76話 電風の丘ダンジョン12(水の量り方)
セイレーンを倒し、ゲキによると池の水はかなり浅く、足の踝までしかないと言う
ので、俺達はそのまま”ジャブジャブ”と池の中央まで歩いた。
池の中央には小さな島?陸地があり、その中心部には、丸い円形の台があった。
直径1m、高さ50cm位だろうか……さっきのセイレーンが居た場所だよなここ。
台座の側面には何やら古代文字が……読めないって思っていたら、シノブが以前
、誕生日にニールさんからもらった眼鏡をかけてやってきた。
「どれどれ……僕が見てみよう~」
「読めるのシノブ?」
ミオンが不思議そうにシノブに聞くが、シノブはそれに笑顔で自慢げに言った。
「任せてくれたまえMissシラトリ」
そして台座の側面の古代文字が掛かれたところでしゃがみ込み文字を読む。
「何々……3ラッターの壺と5ラッターの壺を使い4ラッターの水を台座中心に流
し込め、さすれば道が開ける……って書いてある」
「なんだそれ!」
とシノブが読んだ言葉に声をあげるゲキ。それを聞いてミオンが、
「あら、簡単な数学の問題ねぇ~」
とゲキに言った。
「数学の問題……俺は数学が苦手だ。」
と言うゲキにシノブが笑いながら言った。
「いや、Mr.シモトウゲ……数学と言うほどの問題ではないよ」
と言うシノブにゲキが、頭を捻りながら言った。
「……う~ん、やっぱりわからん」
そう言うゲキにシノブがこう言った。
「ほら、昔のアメリカのアクション映画でもあっただろう~」
と言うが、ゲキは、ますます頭をひねるだけで考え込んでしまった。
そんなゲキを見て俺がゲキの肩に手を置きこう言った。
「ゲキ、まぁ、ここはシノブに任せればいいよ」
俺の言葉にゲキが頷くと、シノブは嬉しそうに台座の文字が書いてある横の溝にある2つの壺を取り出してこう言った。
「ラッターと言う単位は分からないが、恐らく大きい方が5ラッターの壺だな」
と言うと、大きい方の壺をゲキに渡して、ゲキに言った。
「すまないがMr.シモトウゲ、ここに水をいっぱいに汲んで来てもらえないか
い?」
「ああ、分かった」
ゲキはシノブにそう返事して、大きい方の壺をもって、浅い池に水を汲みに行った。
しばらくして、大きい方の壺に水をいっぱい入れてゲキが戻ってくるとシノブはそれを受け取り、小さい方の壺へ水を移した。
”ジャー”
「っと、これで大きい壺には2ラッターの水が残ったわけだ。」
そう言うシノブの横で、ミオンはゲキに説明する。
「ゲキわかる?5-3=2ね」
と言うミオンに少し怒ってゲキが言い返した。
「おい、馬鹿にするなそれくらいわかるわ!」
と言うゲキにミオンが薄笑いを浮かべ
「あっそう」
そう言って、ゲキから離れ俺の横でシノブの様子を見た。
「次に一旦この小さい方の水をすべて捨てて、大きい方に残った水を移す。」
”ジャー”
「で、すまないがもう一度、この大きい方を水でいっぱいにしてくれないかMr.シモトウゲ」
と大きい方の壺を渡されゲキは再び水を汲みに行った。
そして、大きな容器に水を満たしてゲキが戻ってくるとそれを受け取り、シノブが言った。
「Thanks!Mr.シモトウゲ」
そして、受け取った大きな壺の水を小さい方の壺に移しながら、
”ジャー”
「これで、4ラッターになったわけだ。」
「「おお」」
とマクシムス将軍とフェリクス王子が声をあげ、
「なるほど…」
「すごいですねぇ~」
「なるほどにゃ~」
とクレアさん、エドナさん、アイーシャさんが声をあげた。
そして、笑顔でソフィーは、
「お見事ですシノブ様」
と拍手していた。
ただ、若干1名、わけがわからないって顔をしている。
そんなゲキにミオンが薄笑いを浮かべながらこう言った。
「2+1=3で5-1=4だよゲキち~ゃん」
ゲキは、ミオンにそう言われ不機嫌そうな顔をした。
そんなゲキに、少し自慢げな態度でシノブが大きい方の壺を持ってきて、
「すまないが、この壺の中の水を台座の中心に流してくれないかMr.シモトウゲ」
そう言われ、しぶしぶ壺を受け取り台座の中心ある穴に壺の水を流し込んだ。
”ジャー”
すると……台座が”ズズズ”と音を立てながら地面に沈んで行く。
「「「「「「「「「「おお」」」」」」」」」」
皆、突然下がりだした台座に驚きの声をあげた。
