77話 電風の丘ダンジョン13(プランB)
「エレクトリックマシンガン!」
「スピンシールド!」
「ライトニングアロー!」
「行け!グラン・クラッシャー!」
「撃心流奥義の1つ 真空切り!」
「氷結ブレード!氷結フラッーシュ!」
「電空ぅ~ブーメラン!」
俺、クレアさん、エドナさん、マクシムス将軍、ゲキ、フェリクス王子、そしてミオンが技を繰り出す。
ちなみに俺が叫んだ”エレクトリックマシンガン”はミオンが命名した。
それに加え、シノブはいつも使ってるXM8と言うライフルではなく、マジックボックス小から、別の大型ライフルを取り出し、発砲した。
”ガシャ””ズドーン”
可なりの反動があるらしく、シノブの体が打った後少しぶれるようだ。
後でシノブに聞いたら、このライフルは、バレットM82A1。
バレットM82A1
設計・製造 バレット社
種別 対物狙撃銃
口径 12.7mm
ライフリング 6条右回り
使用弾薬 12.7x99mm NATO弾
装弾数 10+1発
有効射程 2,000m
と言う大型ライフルで、ヘリコプターや装甲車などにも損傷を与えられる銃らしい。
そして、アイーシャさんは、吹き矢で攻撃する。
”シュッ”
しかし、俺達が攻撃したどのハヌマーンも、攻撃が当たると同時に”ぼわっ”と
煙を上げ消えて行く。
「くそ、外れか!」
そう口にする俺に王子が冷静にこう言った。
「では、もう一度」
その言葉に頷き、皆で攻撃を仕掛けようとした時、アイーシャさんが言った。
「あれ~あいつだけ影がありますにゃ」
とアイーシャさんが指差す、一匹のハヌマーンを見ると、確かにそいつだけ地面に
影があった。
「OK、僕に任せてくれたまえ」
そうシノブが言って、バレットM82A1を構え、そして銃弾を放つ。
”ズドーン”
不意を突かれたのか、弾丸はハヌマーンの腹に命中し、乗っていた雲から地面め
がけて落下する。
「やったですにゃ!」
「お見事!」
アイーシャさんとマクシムス将軍が、そうシノブに声を掛けるが、地面に落ちたハ
ヌマーンは徐に立ち上がった。
「まだです!」
そう王子の声に俺達はすぐさま身構える。
そして、身構える俺達の目の前で、立ち上がったハヌマーンは残った分身たちを呼
び寄せ、その呼び寄せた分身を吸収して行ったかと思うと、ハヌマーンの体は見る
見る巨大化して行った。
(身長18m……って、あの有名なロボットと同じ大きさ?)
俺は驚きながらもそう心で思った。
”ズシン””ズシン”
と巨大化したハヌマーンは、俺達の所に迫ってくる。そのハヌマーンに
「スピンシールド!」
「ライトニングアロー!」
「行け!グラン・クラッシャー!」
「撃心流奥義の1つ 真空切り!」
「氷結ブレード!氷結フラッーシュ!」
「電空ぅ~ブーメラン!」
クレアさん、エドナさん、マクシムス将軍、ゲキ、フェリクス王子、そしてミオン
が技を繰り出したが……どれもハヌマーンの巨体に弾かれてしまう。
俺はその間に右腕をワイヤーアームに変え、左腕をエレクトリーアーム変えて、
Unicornを呼び出し合体する。そして、ケンタウロス形態になった俺は、す
ぐさま6発のミサイルを発射するとともに、左手を右手に添えて放つ。
「エレクトリックランサー!」
6発のミサイルと共に、ランスを握って高圧電流を帯びた右手がハヌマーンめがけ
て飛んで行く。
ちなみにこの名前もミオンによる命名である。
それを見たハヌマーンは、即座に何処からともなく如意棒を取り出し、それを猛
スピードで回転させ、6発のミサイルとランスを弾いた。
「げっ、弾かれた!」
俺はそう叫んだ。
「バケモノめ~!」
そうハヌマーンを睨みつけ言うマクシムス将軍。
その時、アイーシャさんが言った。
「あれ~あんなに巨体なのに影がないですにゃ」
「えっ、そう言えば影がありませんね」
アイーシャさんの言葉にクレアさんが言った。
「って言うことはぁ~あれって分身と同じぃ~?」
クレアさんの言葉にエドナさんがそう言うと、
