境界線もなく、ただ、街並みが少し変わるかな?貴族エリアは言うなれば、

神戸の異人館のような洋館風の家や店が立ち並ぶ落ち着いた街並みだが、平民エ

リアの方は、雑多な建物が乱立する街並みって言った方が良いかもしれない。


 前回は、貴族エリアだけの散策だったが、今回はこの先の平民エリアの一部まで

見学しても良いと王から許可をもらった。


 この前、ゲキ達がお茶をしていた店は、この貴族エリアの方にあり、白い漆喰の

壁、屋根には風見鶏が付いているしゃれた作りの店だ。


 今回はこの店に立ち寄るのではなく、もう少し先の”勇者広場”に向かう予定だ。


 平民エリアに入ってしばらく歩くと、このエリアでひと際目立つ建物が目に入っ

て来た。


Treasure Hunter(冒険家)協会の建物……ゲームで言う所の冒険

者ギルド会館。


 Treasure Hunter(冒険家)の登録や仕事の依頼、はたまた、訓

練所なんかもあるらしい。


 大きな石作の壁で、3階建ての大きな建物……学校の体育館3つ分はあろうかと

言う大きさだった。


俺達は、別に冒険者……いやこの世界では冒険家になるつもりはないので、ここは

スルーする。


 しばらく、歩くと大きな円形の道?っていうより、所謂環状交差点東西南北に延

びる8本の道路を円形のスペースを介して接続したもので、この円形のスペースの

真ん中には中央島と呼ばれ、その中央党部分には高さ6mの”勇者”の像が立って

いる。馬車や馬はこの”勇者の像”周りの環状の道路(環道)を一方向に(右側通

行なら反時計回り、左側通行なら時計回り)通行している。


 先程までの閑静な街並みから急に都会らしい感じになり、多くの馬車や、馬、人

などが行きかう、にぎやかな場所だ。


「はぁ~ん?まんまだね」


とミオンが広場(交差点)中心にある銅像を指差し言った。


「「「ああ、そだな」」」


ミオンの言葉に、俺、ゲキ、シノブも口あんぐりでそう返事した。


 そう、はっきり言ってこの銅像、所謂ファンタジー系ゲームに出て来る勇者そのもの冠をかぶり、鎧を着け天に剣をかざして立っていた。


 その様子に、クレアさん、エドナさんが、何がおかしいのかクスクス笑いだし、クレアさんが俺に言った。


「だいぶ……本物と違いますね」


と言いながらまたクスクス笑い出す。


「「「「「「「「確かに!!!!!!!」」」」」」」


 俺以外の全員が俺と銅像の勇者を見比べて、声をそろえて言った。


(ねぇねぇ、それどういう意味?皆)




◇◇◇◇◇





 広場から南西方向に延びる道をしばらく歩き、その道の1本西の裏通りにあるお

店に入った。


 ここは、アイーシャさんがこの国の騎士になりたての頃によく来たお店だそうで、お店の名前は『パスティッチェリーア』店主は、デスロ同盟国の中のテネアポリス出身のデニーロさんイーシャイナ王国の元平騎士だったそうだ。

渋めのイタリア系のおじさんって感じの人で、この人が作るパスタ料理が絶品だと、アイーシャさん、クレアさん、エドナさんが言うのでこの店に来たのだった。


 平屋の石を積み上げたような壁に、木の屋根と言う素朴な店の外観で、店の中は

年季の入った木で構成された。なかなかノスタルジックな感じの店。


 店に入ると数人の客が木製テーブルで食事をとっていた。


「いらっしゃい~」


俺達がお店に入ると、アルバイトらしき白人系人属の女の子が言った。


 その声に奥の厨房に居た店主が顔を上げ、俺達を見て、俺達の中にアイーシャさん、クレアさん、エドナさん3人を見つけると、厨房からわざわざ出てきて3人に近寄り声を掛ける。


「おい、アイーシャにクレア、エドナじゃないか、久しぶりだな~お前たち」


「おひさしぶりにゃん」


「マスターおひさしぶりぃ~」


「おひさすぶりですデニーロさん」


店主の言葉に、アイーシャさん、エドナさん、クレアさんが答える。


「今日は……ひ……いや友達も連れてきました。」


と。ぎこちないクレアさんにアイーシャさんが言葉を付け加える。


「ここのアレは絶品にゃん、だから友達も連れて来たにゃ~」


アイーシャさんの言葉に、店主のデニーロさんは嬉しそうに言った。


「そうかい……そりゃ嬉しいねぇ~」


そう言いながら俺達を見て、


「8人か……ここじゃ狭いから、奥使ってくれ~」


そう言って店員の女の子に目配せする。


「あれ~?この店に奥……ってあったかにゃ?」


デニーロさんの言葉に首を傾げるアイーシャさん


「ああ、表向きは内緒にしてるからな」


とウインクしながらアイーシャさんに言った。




◇◇◇◇◇





 俺達は店員さんの女の子に案内されて奥……の部屋に着いた。

ってか、ここ、正確には店の奥の地下室だった。

厨房の裏に階段があり、地下室へと通じていた。


 何やら秘密めいたことに使うのかと思っていたら、デニーロさんが言うにはこの地下室はTreasure Hunter(冒険家)に成ったり、商隊を組んで各地を回る商人になってここを訪れる昔の騎士仲間達と昔話をしながら飲むのに使っている部屋だと言うのだ。


