88話 砦救出作戦4(ブレイブチームの奮戦)
マクシムス将軍が、徐に手に持っていた”グラン・クラッシャー”をまるでハン
マー投げでもするように低い体勢でぐるぐると回りながら投擲した。
「ふん!行け~グラン・クラッシャー・ボルテックス!」
投げられた”グラン・クラッシャー”は、回転しながら空中高く飛んだかと思うと、
空中で回転する”グランクラッシャー”の下に竜巻が起こり、迫ってきた魔王軍の
内、前衛に居たゴブリントロール25体とホブゴブリントロール14体を竜巻が襲
い空中高く巻き上げて行った。
竜巻に巻き上げられたゴブリントロールやホブゴブリントロール達は竜巻の物凄
い風で、体が次々と千切られて行った。
それを見てクレアが、剣を抜き、竜巻に向かって全力の炎を放つ。
「ソードオブファイヤー マキシマム!」
クレアの放った炎は見る見る竜巻に吸い込まれ、ゴブリントロールやホブゴブリン
トロール達の千切られた肉片を焼いて行く。
「ふう~」
炎を放ったクレアが、”ガク”を膝をついた。
膝をついたクレアにフェリクス王子が近寄り、腰の剣帯に括り付けた袋から、魔
力の実を1つ取り出してクレアに渡しこう言った。
「さぁ、これで魔力を回復しなさい」
王子にそう言われ、魔力の実を受け取ると、頭を下げて言った。
「恐れ入ります王子」
そう言って魔力の実を一口、がぶりとかじるクレア。
クレアにかじられた魔力の実は”パッ”と消え、その直後クレアの魔力がみるみる
回復した。
数値的には、クレアの魔力の3分の1の魔力だが……。
クレアの魔力が回復したのを見たフェリクス王子は、すぐさま魔物達の方に振り
返り、剣を抜いて左手で剣の刃の部分を扱くように撫でだした。
扱かれた剣の刃は、見る見る青白い光に包まれ……やがて剣の刃全体が光りだす
と、王子はそれをくるっと回して、正眼に構えたかと思うと、そこから剣を寝かせ
て水平に剣を振りながら、こう叫んだ。
「氷結ブレード!氷結フラッーシュ!」
ゴブリントロールやホブゴブリントロール達の側に居て、竜巻に巻き込まれなかったアントマン達20体を一瞬にして凍らせた。
凍り付いたアントマン達に向け、すぐさまアイーシャが如意棒を抜き、それを伸ばすと、伸ばした如意棒で、横殴りして、次々に凍り付いたアントマンを砕いて行く。
それをまじかで見たイーシャイナ王国第一騎士団の重装歩兵や騎兵達が思わず声をあげる。
「「「「「「「「「「お~!」」」」」」」」」」
◇◇◇◇◇
兵士達が、将軍や王子の戦い方に感心していると、先程Unicornに吹っ飛
ばされて気を失っていたサンダーコング3体が起き上がり、マンティス(大カマキ
リ)6体を引き連れて、こちらに迫って来た。
第一騎士団団長アランがそれを見て、サンダーコング1体に向け腰の銃(水鉄砲)を抜いて叫んだ。
「ウオーターボール!」
そうアランが叫ぶと、その水鉄砲から、直径2mはあろうかと思われる水の玉が形
成され、向かってくるサンダーコング1体に飛んで行き、サンダーコングの体を包
み込んだ。
大きな水の玉に閉じ込められたサンダーコングは、しばらく息が出来ずにもがい
ていたが、すぐさま胸を両拳で叩きだす。
サンダーコングは、ドラミング(超音波)で、自分を閉じ込めた水の玉を吹き飛
ばした。
「なっ!なに―――!」
アランはそう驚き声をあげる。
その声を聞いて、フェリクス王子はサンダーコング達に氷結フラッーシュを放つ。
「氷結ブレード!氷結フラッーシュ!」
王子の放つ、氷結フラッーシュを浴びて、3体のサンダーコングと1体のマンテ
ィス(大カマキリ)が”ピキ”と凍り付いたものの、5体のマンティス(大カマ
キリ)は背中の翼でとっさに跳んだため攻撃が外れた。
凍り付かなかったマンティス(大カマキリ)が、大鎌を振り上げ王子達を襲おう
と迫って来た。
ピンチを迎える王子達……。
だが、その時であった……。
遠くから砂煙を上げながら、王子達の所に迫ってくる巨大な物体。
その物体は、王子達を今まさに襲おうと、迫るマンティス(大カマキリ)5体と
、凍り付いたサンダーコング3体を次々と跳ね飛ばし、王子達の前で止まった。
◇◇◇◇◇
―――『トレーラー』内―――☆
時間は少し戻ります。
「シノブ!そのままサンダーコングを跳ね飛ばして!」
「 Roger!Missシラトリ」
ミオンの言葉にそう返事をしてシノブはアクセルを踏み続けた。
「ソフィー!シールド全開!」
「はい!」
ミオンにそう返事を返したソフィーは、指揮所の自分の席で前にあるレバーを奥に
倒して、自分の目の前にある魔水晶を強く両手で握り、魔力を注ぎ込む。
トレーラー全体に魔法の障壁が張られ、スピードを上げ、フェリクス王子達に迫
る5体のマンティス(大カマキリ)共々凍り付いたサンダーコング3体と1体のマ
ンティス(大カマキリ)を次々に跳ね飛ばした。
”バキーン”
そして、トレーラーは王子達の前で停車した。
トレーラーに跳ね飛ばされた凍り付いたサンダーコング3体と、1体のマンティ