「なら、本体はどこだ!」
とマクシムス将軍が聞いた。
「たぶん……あそこかと」
マクシムス将軍の問いかけにフェリクス王子が、巨大なハヌマーンの頭の近くに浮
かぶ雲を指差し言った。
王子が指差す方を俺達が見て見ると……ハヌマーン頭の付近に、浮かぶ雲が見え
た。
「OK、僕に任せてくれたまえ」
とバレットM82A1を構えるシノブにミオンが待ったを掛けた。
「ちょっと、シノブ真面に撃っても、巨大ハヌマーンに阻まれるだけよ」
と言うミオンにシノブが聞き返す。
「だったら、どうするんだいMissシラトリ」
シノブの言葉にミオンが言った。
「セイアが巨大ハヌマーンの周りを走り回って、かく乱している間にシノブが仕留
めて!」
「ああ分かった」
「OK、Missシラトリ」
そう答える俺とシノブにミオンは更に続けて行った。
「万が一のことがあるといけないから、同時にプランBも」
「「プランB!?」」
ミオンの言葉に俺とシノブが聞き返すと、ミオンはアイーシャさんを呼んで耳元で
、”ごにょごにょ”話したかと思うと、俺に向き直り言った。
「セイア、アイーシャさんを背中に乗せてって」
「ああ、わかった」
俺はミオンにそう答えたが、俺とシノブの頭の中は?だった。
(まぁ、作戦参謀が言うのだから……いいか)
俺はそう心に思いながら、背中にアイーシャさんを乗せ合図を待った。
「スピンシールド!」
「ライトニングアロー!」
「行け!グラン・クラッシャー!」
「撃心流奥義の1つ 真空切り!」
「氷結ブレード!氷結フラッーシュ!」
「電空ぅ~ブーメラン!」
クレアさん、エドナさん、マクシムス将軍、ゲキ、フェリクス王子、そしてミオン
が技を繰り出したのを合図に俺は、アイーシャさんを乗せ巨大なハヌマーンの足元
へと走り出した。
巨大なハヌマーンは、皆の攻撃を如意棒を巧みに操りながら、すべて弾き、かつ
、自分の足元を通り過ぎようとする俺を、その如意棒で突いてくる。
ハヌマーンの如意棒を俺は、右に左にかわすが、ハヌマーンの如意棒で突かれた
地面は大きなクレータが出来ていた。
(あぶねぇ、あぶねぇ、当たったらひとたまりもないな)
ハヌマーンの後ろに回り込もうとするが、ハヌマーンもそれを察して、後ろを振り
向き如意棒で攻撃してくる。
ハヌマーンが俺に気をとられ後ろを振り向いた瞬間。
”ズドーン”
と大きな銃声と共に、シノブの撃った12.7mmの弾が、巨大ハヌマーン頭上付
近にあった雲を貫いた。と、同時に巨大ハヌマーンが胸を抑えたかと思うと、”ぼ
わっ”と煙を上げて跡形もなく消えた。そして、シノブが撃ち抜いた雲から、本体
のハヌマーンが雲の中から地面に向かって落ちてきた。
”ドサ”
と音を立てて、落ちたハヌマーンに俺は駆け寄っていくと、ハヌマーンはふらつき
ながらも、何とか立ち、持っていた如意棒を俺達に向かって構える。
俺が、如意棒を構えるハヌマーンに向かい持っていたランスを向け対峙すると、
俺の背中から素早くアイーシャさんが飛び出し、ハヌマーンの影の中に入って行
った。
一瞬驚いて、自分の影を見るハヌマーンに向け、俺はランスを発射する。
「エレクトリックランサー!」
それを見て、大慌てで体制を崩しながらも、如意棒で俺の放った高圧電流付きの
ランスを払うも、ランスに付加された電流にしびれて、思わず持っていた如意棒を
手放してしまった。
その瞬間!”ぎょ”とするハヌマーンの後ろの影から出てきたアイーシャさんが
、持っていたタガーでハヌマーンの尻尾を切り取った。
”ザク”
「キーキー」
と叫んだかと思うとハヌマーンの体はブレだし、やがて虹色の泡となって消えていった。
ハヌマーンが消えた場所には例の光の玉が浮かんでいた。
「アイーシャさんどうぞ」
俺は、その光る球をアイーシャさんが受け取るよう促すと、アイーシャさんは遠慮がちに俺に言う。
「いいんですかにゃ」
「倒したのはアイーシャさんですから」