ゲキは素早く台座から飛び降り、俺達の所に戻って来た。
台座が下がると深さ20m位の穴が現れ、その穴には1か所、光が漏れる横穴が開
いている。
俺は両腕をワイヤーアームに変えて、シノブとゲキをまず、穴の下に降ろした。
穴の底に着いた2人は入念に、穴をチェックして安全を確認し、俺に手を振って
きた。
そして、2人の合図を受けた俺は、続いて、マクシムス将軍とフェリクス王子を
降ろし、その後、クレアさんとエドナさん、アイーシャさんとミオンを降ろし、
最後にソフィーを降ろしてから、面倒くさいから俺はそのまま飛び降りた。
全員が揃った処で、光が見える横穴の中を進んで行く俺達。
数十メートルも歩くと横穴の出口へと出ることができた。
そこから見える光景は、やはり青空だけど太陽が昇っていない世界。
それに、俺達の正面には、尖って木1本も生えていない山がそびえ立っていた。
振り返ると、俺達が出てきたトンネルがある所も向かいの岩山と同じ形の山だった。
◇◇◇◇◇
俺達が出てきたトンネルは山の中腹にあり、そこから道沿いに山を下り、向かい
の山を目指す。
山の麓まで降りると、そこは富士山の樹海を思わせるような森が向かいの山まで
続いて……って言っても、森の真ん中には大きな街道を思わせる道が1本、向かの
山まで伸びているので、富士山の樹海のように迷うことはない。
しばらく、皆で森に囲まれた街道を歩いていると……。
「あれ~なんだろう!」
と空を指差し言うミオン。その言葉に皆がミオンが指差す方を見ると……。
「う~ん、雲の上に人が乗っておるように見えるな」
とマクシムス将軍が言うと……。フェリクス王子がこう続ける。
「しかもあの雲、物凄い速度で空を移動してませんか?」
「そうですね……それに……雲の上に居るのは人と言うよりは……猿ではないです
か?」
とクレアさんが王子に続いて言った。
「雲に乗った猿……って言えばあれじゃない?」
とミオンが俺に聞いてくるので、俺がセンサーと頭の中のデーターを照らし合わせ
て見ると……。
≪名称 ハヌマーン≫
≪戦闘力 80,000≫
≪防御力 40,000≫
≪スピード 2,000≫
≪MP 25,000≫
≪特技 風、分身、幻影 ≫
×1
それを声に出してミオンに言うと、ミオンは驚き。
「えっ!」
「えっ!」
と2度も俺に聞き返し、そして俺に尋ねる。
「えっ、孫悟空でなく、ハヌマーンなの?なんで……なんで」
としつこく俺に聞いてくる。
「なんでって言われてもな……」
と俺が困っていると、ゲキがそれを見かねてミオンに言った。
「元々、ハヌマーンは孫悟空のモデルだとも言われてたんだから、不思議ではない
だろうよ」
ゲキの言葉にミオンは、
「えっ、そーなの?」
と今度はシノブに聞き返すが、シノブは両手をあげて”さあ?”って感じのポーズ
でミオンに答えた。
「兎に角、臨戦態勢を!」
と俺が皆に叫ぶと、皆がそれぞれの武器を手に空を見上げる中、フェリクス王子は
ソフィーに向かい剣を振り上げ、
「すまない、しばらくこの中で大人しくしててくれ」
「イグルー!」
と叫ぶとソフィーの周りの分厚い氷で出来たドーム?シェルターが形成される。
これは、分厚い氷で出来た所謂シェルター。これで多少は攻撃を凌げるだろうと
王子は俺達に向き直りそう説明してくれた。
王子は、戦闘能力のないソフィーを守るのと同時に、俺達が戦闘に集中できるよ
うにって気を利かせてくれたようだ。
「さーて、ひと暴れするか!」
とマクシムス将軍が言うと、俺達はソフィーのドームの前に横一列に並んで、そ
れぞれの武器を手にハヌマーンを迎えようとした時のことだった。
空を飛んでいるハヌマーンが自分の体毛を手で引きちぎったかと思うと、それに
自分の息を”ふー”と吹きかけた。
するとハヌマーンの周りに、無数のハヌマーン……分身?が現れた。
「げっ分身の術!?」
「どれが、本物か区別付きません!」
ミオンとクレアさんがそう叫んだ。
「兎に角、各個撃破するしかあるまい」
とマクシムス将軍の言葉に俺達は頷いた。
今回の水の量り方は、映画ダ○ハード3での量り方を使いました。
ただ、あの映画では、前半部分の説明がなかったので、当時映画館で首を傾げたものです。
初めから説明されれば納得だったんですがねぇ~