ス(大カマキリ)は、粉々に砕けたのは言うまでもないが、大鎌を振りかざし王子
達を襲おうとしていた5体のマンティス(大カマキリ)も、”グチャ”と言う音と共にトレーラーに跳ね飛ばされた衝撃で見る影もなく潰れていた。
そして、すぐさまミオンは、指揮所の自分の席でトレーラ上部に備え付けられた回
転塔を操作して、20ミリバルカン砲とそれに付随して左右に搭載されているAG
M-114ヘルファイア空対地ミサイルを魔王軍に向けると一斉発射した。
「Fire!」
ミオンの掛け声と共に、20ミリバルカン砲が火を噴き、魔王軍の魔物やアントマ
ンに弾丸を雨あられの如く、降り注ぐ……。と同時に左右3発づつ、合計6発のA
GM-114ヘルファイア空対地ミサイルが魔王軍に一斉に襲った。
”バリバリバリ~””ドッカーン”
魔王軍が爆炎に包まれる。
「これでどうよ!」
と、どや顔で言うミオン。
◇◇◇◇◇
爆風で、舞い上がった砂煙であたり一面真っ白になっていたが、しばらくして、
それが収まり徐々に視界が開けてきたら……。
「えっ!なにそれ~」
指揮所で声をあげるミオン。
20ミリバルカン砲の弾丸の雨と、ミサイル攻撃で、ゴブリントロール40体と
ホブゴブリントロール10体が灰になっていたが、20体のゴブリンマジシャント
ロールが魔法により、障壁を張っていたので、4体のゴブリンクイーンと20体の
ゴブリンマジシャントロール、そして、ゴブリントロール40体とホブゴブリント
ロール10体に加えて、200体のアントマンが今だ健在であった。
それをトレーラーの食堂兼作戦室のモニターで見ていたゲキは、指揮所のミオンに
無線で言った。
「俺達も出る!」
そう言って、エドナさんを伴い、トレーラー後部のガレージのシャッターを開け飛び出していった。
それを運転席で聞いていたシノブも
「僕も出るよMissシラトリ」
そう言って、運転席から指揮所を通り抜け、トレラー後部のガレージで、マジック
ボックス小を背負い外に飛び出して行った。
その様子にミオンがこう言う。
「んじゃ、久しぶりにブレイブタンク発進!と行きますか」
そう言うと指揮所のコントロールレバーを握った。
◇◇◇◇◇
トレーラー後部ガレージ部分から、スロープがせり出し、ブレイブタンクが、”
キュルキュル”履帯を唸らせゆるゆると降りて来た。
「シノブ、エドナさん、あの一点を撃ち続けられるか?」
とゲキが、ある一点を指差し、シノブとエドナに聞いた。
「Of course!」
「できるんじゃないかな~」
と答える2人にゲキが頷くと、シノブは背負っているマジックボックス小を降ろし
、中から対物狙撃銃であるバレットM82A1を取り出し構えた。
エドナも弓を構える。
"ズキューン””ガシャ”"ズキューン””ガシャ”
シノブはゲキが指差した、4体のゴブリンクイーンの一番右端のゴブリンクイ
ーンの胸の位置に、次々と12.7mmの弾を叩き込む。
と同時にエドナも弓矢を同じところに叩き込んだ。
「ライトニングアロー!」
初めは、魔法の障壁に弾かれていた、弾丸と矢であったが、2人が4~5発立て続
けに打ち込んでいると……。
”パキパキパキ”
と障壁にひびが入りだした。
「今だ!将軍!」
ゲキが自分の左隣に居たマクシムス将軍に声を掛ける。
「おうよ!」
そう言ってマクシムス将軍は、グラン・クラッシャーを放った。
「行け~グラン・クラッシャー!」
将軍の放つグラン・クラッシャーは、ゴブリンマジシャントロールが張る魔法障壁
のひび割れた部分に命中した。
”ピキピキピキ”
”パリ~ン”
グラン・クラッシャーが当たった衝撃で、障壁全体にひびが入り……やがて障壁が
砕け散った。
障壁が破られ慌てふためく、ゴブリンマジシャントロール達、急いで障壁を張り
なおそうとしたその時だった。
ゲキは、すぐさま空中高く飛び上がり、回転しながら斬馬刀を投げつける。
「撃心流奥義の1つ 斬馬刀大車輪!」
ゲキが、放った斬馬刀は”クルクル”と回転しながら、4体のゴブリンクイーンの
胸のあたりを次々に切り裂いて行った。
「「「「ギャーーー!!!!」」」」
4体のゴブリンクイーン達はそう悲鳴を上げて倒れて行った。すると……。
20体のゴブリンマジシャントロール、そして、ゴブリントロール40体とホブゴ
ブリントロール10体が急に動かなくなり……やがて、その場に次々と倒れて行っ
た。
「やはりな」
その様子を見てゲキがそう呟く。
◇◇◇◇◇
―――オブリヴィオン側―――☆
一気に4体のゴブリンクイーンを倒され、200体のアントマンだけになったの
を見て、サディコ将軍が苦虫をかむような表情で言った。
「おの~れ~、奴らがあれさえ使えば形成が逆転できるものを……」
そう言いながら、ゲキ達を睨むサディコ将軍。
「どうしてもあれを使わぬと言うなら、使わざる得ないようにしてやる」
「Transfer!(転送)」
サディコ将軍がそう言って三又の槍を掲げると……
大きなうねうねした物体が現れたのであった。




