75話 電風の丘ダンジョン11(セイレーンVS王子)
ゲキ達に合流する前に、しなくては成らないことがある……。
そう、GUY BRAVEのエネルギー補給である。
ミオンを初めアイーシャさんやシノブのように、うちのメンバーの前なら照れな
いが、今回はマクシムス将軍がいる……。ので俺とソフィーはお互い照れてしまい
なかなかエネルギー補給ができないでいると。
「何やってるの2人とも!」
と見つめ合い固まっている俺とソフィーにミオンが言った。
「だって~!将軍がいるじゃん~だから……」
と照れながら半ばミオンに抗議するように俺が言うと、
「だから何!、早くゲキ達と合流しなきゃならないいんだから、さっさと済ますセ
イア!」
「そう言われてもなぁ……なぁソフィー」
とソフィーに言うと、ソフィーも顔を赤らめコクコクと頷く。
「あー、もう!なら、そのテントの中でしなさい!」
とイラつきながら、左手を腰に当て、右手の人差し指でテントを指差し言うミオン。
俺は、「あっ!」って感じで手を打ち、ソフィーの手を引いてテントの中に入っ
た。
テントの中では、立てないのでお互い向かい合い膝を突き合わせて座り、俺がソ
フィーの肩に手をやり顔を近づけると、ソフィーも目を閉じそしてお互いの唇が重
なる。大人の~キスをしながら、俺の手はソフィーの肩から背中に回った……”へ
”……”えっ””ああ”俺は一瞬、ソフィー唇から自分の唇を離してしまった。
(そうだった「デンジャラスペアー」の服なので、へそ出し……ってことは、今、
触った部分は、ソフィーさんの肌に直に触ってるってことだわな……)
そう思うと、急に頭が”カー”と熱くなってきた。
「どうなさいました、まだエネルギー補給が終わってませんよ」
と心配そうに俺に聞くソフィー。
「いや、何でもない」
俺はそうソフィーに言い、キスを続けた。……背中に手を回し、ソフィーの肌の感
覚を楽しみながら……。
◇◇◇◇◇
エネルギー補給が終わり、俺はテントからソフィーの手を引きながら外に出た。
ソフィーはいつものように目がとろ~んとなっている。それを見て、マクシムス
将軍が心配したようにソフィーに聞いてきた。
「姫!大丈夫ですか」
そう聞く、マクシムス将軍に目が虚ろで反応が鈍かったが、ソフィーの顔をのぞき
込み心配するマクシムス将軍の顔を見て”はっ”として、笑顔で将軍にこう言った。
「あっ、はい大丈夫です」
それを聞いて将軍も安心したのか、ソフィーの前から立ち去った。
シノブがテントをたたみ、マジックボックス小に仕舞うのを待って、俺達は洞窟
の中に入り、サンダーバードの巣を超え転移門に進んだ。
「それでは、参ろうか!」
とマクシムス将軍が俺達皆に声を掛け、俺達がその言葉に頷くと、眩い光に包まれ
……転移した。
◇◇◇◇◇
次の瞬間俺は薄暗い洞窟のようなところに居た。
洞窟の天井、床、壁といたるところに淡く光る水晶の塊が点在し、それが薄暗いが
洞窟内を見回せるだけの明るさを保っているようだ。
「お兄様!」
ソフィーが岩に腰掛けるフェリクス王子に駆け寄る。
王子もソフィーの声を聴き、その場ですくっと立ち上がると、駆け寄るソフィーを
抱きしめた。
「お兄様……ご無事で……」
ソフィーは王子に抱きしめられながら涙声で言う。
「ああ、ソフィーこそ無事で何よりだ」
そう答える王子に涙を流しながらも、笑顔で言うソフィー。
「ええ、わたくしには、勇者様やそのお友達が居て下さるので」
そう言うソフィーに頷きながら王子は、
「そうだな」
と答えた。
この兄妹の感動のシーンにも関わらず、シノブは、ゲキ達が食べた”かまいたち
”の残骸を見ながら、ゲキにどんな味だったか聞いていた。
(お前とゲキは、本当、食うことにしか関心がないのか~)
◇◇◇◇◇
あれから、30分くらい歩いたか……俺とゲキを先頭に、すぐ後ろをシノブが歩
き、その後ろにミオンをクレアさんとマクシムス将軍で挟み、またその後ろをソフ
ィーを挟んでフェリクス王子とエドナさん、最後尾はアイーシャさんと言う布陣で
歩いている。
地面や壁には所々流華石と呼ばれる鍾乳洞によくある白く滑らかに見える部分が
あり、一見、滑らかですべりやすそうに見えるが意外と普通に歩けた。
この辺まで歩くと少しジメっとした空気に包まれ、流華石と並び石柱や、時折、
水がたまった畦石に囲まれて生じた水たまりの畦石池なども見える。
「まるで鍾乳洞みたいだな」
と俺が横を歩くゲキに声を掛ける。
「ああ、そうだな」
とぶっきら棒に答えるゲキ。
その後、会話らしい会話がなく歩いていると……。
やたらデカイ広場のような場所に出てきた。
そのデカイ広場一面に大きな池が広がっていて、池の中心に何やら人影のよう
なものが見える。
(うん?)