 特に、商人になった者は、いいのだが、Treasure Hunter(冒険家)ってのは、一攫千金を狙う荒くれ者が多く、昔の騎士仲間が連れてくるTreasure Hunter(冒険家)のパーティーの仲間ってのも荒くれ者が多いので、そんな奴らが酒を飲み、店で暴れられると困るってことで、この部屋を作ったらしい。


(なるほど……)


それは兎も角、部屋の真ん中にある10人以上座れそうな丸いテーブルに着いた俺達は、店員の女の子に注文する……ってかアイーシャさんが注文した。


「いつもの6つと大盛り2つにゃ」


そう言うアイーシャさんに店員の女の子が聞く。


「お飲み物は?」


「白クレマン8つ……ってセイアにゃん達はお酒がダメだったにゃ……」


と考えこむ。


 確かに、この世界では飲み物と言えば大抵お酒である、お酒以外だとお茶位くらいしかない(例外的に幼子が飲むために果物を絞った所謂ジュースはある)。


 俺は、”水でいいよ”って言おうとしたんだけど、その前に少し考えたアイーシャさんが、手招きし、店員の女の子を呼び寄せると女の子の耳元に手を当てなにやら”ごにょごにょと何か言うと……。


 店員の女の子は、元気に


「かしこまり~」


と言って頭を下げて出て行った。


(何を頼んだのだろう?)




◇◇◇◇◇





しばらくして、店員の女の子が料理と飲み物を運んできて、それぞれ席の前に料理と飲み物を置いてくれた。


「アッチューガのパスタで、今日のは夏野菜のアッチューガのパスタになります」


笑顔で言いながら、頭を下げて部屋を出て行った。


「アッチューガって……」


「ああ、アンチョビのようだな」


ミオンが言いかけたのを俺が代わりに言った。


 トマト、ナス、スライスした玉ねぎともちろんアンチョビが入っている。

ゲキによるとそれに、オリーブオイルニンニクのみじん切りとパセリも入ってるってことだった。

 

 料理と共にもって来られた飲み物は、異世界のメンバー、ソフィー、クレアさん、エドナさん、アイーシャさんは白クレマンが置かれており、俺達の前には見慣れない緑色の液体少し泡が出ていることから、この世界では珍しい炭酸入りの飲み物だとはわかるけど……。それに俺達の飲み物の上の方には白いもので蓋をされているように見えるけど……ってこれ氷だな。


「これは?」


「飲んでみればわかりますにゃ、特にセイアにゃんは気に入ると思いますにゃ」


液体の上部表面の蓋になっている氷の真ん中には麦の茎ってかこれストローか!

 

 俺、ミオン、ゲキ、シノブは恐る恐るそのストローに口をつけると……。


「えっ、これ」


驚き、そう言いかけた俺に続き4人は同時に叫んだ。


「「「「コーラ!」」」」


その俺達のリアクションをニヤニヤしながら見つめアイーシャさんが言った。


「ペンバーって言うにゃ」


 製法はよくわからないが、デスロ同盟国の中のテネアポリスで発明された飲み物だそうだ。

本国では常温で飲まれているそうだが、店主のデニーロさんが氷系魔法が使える騎士だったそうで、たまたまこの”ペンバー”を冷やして飲んでみたそうだ。

すると、とても飲みやすかったので、これをお店で出してみると、なかなかの評判になり、特に夏はこの飲み物目当てに来るお客もいるそうだ。


 因みに、異世界組が飲んでいるの”白クレマン”はスパークイングワインの白ってことだった。ミオンがそれも飲みたいって駄々を捏ねたが、それを俺とゲキ2人係で説教して食い止めた。


 あっ、そうそう肝心の夏野菜のアッチューガ(アンチョビ)のパスタは、アンチョビの塩気が野菜とよくマッチしていてとても美味しかった。


(今度、うちのかあさんにも教えて作ってもらおう~)


キューティーバニーは、もちろん○ューティーハニーのことです。

また、劇中のキューティーバニーの設定は、○ューティーハニーFの変身設定を参考に

書いてあります。

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