と遠慮気味に言うアイーシャさんに俺が笑顔で言うとアイーシャさんも笑顔で、
「では、にゃ」
と言ってその光の玉を掴んだ。
「おおーにゃんと!」
◇◇◇◇◇
俺達は今、ハヌマーンを倒し、俺達が出てきたトンネルがある所の向かいの岩山
の中腹の棚状の広場に居る。
あっ、そうそう、アイーシャさんが手にしたボーナスアイテムは”如意棒”だっ
た。それを見たミオンは、
「まんまなの?」
と呆れたぎみに言っていたが、シノブとゲキは反対に、自由自在に長さを変えられ
る如意棒は、アイーシャさんの戦闘スタイルに合っていると絶賛していた。
(確かに最少は、耳の穴の中に入るし、最長は、天に届くらしいからね……)
それで、今はここの広場にある転移門前で、しばしの休憩……いろんな意味で。
広場の隅に穴を掘り、その周りにフェリクス王子が作った氷の壁で作られた……。
所謂、トイレこれは女性用だが、男子は広場の端の崖からそのままでしている。
※よいこのみんなは、俺達の真似をしないようにね。
それはさておき、俺達が、このダンジョンに飛ばされて、かれこれ6時間……。
突然飛ばされたこともあり、この緊張の続くダンジョンで皆の体力もそうだが精神
的にもそろそろ限界だと思う。それに、ここの転移門をくぐれば、いよいよここの
最下層の6階層だ。これまで以上に戦いは厳しくなることを考えここで、食事と休
息を取ることにした。
シノブがマジックボックス小から食べ物を出す。
”ほくほく”温かい握りたての……おにぎり。と、温かいミソスープ(味噌汁)に
ペットボトルのお茶を一人1本づつ。
おにぎりは大きなタッパーで、列ごとに具が違うので、シノブがみんなにそれを説明していた。
また、味噌汁は鍋ごと出され、それを各自の簡易のお椀に(使い捨て)入れて配った。
マクシムス将軍、フェリクス王子は初めて見るおにぎりと味噌汁に目を丸くしていた。
「うっ、すっぱ~い!」
おにぎりを1口食べて、顔をしかめながら言うマクシムス将軍にソフィーが、笑顔で言った。
「それは、梅干しと言う具です。酸っぱいですが体の疲れに良いそうですよ」
とソフィーに言われ、しばらくおにぎりを見つめていたが、その後一気に頬張り、味噌汁で一気に飲み込んだいた。
それを見て、ゲキがマクシムス将軍に別のおにぎりを渡し、言った。
「こっちはシャケ……魚の切り身を焼いたものだからこちらの方がお口に合うのでは?」
マクシムス将軍はゲキからおにぎりを受け取ると、今度は恐る恐るおにぎりにかぶりつく……。
「おお、これは塩が効いてて、うまいなゲキ殿」
と我武者羅にかぶりついた。
◇◇◇◇◇
食事が終わり、ここで野営をすることにしたって言っても、ここはずーと昼間の明るさだけどね。
俺が1人で、終始見張りをするつもりだったが、男性陣で3交代しようということになり、3時間交代で、俺、ゲキとシノブ、そしてマクシムス将軍とフェリクス王子の順で見張りをすることになった。
各自、シノブが出した5つのテントで男女別れて睡眠をとる。
はじめに俺が見張りをするのだが、俺が見張りを初めて、1時間くらいたったころにソフィーがそっと起きてきて俺に声をかける。
「セイア様……あの~」
俺は声を掛けるソフィーに、
「ちゃんと寝なきゃダメじゃないか……」
と言いかけたが、ソフィーが俺の所にきて、耳打ちをする。
「あの、エネルギー補給を……今」
「へ?今するの」
と耳打ちするソフィーに言い返すとソフィーは顔を赤くしながら言った。
「……お兄様の目の前でするのは……恥ずかしいかと」
そう言われ、俺も急に顔を赤らめこう言った。
「確かに、それは恥ずかしい」
俺達は、皆のテントから少し離れた所まで行き、抱擁を交わした。
俺の鼻にはソフィーの甘い香り、俺の唇には、ソフィーの柔らかい唇の感触、そして俺の手には、ソフィーのスベスベする背中の肌触り……を感じながら、俺のエネルギー補給は続いた。
バレットM82A1を立射で撃つシノブって見た目以上に、ワイルドかも(笑)