俺は視界をその人影にズームする。
「えっ、裸の……女の人!」
と俺が思わず声にしたら、シノブがゲキの前に出てきて、双眼鏡で確認してきた。
「Wow!本当だ……しかし、手が翼になってるようだ」
「えっ、どれどれ見せてシノブ」
シノブの言葉に後列のミオンがシノブの横に立ちシノブが覗く双眼鏡を借りて見る。
「本当だ~真っ白な裸の女の人……で腕が翼ってことは……」
ミオンがそう言いかけた時、何処からともなく女性の声がした。
いや、声と言うより歌のようだ。
その時俺の頭に
≪Danger≫
催眠歌
(聞いたものは眠らされる)
の文字が浮かんだ。
俺はすぐさま振り返り皆に叫ぶ。
「皆!耳を塞げ~!」
≪名称 セイレーン≫
≪戦闘力 70,000≫
≪防御力 35,000≫
≪スピード 1,000≫
≪MP 20,000≫
≪特技 催眠歌、クロー、風≫
×1
しかし、遅かった……振り返った俺の前で皆が次々と眠りについた行った。
ただ、眠りにつかなかったものが2名いた。
それは、ゲキとフェリクス王子である。
【下峠 激】
≪名称 下峠 激≫
≪レベル8≫
≪戦闘力 12,000≫
≪防御力 8,000≫
≪スピード 800≫
≪MP 10,000/10,000≫
≪状態 ☆【青】良好≫
≪特技 武芸者≫
【フェリクス=ラグナヴェール】
≪名称 フェリクス=ラグナヴェール≫
≪レベル10≫
≪戦闘力 15,000≫
≪防御力 10,000≫
≪スピード 1,500≫
≪MP 25,000/25,000≫
≪状態 ☆【青】良好≫
≪特技 イーシャイナ王国第2皇子 氷結の剣≫
ゲキは目を瞑り瞑想状態で、フェリクス王子は腰の剣を抜き、胸の前で剣を立て
、体の周りから青い光を放っていた。
俺はすぐさま、右腕をマシンガンアームに変え、左腕をエレクトリーアームに変
えて、高圧電流を流しながらセイレーンに向け鋼弾を放った。
”バリバリバリ”
歌を歌っている小柄で、透き通るような白い肌のセイレーンに俺の放った電気を
帯びた鋼弾弾が当たる。鋼弾は、セイレーンの透き通るような白い肌を容赦なく食
い破って行った。
「よし!」
体中を穴だらけにして、緑色の体液を飛び散らせ、苦しむような表情のセイレー
ンを見て俺はそう叫んだが……。
次の瞬間、セイレーンは俺をギョロっと睨んだかと思うと、目が猫目に変わり、
口が裂け、肉食獣のような歯をむき出しにしたかと思うと、見る見る肌の色が緑
色に変色した。
そして、腕の部分の翼を羽ばたかせたかと思うと、空中に舞い上がり、足首が鳥の
足のようになった足の爪を俺の方に向けたかと思うと……。それを俺に向け飛ばし
た。
「えっ」
驚く俺の両腕に、その鳥の足で掴まれ、そのまま俺の側にあった岩に俺は貼り付
け状態で押し付けられた。
さらに、セイレーンの足の爪は俺を岩に押し付けながらも強く握り占めるので、
俺の両腕は”キリキリ””ミシミシ”と音を立て今にも砕かれそうだ。
その時であった、胸の前で剣を立て、体の周りから青い光を放っていたフェリク
ス王子が”カー”と目を見開き胸の前の剣を斜めした(時計の4時の方向)に向け
ると、左手で剣の刃の部分を扱くように撫でだした。
扱かれた剣の刃は、見る見る青白い光に包まれ……やがて剣の刃全体が光りだす
と、王子はそれをくるっと回して、正眼に構えたかと思うと、そこから剣を寝かせ
て水平に剣を振りながら、こう叫んだ。
「氷結ブレード!氷結フラッーシュ!」
水平に振りぬかれた青白く光る王子の剣から、青白い光が弧を描きながら、セイ
レーンに向け飛んで行ったかと思うと、空中で羽ばたくセイレーンに命中した。
光が当たったセイレーンは見る見る凍り付き、地面に落下していった。
「えっ!」
俺はセイレーンの足の爪に押さえつけられながらも、そう声を上げた。
すると、今まで瞑想していたゲキが目を”カー”と見開いたかと思うと、背中の斬
馬刀を引き抜き、徐に池に向かって走り出し、落ちてくるセイレーンに向けて下か
ら上に斜めに切りつける。
「斬馬刀!空中逆袈裟切」
セイレーンの体は真っ二つになり、崩れ去った。
ゲキは、そのまま池に着地する。
セイレーンが倒されたので、俺を拘束していたセイレーンの足の爪は”ボロボロ
”と崩れ去って行く。
「お見事!ゲキ殿」
と池の中で足の踝まで水に浸かったゲキに、王子が声を掛けた。
「いえいえ、フェリクス王子こそ、すごい技ですね」
と池から上がり王子に近づきながら言うゲキ。
「いや~これはこの剣のお陰なんですよ」
と謙遜しながら言う王子。
「ほう、これは魔剣ですか?」
と聞くゲキに王子は嬉しそうに剣を見せながら言った。
「ええ、魔剣 氷結剣っていいます」
「ほう~」
(おーい、誰か忘れてませんか……ゲキさん、王子~)
俺をほっといて、2人で剣について話しているゲキと王子に向かって俺は心で叫ん
だ。
フェリクス王子の使う剣「魔剣 氷結剣」の必殺技の「氷結ブレード!氷結フラッーシュ!」は
宇宙刑事シ○イダーのレイザーブレードから繰り出される「シャ○ダーブルーフラッシュ!」
のパロディーです。




